部活動?
聖域では、神官達がロウアの登場に驚いていた。自分達が行けない場所に彼がすでに乗り込んでいたため、もしかしたらと希望に溢れていた。
「ラ・サクル…、あの少年は?」
王室部の女王相談役三人の一人、セソはロウアを見て驚きつつ、同じく相談役で王室部室長のサクルに彼について質問した。
「ラ・エネケルを助けたという少年では?ラ・セソ。
確かにスラッとしていて頭の良さそうな少年ですね。ラ・エネケルが慕うのも分かります。う~ん、格好いいかもっ!」
相談役の一人、モエがセソの質問に代わりに答えた。
「ラ・モエ、違うのですよ、それは分かっているのです。彼を…少年…と呼んで良いのやら…。」
「えっ?!それはどういう意味ですか…?!
何か見えているのですか?私には霊視ができないから…。」
モエは、サクルが立体映像のロウアを驚きの目で見つめていて、彼女らの会話に気づいていないようだった。
「ラ・サクル…?ラ・サクル…?ど、どうされたのですか?」
「え、えぇ、あ、あぁ、ラ・モエ。申し訳ございません…。」
サクルは立体映像に映っているロウアを包み込む巨大な黄金の光に驚愕していたのだった。
「…か、彼の光の大きさは、ラ・エネケルよりも大きいのですよ、ラ・モエ。」
「え、えぇっ?!そうなのですかっ?!女王様よりも大きいって…。まさか、ラ・ムー様…ぐらいなのでしょうか…。」
「なんということでしょう…。彼はもしかしたら上位の神に近しいのではないでしょうか…。救世主に近い方です…。
イツキナさんからは、コトダマを授けてくださった方と聞いていましたが、まさかここまでの光をお持ちの方だったとは…。
今生でこのような方に出会えるとは…。」
そう言うと、サクルは両手を合わせて膝をついた。
セソ、モエ、他の神官達もそれに続いてロウアを讃えた。
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聖室では、霊界お助けロネント部の部員達がロウアの帰還に沸いていたが、イツキナは唐突に現れた四本腕の化け物に見覚えがあった。
「ア、アマミル、あの四本腕ってツナクで流行ってるゲームのキャラじゃない?しかも、あのエメだってっ?わっけ分からんわ~。」
イツキナは、ケセロがエメと呼んだ四本腕の化け物を指してそう言った。
「…あれがエメ…。
ケセロはエメがロウア君を連れてきたって言ってたわね…、どうしてかしら…。」
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それを地下室で聞いていたエメは、憤慨した。
「んだよ、イツキナッ!四本腕とか呼ぶなって。お前だって俺みたいなもんだっただろうが~っ!
あっ、カメラはこっちか。」
四本腕の化け物は、そう言いながらカメラに向かって指を差した。
"な、なんだと~っ!君と一緒にするな~っ!だが、しか~し、分かったぞ。このからみ方はやっぱエメだわ~。
あ~、君はなんつ~姿に…。あの美少女姿はどうしたんだよ…。"
「はんっ!やっと分かったかっ!てか、自分の"元"分身を指して美少女とか言うなよっ!」
"てへっ!"
「出たな…。まあ、確かに毎度毎度、自分の変幻ぶりが嫌になるけどな。」
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「あなた、本当にエメなのね…。カミ君は、本当にあなたが助けたの?」
聖室でアマミルは、四本腕の化け物がエメだと理解するとロウアと一緒に登場した理由を知りたくなった。
"んだよ。相変わらずえっらそうだな~。本人に聞けって~の。"
エメが面倒くさそうにそう答えると、ロウアが初めて部員達に声を上げた。
"そうですよ、アマミル先輩。キホさんが助けてくれたのです。帰れるとは思っていませんでしたよ。あはは…。"
"まさか、あんな島にいるとは私も思わなかったですよ。"
エメがキホになりつつそう答えると、アマミルは口に手を当てて顔をうなだれた。
「あっ!あ~っ!あ~~っ!」
"ど、どうしたんですか、イツキナ先輩?"
「カミィがアマミルの名前を呼ぶもんだから泣いちゃったじゃないか~。」
"なななっ?!どうして、どうしてですか?!"
「君に声をかけられて嬉しかったからに…きま…ぶふぶぶ…」
イツキナがそう言いかけるとアマミルは彼女の口を塞いで、顔を上げた。
「バ、バカねっ!!泣くわけ無いでしょっ!」
「…そ~んな真っ赤な目でそう言われてもなぁ…。」
イツキナはアマミルの目を見て呆れてそう言うと、回りの部員達も苦笑してアマミルは顔を赤らめた。
「あ、あ、あの…、カ、カミ…。あの…その…。わ、私…、えっと…、にゃ、わ、わたし…あなたに…」
アマミルとイツキナがロウアと話しているのを聞いて、シアムは黙っていられず、モジモジしながら声を出した。
"シアム、元気そうだね。良かった。待ってて。すぐに行くから。"
「は、はい、にゃっ!はい、にゃっ!待ってるっ!!待ってる~~~っ!にゃっ!にゃっ!」
ロウアがそんなシアムを察して声をかけると、彼女は目を輝かせてホスヰに負けないぐらいピョンピョンと跳ね出した。
「シアム君、幸せそうだなぁ~。私も嬉しいぞ、うんうんっ!」
「で、出た、社長さんっ!」
シアムがそう言うと、アルは右肘でシアムを突っついた。
「このこのぉ~っ!」
「にゃんっ!にゃんっ!」
シアムは幸せそうにそれを受けた。
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「私も気になるでっすっ!カミお兄ちゃん、どこにいたのですか?」
ホスヰがアマミルと同様にロウアの居た場所について聞いた。
"ホスヰも元気そうで良かった。"
「あうんっ!」
"ここからはみんなの顔が見えなくて、声しか聞こえないんだ…。キホさんは映像も見えるみたいだけど。"
"私は映像を映す機能が無いの。私を通して音声だけ聞いてもらっているのよ。"
"マフメノやツクも居るのかい?"
「居まっすっ!ツクです。お元気そうで嬉しいですっ!」
「マフメノだよ、居るよ。また、ロネントを作ろうよっ!」
"あぁ、良かった。みんな無事なんだね。あれ、マフメノの声が変わったような気がする…。まあ、それは良いか。えっとね、僕は、しばらく巨人族の島に居たんだよ。"
巨人族の島に居たと聞いた部員達は驚きの声を上げた。
「にゃっ?!そんなところに…。」
「やだやだ~、んなところに居たのか~。分かるわけ無いわ~。」
「メメルトと師匠が、戦艦の残骸がそっちに向かっていったって…。」
「そうね…、戦艦は燃えながら落ちていったと言ってたのよね…。よく生きていられたわ…。」
"はい。燃えさかる戦艦の一部で何とか生き延びて、あの島でアトランティスの子ども達と一緒に生活していました。しばらくして…"
ロウアは自分の身に起こったことを説明し始めた。




