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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
その名を叫ぶ
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二つの光

 部員や神官達は、ムー国中心地の政治、神殿を占拠するのが目的だと思っていたが、群衆達の目的は、もはやあって無きがものになっていた。フランス革命のような集団心理によって動かされたムーの国民達は、自分達の目的は何だったのか分かっているものもいたが、単なる怒りで行動しているものもいた。

 巨大な円柱構造のムー神殿は、百階建ての超超高層構造だった。それらを破壊するなど不可能に近かったが、群衆は何も考えずひたすら自分達の破壊衝動のまま行動した。


 すでに夕日の見える時刻に、巨大円柱状の神殿上空からアマミル達、霊界お助けロネント部は、少し大きめなバスぐらいの大きさの車で降りてきた。イツキナは、暴徒と化した人々を見て、怖がって震えた。


「ちょ、ちょっと怖くない?あんなところ降りて大丈夫なん……」


「なあに?あんた少し弱気なんじゃない?」


「んだよ、アマミルだって震えてるじゃん」


「バ、バカね、そんなわけ……あるわね」


 アマミルは自分の手を見て珍しく素直に認めたので、イツキナは彼女らしくなく弱気になっているなと思った。


 群衆は、アマミル達の車を見つめると怒りの矛先をそれに向けた。


「おい、何か降りてきたぞっ!」

「なんだ?遂に俺達を殺しに来たのかっ!」

「やっちまえっ!」

「おい、誰か出て来たぞ」

「あれはカフテネ・ミルじゃねえぇか?」


 予想されたことだったが、カフテネ・ミルは、自分達の富を奪った犯人ということになっていた。実際はただのアイドルグループが、ツナクトノを破壊したはずは無いが、集団心理で洗脳された人々はどうでも良かった。


「アルちゃんっ!行く、にゃっ!」

「おうさ~っ!」


 怒りに満ちた群衆などお構いなしで、シアムとアルはバスの両側からそれぞれ出て行った。その姿を見てイツキナとアマミルは面食らってしまった。


「こ、こうなると二人は頼りがいあるねぇ……」

「そ、そうね」


 出番までまだ少し時間があった二人は、肩をすくめた。


-----


「ちょっとずつ」


希望を失うこともある

何も出来ない自分


だけど、道で咲く小さな黄色の花

あなたはどうしてそこで咲くの?


誰かに見られるわけでもなく

誰かを喜ばすわけでもない


そうなのね

君を見て分かったみたい

自分はとても小さな人間


出来ることなんて小さいもの

今夜の食事を作ること

明日のお勉強すること

明日の私を思うこと

今の私を大事にすること


私を囲む小さな輪っか

私を縛る小さな輪っか


大きくするわ 大きくするわ

ちょっとずつ ちょっとずつ


新しい未来がやって来ると信じるから



挫折で前に進めない

どうしてどうしてなの?


だけど、夜空はそこにあって小さな星が輝く

あなたはどうしてしてそこで光るの?


誰かに気づいてもらえたの?

誰かがお祈りしてくれたの?


そうなのね

君を見て分かったみたい

自分はとても小さな人間


出来ることなんて小さくて

洋服を洗濯すること

部屋の掃除をすること

明日の私はどうしてる?

今の私はそのためのもの


私の住む小さな家

私の家の小さな庭


大きくするわ 大きくするわ

ちょっとずつ ちょっとずつ


新しい私に出会えると信じてるから



駄目よ、未来を捨てたら

誰かを怒ったり、憎んだり、嫉妬したり

何かを壊したり、捨てたり、叩いたり


本当の自分を捨てないで

本当のあなたはどんな人?


暗い闇でもがき続けても……

暗い夜にもがき続けても……



私を囲む小さな輪っか

私を縛る小さな輪っか


大きくするわ 大きくするわ

ちょっとずつ ちょっとずつ


私の住む小さな家

私の家の小さな庭


大きくするわ 大きくするわ

ちょっとずつ ちょっとずつ


新しい未来がやって来ると信じるから

新しい未来がやって来ると信じるから


-----


 それは圧倒的な光だった。


 シアムとアルは、何かを話したわけでもなく、説明をしたわけでもなかった。ただ、その圧倒的な歌唱力で歌い、空を自由に美しく舞っただけだった。


 暗闇に包まれた人々は、その光を見て眩しくなって目を瞑り、自分達のなしたことを反省し、言葉を失った。


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