部員達
部員達は、別室に居たがくつろぐでも無く重苦しい雰囲気だった。
大きなソファに座っているアマミルは疲れ切って眠っているホスヰに自分の膝枕をしてあげていた。
イツキナは落ち着きつかないのか、ほぼ全面がガラス張りとなっている窓際を指の爪を噛みながら行ったり来たりしていた。そして、我慢しきれなくなったのか、窓の端で止まると大声を上げて愚痴を漏らした。
「全くっ!あいつっ!何てことをしたんだよっ!私達を動けないようにしてさっ!学校のみんなにも、お父さんやお母さんにも連絡が取れないし、腹が立つったらっ!!」
「なあに?そんなに怒っても仕方ないでしょ?」
アマミルは彼女をチラリと見た後に呆れるようにそう言った。
「なんだよっ!!さっすが男らしいアマミルさんは悟ったようにさ~っ!すげ~よな~っ!」
この嫌みにはさすがのアマミルもプチッと切れてしまった。
「はぁっ?!今、私のことを"男らしい"とか言ったのかしらっ?!」
いつもなら冷静に対処するアマミルだったが、彼女も狭い空間で何も出来ない上に、自分の両親とも連絡が取れないことに不安を感じていた。そんな彼女も自然と語気が強くなった。
「んだよっ!そう言ったさ~っ!"おっとこ"らしいアマミル先輩なら何か名案でもあるのかねって聞いたんだよ~っ!」
「むか~~~っ!あなたねっ!こんな状況で良くもそんな軽口を叩けるわねっ!
名案があったらすぐにでも話しているわよっ!
そもそも、あんたこと何かないわけ?コ・ト・ダ・マが使えるんでしょっ!コトダマで何とかしなさいよっ!」
「なにをぉぉ~~っ!コトダマは、んなに万能じゃないんだぞっ!」
「大体、あんたこの頃、身体が自由になったからって調子に乗りすぎなのよっ!
あなたの学校の成績じゃ神官になれないってのに、コトダマ使えるからってチヤホヤされちゃってっ!浮かれすぎてんのよっ!
た・ま・た・ま、カミ君が近くに居たから出来るようになっただけじゃないっ!偉そうにしないでよっ!」
「ア、ア、ア、アマミルゥ~~っ!い、今、酷い~こと言ったぞぉっ!、すげ~酷いこと言ったぞぉ~~っ!
ぐにゃあぁぁぁぁ、あ、あ、あほみるぅぅぅっ!あほみるなんて、アホなんだぞぉぉっ!!」
イツキナは言い返す言葉が見つからず、頭をぐちゃぐちゃにすると涙目になって訳の分からないことを言い始めた。
「ふんっ!ちゃんと理論的に言ってみなさいよっ!」
「ぐちゅぅぅぅ…」
女先輩同士が喧嘩を始めたので、このままで不味いと思ってアルが止めに入った。
「やだやだやだ~っ!アマミル先輩もイツキナ先輩も止めて下さいよぉ~…」
シアムも不安な顔をしながら、それに付け加えた。
「そうです、にゃ…。みんな不安なのですから…。
カミとも連絡が取れないし、私達のお父さんとお母さんも心配です、にゃ…
お腹の中のシイリも大丈夫かなぁ…」
彼女の言葉に、アマミルもイツキナも口を閉ざすしか無かった。アルとシアムの両親もそうだったが、アマミルとイツキナの両親もあの地下室に捕まっていたのだった。
「も、もうすぐ、マフメノ先輩が飛行車を直しますのですから、お、お待ち…ください…ませ…」
ツクもフォローするようにマフメノが飛行車を直しているのだと教えてくれたが、怖い先輩方に強く言えず、断段々と小声になっていった。
「んが~~っ!もういいっ!!寝るっ!」
「そうしなさいっ!静かになって良いわっ!」
イツキナはそう言うとアマミルにあっかんべ~をして、自分の部屋に移動してしまった。
「むっ!!あなたまたそれをっ!!ほんっとに腹が立つわっ!!顔をも見たくないっ!」
「先輩…、止めましょうよぉ~」
「…わ、分かっているわよ…」
さすがのアマミルもアルに説得されてしまう始末だった。
「シアムゥ、わたし達はどうすりゃ良いんだろうねぇ…」
アルもどうして分からず仕舞いで、そう言いつつもシアムを困らせるだけだと思った。
「う、うん…、私達に出来ること…」
やはり、シアムは猫耳を垂らして困った顔をするしか無かった。
「…むにゅ…あ…あうん…?」
さすがに騒がしくなったのでホスヰも目を覚ましてしまった。
「…なんかあったでっすか…?」
「…何も無いわよ…、ごめんね…」
アマミルは気を悪くしたのか、そう言ってホスヰの頭を撫でてあげた。
「あ…う…、あ、あれ…アマミルお姉…ちゃん、怒っているでっす…か…?
怒っちゃメッ…でっす…怒ると悪魔達がやって…くる…でっす…よ…zzz」
ホスヰは疲れが取れないのか、そう言うとまた眠りに入ってしまった。
シアムはその姿を見つめると窓際に移動して雲海を見つめ、そして自然と合掌した。
(…カミ…、あなたなら何とかしてくれる…、そう信じている、にゃ…。
ラ・ムー様、私達をお守りください。そして、どうかカミの力になってください…)
いつの間にかアルも横にいて一緒に祈りを捧げるのだった。




