初めての仕事です!
大人達は何を言うのかと驚き、アマミルの父親は怒りの声を上げた。
「な~にを言うとるのかっ!新生児を外に出すなどありえんっ!」
「あなた、ロウア君が考え無しにそんなことを言うことはないでしょ?
…ロウア君、どういう意味なのかしら?」
アマミルの母親はロウアを理解するようにそう言ってくれたため、彼は正直に答えた。
「え、えぇ、だから、その彼女…、彼が私に話しかけてくれまして、この村の状況を解決したいと…」
「えぇ、シイリが?!」
シアムの父親は驚いた顔をして自分の妻の顔を見た。
「シイリがそんなことを…?」
「し、しかし、ロウア君…君は本当に彼と話しているのかい?」
キルクモが疑うようにそう聞いた。
「えぇ、そうです。
…えっ!自分をみんなに見せて欲しい?自分から話したいのかい?そ、そうか…」
「ロウア君、誰と話しているんだい?」
「皆さん、彼女が直接、話をしたいそうです」
「はぁっ?!」
アルの父親がそう言うとロウアはシイリの言葉を伝えたが、一同はロウアが何を言っているのだろうかと思った。
ロウアは結果的にどうなるのか分からなかったが、そう言うとコトダマを結ぶために少し後ろに下がった。
「みなさん、驚かないで下さいね…」
<<ワ・キ・ヘ・キ・ミルッ!>>
ロウアが柏手を結ぶように両手で大きくコトダマを結んだ。
「ロ、ロウア君っ?!な、何を…?」
「えっ!!!ひ、光っている…、何だこれはっ?!」
「イツキナさんのコトダマッ!」
「おぉ、本当に君が…」
キルクモだけじゃなく、この場にいる者は全員ロウアのコトダマに唖然とした。コトダマを結び終わると、一同の中心にいるシイリと重なるように一人の女の子が現れた。
<こんにちはっ!お父さんっ!お母さんっ!皆さんっ!シイリと言います>
シイリはそう言うとぺこりと頭を下げてニコリとした。
「あぁ、あぁ、シイリッ!!」
「あなたっ!!なんてことでしょう…、シイリが目の前に…」
シアムの両親は自分の子供が再び現れて涙が溢れていて、他の者は口が開いたまま何も言えずにポカンとしていた。
<お母さんが頑張ってくれたから生まれること出来ましたっ!私を産んでくれてありがとうっ!!>
「うんうんっ!!こちらこそ、生まれてきてくれてありがとうね…、うぅぅっ…」
<あまり長く話していられません…、お父さん、お母さん、私を村の中心に連れて行って下さい、ちょっと頑張ってみたいことがあるんです>
「シイリッ!分かったわっ!私は未だ動けないけど、お父さんが連れて行ってくれるからね」
「あ、あぁ…、そ、そうだな、そうしよう」
<ありがとうっ!またお父さんとお母さんの子供になれて嬉しいっ!良い子になるから…ね…>
シイリはそう言うと静かに消えていった。
「おぉ、おぉ…、シイリッ!ま、未だ消えないでくれっ!!」
「あぁ…、私達もまたあなたに会えてうれしいのよ、うぅぅ…」
シアムの両親の声は部屋に響きだけだったが、他の者達は今起こったことについて紛糾し始めた。
「ロウア君っ!今の女の子は何だっ!あのパーティで別れを告げて停止したロネントだったよな?それがどうして現れたのだっ!!全く理解できんっ!」
アマミルの父親は、カフテネ・ミル・フラスラのコンサートの後のパーティーで別れを告げたロネントを思い出しながらそう言った。無論そのロネントは、生まれ変わる前のシイリが宿っていたロネントだった。
「あぁ、そうだそうだ、あの子でしたね。何処かで出会ったと思っていたのです」
イツキナの父親も同じパーティーにいたので思い出すようにそう言った。
「そう言えば、あのロネントも"シイリちゃん"と言いましたね…。確かロネントだった…ですよね…?」
アルの父親も不思議そうにそう言った。
(…あのロネント?彼女がこの赤ん坊に生まれ変わった?どういう事だ…、ロウア君…君は何をしたのだ)
キルクモは黙っていたが、以前自分の教室にいたロネントだったので頭が混乱しそうだった。
彼らの質問にはシアムの父親が恐縮して回答した。
「…あぁ、すいません、みなさん。それは…説明すると長くなるのです…」
「はぁ~、何なんだ全く…、説明してもらえるのですな…。」
「はい、もちろんです」
「それならまぁ…。しかし、私らはロネントに振り回されてばかりだな…」
アマミルの父親はそう言うと大人しくなった。
すると、シアムの母親は自分の子供の気持ちを夫に伝えた。
「…あなた、皆さんには申し訳ないけど、まずは父親として子供の思いを実現して下さいな」
「あ、あぁ、そうだったな」
シアムの父親は、そう言うと慌てるように赤ん坊を抱えて外に出て行って、他の者も後を追った。
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エメはロウアのいつものコトダマを見ていたが、少し不安に感じていた。
(…コトダマの力が弱い?彼女はすぐに消えてしまったわ…)




