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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
引きこもり少女 メメルト
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懐かしの手

2022/10/27 文体の訂正、文章の校正


 ロウアは放課後になったので、いつものように図書室にやって来て、いつも座っている窓際の席に着いた。ムーの文明に随分慣れてきたが、文化や歴史、ロネントを含めた科学技術など不明点が多いため、彼は相変わらず日課のように図書館で勉強していた。そんなロウアが図書館の電子データを検索していると、突然、女生徒に声をかけられた。


「君って……、ロウア君だよね?」


「は、はい、そうですが」


 誘拐事件の解決で有名になってからは、知らない女性に話しかけられることが多かったから、またかと思ったのだが、この女性に対しては別の感情がわいた。


「か、香織さんっ!」


「カオリサン?だ、誰かな……?私の名前はアマミルっていうのよ?」


「しまった……」


 ロウアは嬉しさのあまりつい21世紀に出会った同じ顔の女性の名前で呼んでしまった。目の前の女性は、21世紀に池上を精神病院から助けてくれた香織と同じ顔をしていた。


(ん?カオリサン?今度はお前の彼女か?)


 魂のロウアが、また池上だった時代に出会った人物かと思い、話しかけてきた。その驚き方が特別だったので恋人か何かと思ったのだった。


(ち、違う、僕を助けてくれた女性なんだ……。彼女が助けてくれなければ、僕はあの時代、死んでいたと思う……)


(ふ~ん、命の恩人ってところか)


(う、うん……)


(はぁ、こいつとも縁ってやつがあるのか……。お前って、つくづく面白い奴だな。あははっ!)


(何がおかしいんだよ……)


 ロウアは、この時は隣人の笑っている理由が分からなかった。


「なあに?誰かと間違えたのかな?」


「え、いや、似ている人に会ったことがあって……」


「ふ~ん」


 ロウアは改めてアマミルと名乗った彼女を見ると制服のリボンから四階生だと分かった。つまり、ロウアの年上だった。彼女は、青い瞳に、黒い髪、肌の色は白とこの国の人間らしい容姿だったのだが、顔だけは21世紀に見た香織と同じだったので、ちょっとした違和感をロウアは感じた。


「ちょっとだけ話がしたくてね、少しだけ良いかな?」


「え、えぇ……」


 ロウアは、また告白かと警戒したが、年上の女性からは初めてだなと思った。しかし、その挙動は堂々としていて、どこか威厳があって、告白するようには感じられなかった。


「あのね、私たちの部活に入ってもらえないかな~っと思ってね」


「ぶ、部活ですか……?」


「そう、部活よっ!」


 案の定、告白では無かったが、唐突に部活に入れと言われてロウアは戸惑った。彼はしばらく図書館通いをするつもりだったので、部活動なんて考えてもいなかった。それに自分は運動が得意でもないので、何のスカウトなのだろうかと思った。


「え、えっと……、どんな部活なんですか?」


「ふふっ!名前はね~、"お助け部"って言うんだけどね」


「お、お助け部?!」


 意味不明な名前の部活動だったので、ロウアは何を言っているのか分からなかった。


「すごい驚きようねっ!そうなのっ!私たちは、その部活で困った人達を助けているのよっ!」


「は、はぁ~……」


(んだよ、ため息なんてついてっ!良かったじゃねぇかよ)


 相変わらず魂のロウアは茶々を入れてきたが、ロウアがため息をしたのは彼女に感心したからだった。


(この人は、いつの時代でも弱い人を助ける役割を持っているんだなと思って……)


(こいつが人を助けるねぇ……。噂とちげ~な~。しっかし、名前は"お助け部"だってっ?ケラケラケラッ!)


(噂……?)


 "噂と違う"と言った意味をロウアは聞こうとしたが、アマミルは話を続けた。


「ちょっと、聞いているのかしら。あなたって人の話を聞かないタイプ?」


(お前のことだって~のっ!笑笑)


 魂のロウアの声は無論、アマミルには聞こえていないため、更に彼女話を続けた。


「君はカフテネミルのシアムちゃんを助けた"正義の味方"じゃないっ?だから、私たちの部に入って欲しいのよっ!」


「せ、正義の味方ですか?!」


(せ、せ、せ、正義の味方っ!お前が正義の味方っ?!クククッ!格好いいじゃね~かっ!あははっ!!!)


 ロウアは隣人の馬鹿笑いを睨めつけると、アマミルに返事をした。


「だけど、僕は勉強が忙しくて部活どころじゃなくて……」


 すると、ロウアが話を最後まで言う前に、アマミルはすかさず口を挟んできた。


「勉強?

バカねっ!何を言っているのよっ!

私たちの助けを求めている人は、たっくさんいるのよっ?!さぁ、来てっ!!」


「えっ?えぇ?あっ、あの……」


 アマミルは、強引にロウアの手を引っ張ると何処と分からず彼を連れて行こうと図書館を離れた。


(ご、強引なのも一緒……。全く、困った人だなぁ……)


 アマミルは、鼻息を荒くしながら嬉しそうにロウアを引っ張っていくのだが、自分の手を強引に引っ張る彼女にすでに抵抗をする気が失せていた。ロウアには、目の前のアマミルと香織が重なって見えるため、懐かしくもあり、嬉しくもあった。


ア 神の光を

マ 強く受け止めて、

ミ 風のように力強く伝え、

ル 広げる者


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