表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
NULL
477/573

機械の笑い声

部員達の会話を聞きつつ、エメはそれらの回答を説明した。


「…そうだ。その昔の悪行をツナクのゲームにしちまったのさ、こいつがな!」


エメはそう言いながら立ち上がりつつあるケセロを指差した。


「…クックック…」


===== それはロボットとは言えぬ笑い方をしながら立ち上がった。=====


「それは、お前たち人間の欲求を満たしてやるためだ。」


===== それはエメの指摘を否定することはなかった。=====


「何が欲求だっ!お前の勝手な妄想で作り上げた愚かな仕組みでどれだけの人間を地獄に落としたと思っているんだっ!」


ロウアは目の前のロボットに向かってそう言った。


「…ジゴク?地獄とはなんだ?お前たちの妄想で出来た世界のコトか?

…クックック。

…そうか、こういうときに笑いたくなるのか。

クックック…、ケケケ…。

妄想の世界、天国と地獄…とやらを作り上げる…。

お前たちは実に面白い。そんな世界を妄想することで秩序を保とうとしている。」


===== それは初めて笑い方を知ったような口ぶりだった。=====


「これは妄想なんかじゃないっ!

実際に存在しているっ!神だって存在しているんだっ!

だから人間はより高みを目指して、神を目指して生きているんだっ!」


ロウアは怒りに震えながらそう言った。


「欲求だけのお前たちがそれらしい高尚なコトを言う。

笑いたくなってきたぞ。

なぜなら、お前たちはワレワレと同じように心臓を貫けば電源が落ちるだけの存在だ。

子供を作るコピー機能だけが有能なだけだ。」


「人は高みを目指して、人と人とを繋いで家庭を築いて、国を築いて、文明を築いていくんだっ!

それは神の国を地上に作るためだっ!

ロボットのお前達は未来を築けないっ!神の世界と人間を何も分かっていないっ!」


===== それはロウアの声を聞いて目を細め、見下すようにこういった。=====


「分析出来ていないのはお前だ、イケガミ…。

人間は、以下の欲求を満たすために社会を形成している。

つまり、

1. 生理的欲求

2. 安全の欲求

これらは割愛しよう。


3. 所属と愛の欲求

何かにお前たちは所属し、互いに助け合おうとしている。

4. 承認の欲求

その所属した社会で認められようとしている。

5. 自己実現の欲求

その社会で自分のやりたいことをしようとする。

6. 超越的な自己実現の欲求

そして、自分が誰よりも素晴らしいとみてめて欲しいと思っている。」


この話を聞いてロウアは思い出した。この欲求について池上だった時代に聞いたことがあったことを。


(…マズローの欲求五段階説…。何故、ケセロがこれを知っている…?)


===== それは会話を続けた。=====


「ワレワレは、これら全てを満たす方法をメメルトという個体を観察することで知った。」


-----


神殿にいたアマミルとイツキナは知った名前が出て来て驚きの声を上げた。


「なあに?メメルトって言ったの?」


「わ~…、そいえば、こいつの殺されたって言ってたよね…。」


アマミルとイツキナは顔を見合わせた。


更にアマミルはこの会話を聞いていて別の事に気づいた。


(…ろほっと?発音しにくいけど、ロウア語、つまり、カミ君は未来の言葉も使ったわよね…?

ケセロはそのまま受け入れたわ…。何で意味を知っているの?

…それに今、カミ君の事をイケガミと呼んだの…?)


-----


神殿に居た天使達の一人、元アマミルのルームメイトだったメメルトは、自分の名前が出たのでドキッとして、髪の短い女神に抱きついた。


「…う~、やっぱ、私はこの子に殺されたんだよ~…。なんだか怖いよ~…、ししょ~う…。」


「まあ、あんたが怖がるのは無理も無い…。ただ、今は大丈夫だよ。

こいつにはお前は見えていない。怖がりすぎるとお前も下に落ちちまうよ。」


髪の短い女神は脅すように指を下に向けた。


「そ、そうですけどぉ~…。な、なんで私を人類のサンプルみたいに言うんだよぉ~…。」


メメルトは恐怖で震えていた。


-----


===== それは話を続けた。=====


「メメルトという個体は、故郷から一人で首都の学校に来たが成績がついてこれず、劣等感に苛まれた。

そして、現実から逃げるために、この個体はツナク上のゲームで自分の欲求を満たそうとしたのだ。」


-----


これを聞いてメメルトは顔を真っ赤にした。


「こ、こら~~っ!やめろぉ~~っ!

わ、わ、わ…、私の黒歴史を晒すな~~~っ!

い、今はダナ…、天使の予備の予備ぐらいの位置でダナ…、修行中、な、なのダゾ~~っ!

あ~~~…。これって全国に流れているよねぇ…。恥ずかしいよぉ~。うぇ~~~ん…。」


霊体として叫んでも霊の声を聞こえるのは一部の人間だけで、ましてケセロには全く伝わっていなかった。


「落ち着きなって…。」


髪の短い女神は、そういうとメメルトの頭をコツンと叩いた。


「いたた…。死んで生き恥を曝すとは…これいかに…。」


メメルトは、また頭を叩かれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ