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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
二つの歌姫
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ツナクの回復

 部員達は、カフテネ・ミル・フラスラになって各地を移動しながら人々を集めてはゲリラ的なコンサートを開いた。コンサートの最後には、イツキナを中心とした神官達のコトダマ部隊がムー国民の洗脳の解除、浄化を実施した。


 アマミルは、休憩室に戻ると神官の差し出してくれたお茶にお礼して、一気に飲み干した。


「ふぅ~、今日は人が少なかったわね」


「んだねぇ~。まあ、こういう日もあるっしょ~。てか、足出しは慣れたんかい」


 イツキナにそう言われて、アマミルはさっとツナクトノを操作して長いスカートに変更した。


「あっ!変更しやがったっ!」


「あなたこそ、どうなのよ?」


「私はぜ~んぜん気にならないってっ!」


「あっそ」


 アマミルは、イツキナにニヤリとするとツナクを操作した。すると、イツキナが大声を上げた。


「アマミルゥゥゥッ!何しやがったぁぁぁぁ~~っ!」


 腕で身体中を隠したイツキナの姿は、もはや紐として言えないような水着姿に変わっていたからだった。アマミルはそんなイツキナを横目で見てしてやったりとニヤリとし、彼女を無視してマフメノに声をかけた。


「ところで、マフメノ君、忙しいところ申し訳ないけど、ツナクの回復は上手く言っているのかしら?」


「え、えぇ、大丈夫です。移動する度に技術神官がツナク同士をつなげていますから……」


 マフメノは、真面目に答えながらもアマミルの後ろで何とか服を着ようともがいているイツキナをチラチラと見ていた。無論、それを見てツクは腹を立てていた。


-----


 マフメノが答えたとおり、彼女らの活動と共に、技術的な神官達は、各地のツナクを回復させていた。


 ツナクは聖域よりも遙か上に存在している通信装置、つまり、我々からすると衛星を経由して通信を行っていた。また、この衛星上に各人のツナクトノから集めた情報を保存していて、更にロネントの学習データもここに集まっていた。つまり、この衛星は1つに集約されたクラウドサーバーであり、衛星を使ったネットワーク装置でもあった。


 だが、現在は、ここ衛星に目を付けたケセロによって、この衛星との通信が途切れてしまい、一国の情報全てが破壊された状態となっていた。ムー国という身体の頭と胴体を切り離された状態であり、もはや、身体を保つことすら出来ずにいた。


 ムー国を身体に例えると、ツナクという神経系統は切れてしまっていた。だが、地上に基地局を置いて互いにつなげることで、神経をつなげる外科手術を行っていた。これは謂わば、衛星回線から携帯電話回線にしたような状態だった。


-----


「……痛いわね、あなた……。

と、取りあえず、東に向かって進もうって話よね」


 イツキナに噛みつかれた状態のアマミルは、血を流しながらマフメノに更に確認するように聞いた。


「本当は西にも行きたいんだけど、何があるか分からないからねぇ……」


 イツキナは噛みつくのを止めて真面目に答えた。ムー大陸の中心地に神殿があったため、そこからまっ空く東に向かう事で神経を真っ直ぐに作り、背骨のようにする計画だった。


「よ~しっ!これならどうだ~っ!アマミルのくせにこんな悪戯するのが悪いのだっ!えいっ!えいっ!」


 イツキナは、怒りが収まらないのか、今度はアマミルの服を次々に替えて遊び始めた。


「なあにっ!あなたが先にやったんでしょっ!止めなさいっ!」


 今度はイツキナがアマミルの服を次々に替え、アマミルも仕返しにイツキナの服を次々と替えるのを繰り返し始めた。


「やだやだやだ~っ!アマミル先輩も、イツキナ先輩も止めて下さいよぉ……。なんかこのパターン多いなぁ……」


 アルが先輩達の悪ふざけを止めに入ると、唐突にシアムが、はしゃいでクルクルと回り始めた。


「にゃっ!にゃっ!にゃっ!にゃっ!」


 シアムらしくない、はしゃぎぶりだったのでアマミルもイツキナもアルも驚いていた。


「なあに?シアムちゃん?」

「ど、ど、どうしたんだい?シアムちゃんっ!すごく嬉しそうだけど」


 そう言いながらも服は次々と替わっていた。


「かつて見たことの無いはしゃぎぶりっ!まさかっ!」


 アルがそう言うと、シアムは目を輝かせた。


「そうなの、アルちゃんっ!カミとメッセージのやり取りが出来たの、にゃっ!」


「ほうっ!やったねっ!遂にメッセージのやりとりができるとはなっ!」


「はい、にゃっ!はい、にゃっ!はい、にゃにゃにゃ~っ!」


「シアムお姉ちゃんっ!良かったでっすねっ!」


 ホスヰもシアムに抱きついて一緒に喜んだ。七変化を止めたイツキナとアマミルも、他の部員達も大喜びのシアムに微笑むのだった。

 だが、マフメノは別のことを考えていた。


(あれ?近くに居るならここに来れば良いのに……)


「マフメノ先輩、すごいですねっ!!」


「あ、う、うんっ!そうだねっ!」


 ツクに抱きつかれて、マフメノも彼女に微笑み、ちょっとした疑問はすぐに消えていった。


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