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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
転生 -いにしえの大陸 ムー-
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退院

 翌日、朝食を食べた後、母親が病室を訪れた。


<ロウア、退院の準備をしてきたよ。さぁ、服に着替えて>


 ロウアは病院で準備された服を着ていたが、母親はロウアの私服を持ってきてくれた。


(この服も日本のものとは違うなぁ……。

アル達も同じような服を着ていたか……。

これって少し厚手に見えるけど暑くならないのかなぁ)


 昨日、アルとロウアに連れられて庭に出たが、外はとても暑いことが分かった。


 病院はエアコンが効いているのか、とても快適だったが、今日もとても良い天気だったので、裾も長く、長袖ぐらいまでの長さのこの服では暑くなってしまいそうだった。

 パンツも普通の長ズボンだったが、これも厚手だった。

 ちなみに、下着とシャツのようなものは、日本のものと同じで特に変わったものではなかった。


<どうしたんだい?服の着方も忘れたのかい?>


 ロウアがあまりにも服をじっと見つめているので、母親が声をかけてきた。

 さすがに、着方は分かるので、ううんと、首を振った。


(おぉ……)


 ロウアが服を着て驚いたのは、その服の温度が自動で変わったからだった。


(な、なんで勝手に涼しくなるの?)


 その服は、周りの温度と人の体温を感知して自動で快適な温度になったのだ。


(身体を動かしたら、どうなるんだろう?)


 ロウアは、ジャンプしたり、腕を振り回してみたが、これぐらいの動きでは余り変わらなかった。


<ど、どうしたの?そうか、そんなに嬉しいのかい。良かったね>


 その不思議な行動を見て、母親は喜んでいるように見えたのだった。

 思わずロウアも、うんと頷いてしまった。


<それにしても、言葉は理解できるけど、話せないというのは何でなんだろうね……>


 母親は、もちろん、ロウアと呼ばれる魂と池上の魂が入れ替わったことには気づいていない。

 ロウアは、この言葉に、首を振るしか無かった。


(それにしても窓から見える景色から想像すると、この世界は、僕がいた時代よりも高度な文明を持っている事が分かる。

これから向かう、自宅はどんな場所なんだろう……)


<結局、お兄ちゃんと、お父さんは来なかったねぇ>


(えっ?お兄ちゃん?兄弟がいるのか……。そうか、お父さんも……)


 ロウアの母親が言うには、父も兄も仕事が忙しくて来られなかったということだった。


-----


 二人は一階に降りて受付に向かい、母親が退院の旨を受付の女性に告げる。


(あぁ、この女性もロネントだ……)


 ロウアは、ロネントを意識し始めてからある程度判別できるようになっていた。

 医師、看護師など、高度な知識を持つものから、清掃員や受付などの簡易な仕事をするものまで、多種多様な仕事をしているのが分かった。


(この文明はロボットが大量に使われている。

恐らく単純な労働は、全てロネントと呼ばれるロボットが担っているのではないか。

それにしても、どんな仕組みで動いているのだろう……)


 ロウアが知りたかった動作原理は、後々分かることになる。


<さぁ、来たよ>


 病院の入り口で、母親と二人で待っていると、無人の車がやってきた。


(う、浮いてる……)


 その車は、少しだが空中に浮いていた。


 隙間から風が吹いているわけではないので、ドローンのような羽があって浮いているのではない。

 ロウアは、車の底をくまなく見てみたが、やはり車輪は付いていなかった。


<なにをしているんだい?さ、乗って、乗って>


 重い荷物は病院のロネントが手伝ってくれて、車のトランクらしきところに荷物を入れてくれた。


 母親が車の扉に向かうと自動的に扉が開いて前の席に座る。

 ロウアもその後に続いて所謂、助手席にあたる場所に座った。


<あれ?おかしいな。動かない……>


 この車にはハンドルがないのだが、21世紀の車に存在しているハンドルの部分に、母親は腕時計をブルブルと震わせている。


(腕時計で何をしていているのかな?)


<あ、つながった。ちょっと古いタイプなのかな?>


 すると、フロントガラスの手前の空中に地図が表示された。


<あれ、どうしたの?ロウア。不思議そうな顔をして。あぁ、そうか……、こういうことも忘れちゃったんだっけ……>


 ロウアは腕時計が何か重要なのものなのか不思議だったのだ。


<もしかして、ツナクトノも忘れちゃったのかい?

ツナクトノとつながらなくなったって先生が話していたのと関係しているのかねぇ……。

そうだ、先生が新しくお前のツナクトノを調整してくれたんだよ。

家に着いたら渡すからね>


 母親はそう言うと、車に話しかけた。


<自宅に連れて行っておくれ>


 空中に浮かぶモニターに、何か了解したようなメッセージが表示されると自動で車が動き出した。


(か、完全な自動運転ということか……。すごいっ!)


 完全自動運転の車は二人を連れてロウアの家に向かうのだった。


ツ 様々な智慧や知識が集まりながら

ナ 一つになり

ク 循環する

ト 流れ来る智慧と知識は固定化され、

ノ 凝縮される


2022/10/08 文体の訂正

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