正体を知った者達
二つの魂の正体を知った者達は、それぞれ様々な事を考えていた。
アルとシアムもそうだった。
「やだやだやだ~~~っ!
カミが"みかえる"とか、ケセロが"さたん"とか?
あの二人は何者なんだよ~…。
…ん?
み・カエル…?どこに帰るんじゃ?」
「アルちゃん…、だじゃれ言っている場合じゃ無いよぉ…。
私もその名前の人達は知らないけど、神様と悪魔の戦いが始まっちゃったってことなのか、にゃぁ…。」
「やだやだやだ…。私らって、そんなすごい戦いを見ているってこと…?
う~~~、これはやばいぞぉ、シアム…。
シアム…?…あれ?シアム、聞いてる?」
アルは、ふと見るとシアムは下を向いて何かブツブツと独り言を言っていた。
「…カ、カミは、すごい人だった、にゃ…。あわわわ…、わ、私なんか…、私なんか…カミに…に、似合わ…」
シアムは、自分なんかがロウアに合った女性なのだろうかと不安になっていた。アルはそんなシアムの背中をポンッと叩いた。
「にゃっ!」
我に帰ったシアムの垂れ下がっていた猫耳がぴょんと立ち上がると、アルは彼女の顔に顔を近づけた。
「何を悩んでいるかと思ったら、自分なんかがカミィに似合わないって~?
んなことないってぇ~っ!
カエルとか、み・帰るとか、イミフな名前かもだけど、よ~く考えるのだっ!」
「にゃにゃっ?!」
「あそこに居るのは、あのエロカミィだよ~?同じ部員なんだしさ~っ!」
シアムはよく分からない理屈だとは思ったが、彼女が自分を励まそうとしているのだけは分かった。
「う、うんっ!そうだねっ!同じ部員だもんねっ!」
そして、ロウアと過ごした日々を思い浮かべた。
彼が言葉を話せなかった頃、自分達のアイドル活動を知った頃、一緒に部活動をした頃、そして、一緒に学習旅行に行って二人で過ごした夜の頃のことを。
「あの夜を過ごした彼氏じゃないかぁ~~っ!」
アルはそれを知ってか知らずか、シアムを茶化すと彼女は顔を真っ赤にした。
「にゃ~~~~っ!!
ア、ア、ア、アルちゃんっ!!
ご、ご、ご、誤解があるような言い方はダメ~~ッ!」
「うれしそうだぞ~~っ!ニヤニヤ…。」
「もうっ!!」
シアムはアルを何度も両手で叩いた。
「たはは~っ!」
そして、アルが苦笑いして困るのを見ると、立体映像に映っているロウアを見つめ、自然に合掌して彼の無事を祈るのだった。
(…私は彼を愛してる…。私は彼のためになんだってする、にゃっ!)
アルはその姿を見て微笑むと彼女の肩にコツンと自分の肩をぶつけた。
「お~~いっ!シアムゥ~~、自分だけがカミィを心配していると思ってるな~?」
「アルちゃん…!う、うん、そうだった、にゃっ!」
アルもロウアの友達だった事をシアムも思い出し、二人は合掌してロウアために祈りを捧げた。
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「わわわっ!アマミル、ケセロも中の人は未来からやって来た人だったんじゃんっ?」
イツキナの慌てようにアマミルは冷静に答えた。
「人というより、悪魔じゃないかしら…。」
「あ、悪魔ぁぁ?それがカミィと一緒にここに来たと…。おいおい、そりゃ何なんだよ~…。」
「カミ君が未来について話してくれた悪魔…。
そいつを封じ込めるために何とかホールに入って、ここに来たって話していたわ…。」
アマミルはかつてロウアから聞いた未来から来た方法、その時に起こった事件などを思い出してそう言った。
「ま、まぁ、そんなこと言ってたけどさぁ…。んで、それがロネントに宿ってケセロという名前を名乗っていたと…。
ケセロって人間みたいに話すしさぁ。な~んか変だと思っていたんだよなぁ~。」
「そうね…。
それがこの国を滅ぼそうと暗躍していたなんて…、悪意が巧みすぎるわ…。」
二人は、言葉が途切れると立体映像に映ったケセロを見つめた。
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この神殿に集まっていた天使達も互いに顔を見合わせていたが、その名前について知るものは少なかった。
メメルトもその一人だった。
「し、し~しょぅ…。ケセロが言ったイケガミ様の名前…、ミカエルって聞いたことありますかぁ…?」
「わ、分からない…。私程度の力では、深くまでは思い出せない…。ラ・ミカエル…」
髪の短い女神は、ミカエルに神の呼称、"ラ"を付けてミカエルのことを呼んだ。そして魂の奥に眠っている知識を探った。
「…ラ・ミカエルは、地上での悪行をほおってはおけず、宇宙からやって来たという話だったような…。」
「えぇっ!う、宇宙?イケガミ様は宇宙人なんですか?
え、えぇ~~っ!そんな人が居るのっ?!
宇宙って真っ黒なだけですよね?
真っ黒な世界から来た真っ黒人が、地上を真っ黒にしようとした悪魔を退治しに来たと…?!
な、なんか全てが、ま、真っ黒になっちゃいますぅ~~っ!ぎゃ~~~っ!!大変だ~~~~っ!」
メメルトが両手を上げてわめき散らすのを見て、髪の短い女神はポコンとメメルトの頭を叩いた。
「…い、痛ぁぁ…。もう、霊体なのになんで痛いのぉ?」
「いつも落ち着けって言ってるだろっ!」
「は、はい…。」




