表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
初仕事!
497/573

初めての仕事です!

大人達は何を言うのかと驚き、アマミルの父親は怒りの声を上げた。


「な~にを言うとるのかっ!新生児を外に出すなどありえんっ!」


「あなた、ロウア君が考え無しにそんなことを言うことはないでしょ?

…ロウア君、どういう意味なのかしら?」


アマミルの母親はロウアを理解するようにそう言ってくれたため、彼は正直に答えた。


「え、えぇ、だから、その彼女…、彼が私に話しかけてくれまして、この村の状況を解決したいと…」


「えぇ、シイリが?!」


シアムの父親は驚いた顔をして自分の妻の顔を見た。


「シイリがそんなことを…?」


「し、しかし、ロウア君…君は本当に彼と話しているのかい?」


キルクモが疑うようにそう聞いた。


「えぇ、そうです。

…えっ!自分をみんなに見せて欲しい?自分から話したいのかい?そ、そうか…」


「ロウア君、誰と話しているんだい?」


「皆さん、彼女が直接、話をしたいそうです」


「はぁっ?!」


アルの父親がそう言うとロウアはシイリの言葉を伝えたが、一同はロウアが何を言っているのだろうかと思った。

ロウアは結果的にどうなるのか分からなかったが、そう言うとコトダマを結ぶために少し後ろに下がった。


「みなさん、驚かないで下さいね…」


<<ワ・キ・ヘ・キ・ミルッ!>>


ロウアが柏手を結ぶように両手で大きくコトダマを結んだ。


「ロ、ロウア君っ?!な、何を…?」

「えっ!!!ひ、光っている…、何だこれはっ?!」

「イツキナさんのコトダマッ!」

「おぉ、本当に君が…」


キルクモだけじゃなく、この場にいる者は全員ロウアのコトダマに唖然とした。コトダマを結び終わると、一同の中心にいるシイリと重なるように一人の女の子が現れた。


<こんにちはっ!お父さんっ!お母さんっ!皆さんっ!シイリと言います>


シイリはそう言うとぺこりと頭を下げてニコリとした。


「あぁ、あぁ、シイリッ!!」

「あなたっ!!なんてことでしょう…、シイリが目の前に…」


シアムの両親は自分の子供が再び現れて涙が溢れていて、他の者は口が開いたまま何も言えずにポカンとしていた。


<お母さんが頑張ってくれたから生まれること出来ましたっ!私を産んでくれてありがとうっ!!>


「うんうんっ!!こちらこそ、生まれてきてくれてありがとうね…、うぅぅっ…」


<あまり長く話していられません…、お父さん、お母さん、私を村の中心に連れて行って下さい、ちょっと頑張ってみたいことがあるんです>


「シイリッ!分かったわっ!私は未だ動けないけど、お父さんが連れて行ってくれるからね」

「あ、あぁ…、そ、そうだな、そうしよう」


<ありがとうっ!またお父さんとお母さんの子供になれて嬉しいっ!良い子になるから…ね…>


シイリはそう言うと静かに消えていった。


「おぉ、おぉ…、シイリッ!ま、未だ消えないでくれっ!!」

「あぁ…、私達もまたあなたに会えてうれしいのよ、うぅぅ…」


シアムの両親の声は部屋に響きだけだったが、他の者達は今起こったことについて紛糾し始めた。


「ロウア君っ!今の女の子は何だっ!あのパーティで別れを告げて停止したロネントだったよな?それがどうして現れたのだっ!!全く理解できんっ!」


アマミルの父親は、カフテネ・ミル・フラスラのコンサートの後のパーティーで別れを告げたロネントを思い出しながらそう言った。無論そのロネントは、生まれ変わる前のシイリが宿っていたロネントだった。


「あぁ、そうだそうだ、あの子でしたね。何処かで出会ったと思っていたのです」


イツキナの父親も同じパーティーにいたので思い出すようにそう言った。


「そう言えば、あのロネントも"シイリちゃん"と言いましたね…。確かロネントだった…ですよね…?」


アルの父親も不思議そうにそう言った。


(…あのロネント?彼女がこの赤ん坊に生まれ変わった?どういう事だ…、ロウア君…君は何をしたのだ)


キルクモは黙っていたが、以前自分の教室にいたロネントだったので頭が混乱しそうだった。


彼らの質問にはシアムの父親が恐縮して回答した。


「…あぁ、すいません、みなさん。それは…説明すると長くなるのです…」


「はぁ~、何なんだ全く…、説明してもらえるのですな…。」


「はい、もちろんです」


「それならまぁ…。しかし、私らはロネントに振り回されてばかりだな…」


アマミルの父親はそう言うと大人しくなった。


すると、シアムの母親は自分の子供の気持ちを夫に伝えた。


「…あなた、皆さんには申し訳ないけど、まずは父親として子供の思いを実現して下さいな」


「あ、あぁ、そうだったな」


シアムの父親は、そう言うと慌てるように赤ん坊を抱えて外に出て行って、他の者も後を追った。


-----


エメはロウアのいつものコトダマを見ていたが、少し不安に感じていた。


(…コトダマの力が弱い?彼女はすぐに消えてしまったわ…)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ