期間限定特別イベント?
ホヒと自分の作成した「守護者」と呼ばれるゲームキャラクターによる奇妙な探索は一ヶ月ほど経過した。守護者は、自分自身では動くことが出来ず、あっちに行けとか、こっちに行けとか指示をしてくるだけだった。
ホヒがそれを嫌がろうとすると、彼の持っている秘密の動画を公開するぞと脅され、渋々を言うことを聞いていた。
その探索移動中、当然のことながら、巨人族達からの急襲もあって、ホヒ達は彼らから襲われることも多々あった。だが、そのホヒの操作力のお陰か、レベルは初期状態にも関わらず、巨人族から殺害されてゲームオーバーになることもなく、探索は順調に進んでいた。
今日も急襲にあったが、上手く避けきるとホヒは守護者を川辺に移動させて一休みした。
「はぁ…、はぁ…、い、今のはきつかった…。」
"さすが、トップランカーだな。なかなかやるじゃないか。"
「い、いっそ、倒しちゃった方が楽なんだけど…。」
"はんっ?お前なぁ、殺すなって言ってるだろうがっ!"
守護者は大声でホヒに怒りをぶつけた。
「ひ、ひぃ…、わ、分かっていますよぉ…。
…い、痛っ…。」
その声でホヒは驚き、後ろに吹っ飛んでしまい自室の壁に頭をぶつけた。立体映像の守護者の頭には怒りマークのアイコンが表示されて、ホヒは顔が青ざめた。
「え、えと…、な、なかなか見つからない…ですね。探している人は…。」
頭を撫でながら立ち上がったホヒは、守護者を怒らせては不味いと思って別の話を出した。守護者の目的は、どうやらこの島に居ると思われるとある人物を探すということだった。
"そうだなぁ…。この島じゃ無いと厄介なんだよな…。しかし、これだけ探しても居ないとなると…。"
「そ、そうだよ、居ないんだよ、きっと。だ、だから、もう諦めてさ…。」
この守護者が諦めてさえくれれば、ホヒは解放されて男の秘密動画を流される心配もなくなると必死でそう言った。
"…まあ、悪いんだけど、もう少し付き合えよ。まだ行ってない場所があるだろ?"
だが、守護者は、言うことを聞いてくれそうになかった。
「…だけど、人捜しのイベントなんてあったかなぁ…。初めて聞くんだけど…。その人に会うとどうなるの?」
"…イベント?イベントねぇ…。"
守護者の画像には頭を悩ましているようなアイコンが表示されていた。
「…違うの?」
"イベント…、そうそう、これは謂わばイベントだな。だから、そいつに会うと良いことがあるかもだぜ?"
「う、う~ん…。それって、どんな…」
"話したら面白くないだろ?"
「そ、そうだよね…。」
ホヒは、心の何処かで自分だけの特別なゲーム内イベント起こっていると考えていた。もしかしたら、秘密動画を流されるというのも嘘では無いかと、ちょっと期待していた。
"未だ行ってない場所は、ここか?"
そんな考えも守護者はお見通しだったが、相手をするの面倒になったのか、地図を立体映像として表示した。守護者は、システム操作だけは自由に行えるため、その地図上のとある場所に赤丸を付けた。
「そうだね、しかし、ここは…。」
"んだよ。何か問題あるのか?"
「レベル制限が掛かっていて移動できない場所だよ?」
確かに赤丸を付けたエリアは、真っ赤になって点滅していて移動できない旨を示していた。
"んなのは、あってないようなもんだっ!問題ない。移動するぞ。"
「そ、そうなの?」
"そうだ。お前だけの特別なイベントだからなっ!"
「…本当かな…。」
半信半疑のホヒは、守護者を意識で操作しながら、レベル制限エリアの近くまで移動させるのだった。




