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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
トップランカー ホヒ
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想定外の救助者

ロウアは、巨人族を狙った殺人ロネント達の操縦者が、自分と同年度の若い人間だったことに衝撃を受けた。

しかし、自分の生徒達を殺された事実は変えられなかった。彼は怒りのまま武器を取ってロネントを破壊したが、一体のロネントが彼の行動を止めるように仲間のロネント達を制止した。


やがて、その手を止められた二体のロネントがログアウトすると言うと停止状態になり、その後、再び動き出すと何処かに行ってしまった。


「あれ、何なんだ…?何処に行ってしまったんだ…。

さっきまでは自由に動いていたのに、急に機械的な動きに…。」


ロウアは理解出来ずにいると、もう一体の制止したロネントがロウアに向かって懐かしい名前で話しかけて来た。


"イケガミさん、彼らがログアウトしたからロネントが自動的に所定の位置に戻っていったんです。"


「ロ、ログアウトだって…?それって…。」


"動かしていた者の事です。"


「動かしていた者…?

…い、いやいや、それより、なんで僕の名前を…?」


ロネントの動きも理解出来なかったが、説明している目の前の個体は、未来で生活していた頃の名前で自分を呼んだことにロウアは驚いた。


"イケガミさん、お久しぶりですね。"


「お、お久しぶり…?僕はロネントに知り合いなんか…。いや、居たかな…。」


"シイリの事ですか?彼女のことは、シアムとアルに聞きましたよっ!"


「き、君は、シアムとアルと知り合いなのかいっ!?」


このロネントは、シアムとアルの事だけではなく、シイリの事すら知っていて、ロウアは驚きの声を上げた。


"そうですっ!あの二人とアトランティスにあなたを助けに行ったんですからっ!"


「えっ!!僕を助けに?ど、どういうこと…?」


"シアムが、あなたを助けたいって言って行動を起こしたんです。アルと私も一緒にアトランティス国に行ったんですよ。"


「ど、どうしてそんな危険なことを…。来ないでって言ったのに…。」


"シアムさんは、止めても聞かなかったんですよ。ふふふっ!彼女の気持ちは分かっていらっしゃるでしょ?"


「…シアム。」


ロウアは、一日も彼女のことを忘れたわけでは無かった。アトランティスの寒空の下で互いを暖め合いながら空を見上げたことを思い出し、胸が熱くなった。


"あれ?だけど、ムーの女神様経由で、もう一人のロウアさんに連絡したはずなんですが…。"


「…ロウア君に…?

そうか…、あいつ不安にならないように僕に言わなかったな…。しょうがないなぁ…。」


"そうでしたか…。"


「しかし、どうやってあの国に潜入したんだい…。」


"神官の乗り物で乗り込みました。"


「なっ!それならすぐに捕まってしまう…。」


"いいえっ!私達、歌を歌いながらあなたの捕まっている戦艦に近づいていったんです。"


「え、えぇ~…っ!あの子達らしいけど…。はぁ~、そうか…、アルの考えだな…。」


"あぁっ!さすがお友達ですね~っ!"


「それで…、二人は無事なの…?」


"はい、二人とも無事です。だけど、最後に戦艦が動いてしまって爆発してしまったから、あなたが死んでしまったものと思っています。"


「そ、そっか…。あの爆発を見てしまったのか…。僕はあの戦艦に居た子ども達に助けてもらったんだ。」


"そうでしたか…。私はずっと気になっていて、戦艦の方向から計算してここじゃ無いかと思っていたんです。"


「なるほど…。」


"あの二人と離れ離れにさせられてからは実験材料みたいにされて大変でした。ですが、最後にこのロネントに埋め込まれたのが幸いしました。"


「…埋め込まれたって、あ、あれ…?ごめん。君は一体誰なんだい…?」


ロウアは肝心なことを聞きそびれていたことを思い出した。


"あははっ!キホです。石川來帆ですよ。あの震災の時に助けてもらった。そっちは古過ぎかな…、イツキナの身体を借りたエメだぜっ!"


ロウアは、途中で男声に変わったのを聞いて半分呆れてしまった。


「あ、あぁ…。石川さん…、エメ…。そっか…。君だったのか…。君が僕らを助けてくれたのか…。」


ロウアは、エメとして転生した彼女の不遇を思い出した。そして、最後には天国に戻ったのが最後の別れだった。


「というか、どうしてそんな姿に…?君は、オケヨトさん達と天国に戻ったはずでは…?」


"…エメの時に仲間だった者からの怨念が天国に帰らせてくれませんでした…。"


「そ、そうか…、それで君はシイリと同じようにロネントの演算装置に捕まってしまっていたのか…。」


"そうです。最後には、このば・け・も・のですよ…。しかし、ムーの女王への恨みも執着となっていたのだと思います…。"


ロウアは、ムー国の歴史で見たエメの人生を思い出した。ロネントによって仕事を奪われた人々を助けるためムーの女王の殺害を計画して実行に移したが、結局、失敗して死刑になった運命…、それがエメだった。


"だけど、それは間違いだったと深く反省しました。"


「そうか…。なんか清々しくなったね。」


"…そうですか?そうだと良いのですが…"


ロウアは、霊力を失っていたが、目の前の禍々しい姿と重なるように晴れ渡った空のようなエメを感じた。


"だけど、良かった~っ!あぁぁ、本当に良かった…。あの二人も喜んでくれますよっ!"


顔の無いロネントが諸手を挙げて喜んでいるので、自然と笑みがこぼれた。


「…あ、あれ、そう言えば巡業の時もその姿だったの…?」


だが、ロウアは、四本腕の化け物の姿で歌の巡業をしたのかと思うと本当だろうかと、ふと思ってしまった。


"まさかっ!巡業の時は、イツキナさんのロネントを使ってました。"


「イツキナ先輩の…、あぁ、身体が治る前に使ってた…。

そうか先輩達、部員達…、みんな無事なんだろうか…。」


"私がここに来る前は、皆さんお元気でしたよっ!"


「みんな元気か良かった…。」


"イツキナは、コトダマを使って神官を助けています。"


「えぇ、イツキナ先輩が…?」


ロウアは、イツキナがコトダマを使ってたのを思い出した。


"そうそう、ホスヰちゃんは、ムーの女王になりましたっ!彼女のお陰で心を入れ替えられたのだと思います。"


「そっか…。やっぱ、すごいなホスヰは…。」


"あれ?余り驚きませんね。"


エメは、ロウアがイツキナの話と違い、ホスヰの話は驚きもしないので不思議に思って聞き返した。


「…う~ん、知ってたというか…。最初に助けた頃に彼女の優しさに満ちた霊力に気づいていたから…。そっか、女王か…。」


"えぇ、とても純粋で偉大な力…。"


ロウアは、ホスヰがどうして深い霊力を持っているの理解出来なかったが、エメの説明で合点がいったような気がした。


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