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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
カフテネ・ミル
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初めてのお買い物…

 ロウアとアルはシアムの家の前にいた。


(あいつらがロネントなら温度センサーとかですでに察知しているはず。どうするよ)


 魂のロウアはこれからどうするのか、ロウアに確認した。


(どうするもこうするも、ここまで来たら正面突破っ!)


(はぁ、お前って時々、大胆だよな)


 打ち合わせにもなってない心の会話を止めると、ロウアはアルに依頼内容を伝えた。


「アル、チャイムを鳴らしてっ!」


「うん、分かった。というか、呼び捨てにしないでよっ!」


「……わ、分かったから……」


 この時代でも家の扉の前にはチャイムと訪問者の顔が分かるカメラがあり、訪問者の顔は家の中で分かるようになっていた。そのチャイムをアルが鳴らすと、シアムが応答した。


"アルちゃん!おはよ~っ!"


「シ、シアム、お、おはよう……」


 いつも通りのシアムが元気に挨拶してきたので、アルは本当にシアムかどうか判断できず戸惑っていて、口調が堅くなってしまっていた。


(あぁ、ダメだ。アルのやつ緊張しているぜ)


「ちょっと、話がしたくて……。は、入っていい?」


"うん、だけど、ロウア君がいるよね"


「う、うん、い、いるけど……」


 ロウアはカメラに映らないように離れていたが、シアムは彼の居ることを鋭く指摘してきた。何故分かったのかアルには理解出来ずにいたが、嘘をつくほどに口も回らず、そのまま答えてしまった。ロウアと魂のロウアは頭を抱えた。


"アルちゃん、なんか怪しいよ?"


「あ、怪しくなんてないよぉ~……。い、一緒に話をしようと、お、思って……。ロ、ロウアも反省しているって」


"駄目……、アルちゃん、嘘ついてる……"


シアムは、アルを疑いだして雰囲気が悪くなっていった。


「(ロ、ロウ……じゃない、イケガミィ……、ちょっと何とかしてよ……!)」


 アルは困った顔で横目で隠れているロウアに小声で話しかけた。


(お、おい、どうするんだよっ!)


 魂のロウアもどうしようも無くなったと思い、ロウアを問い詰める。


「アル、そのまま話していてっ!(作戦変更っ!)」


「ちょ、ちょっとっ!やだやだやだ~……」


"どうしたの?"


「あ、あ~……、きょ、今日はなんか天気良いなぁって……えへ、えへへへ……」


 アルは自分でも何を言っているのか分からなかったが適当な会話を続けた。そして、そのすきにロウアは家の裏庭に回ると、そこにあった扉のドアノブに向かって、空にナーカルの文字を切りコトダマを発した。


<<破壊のコトダマ ワ・カサ・ヤ!>>


 するとドアノブは破壊されて、ドアが開いた。


(なっ、なんだそれっ!また、イケガミ魔法か)


 魂のロウアは、酷く驚いていた。


(まぁ、良いから。中に入るよっ!)


(まぁ、良いかってお前……。あ~なんつ~か……、この際、その魔法は置いとくとして、こりゃ、盗人まがいだな……。

……もう知らんっ!)


 頭を抱える魂のロウアだったが、開き直るしか無かった。ロウアは、扉を開けて中に入った。


「うっ……」


 裏庭の扉から中に入ると暗闇に包まれたキッチンがあった。ロウアは、その異常な光景と酷い匂いに息を詰まらせた。食卓の上には数日経ったかと思われる食事がそのままの状態で残されていて腐っていたからだった。


(お、おい……。もしかして、俺が見に来たときのまんまなんじゃないか……?)


 魂のロウアがシアムの家を覗きに来たときは、家族団らんで朝食を取っていた。その食事がそのまま数日経過して腐食していた。


 ロウアが食卓近くのドアホンを見ると、誰も出ていない事が分かった。


(ドアホンに誰もいないぜ……?おい、さっき話していたシアムは誰なんだよ……)


 魂のロウアが話していると、小さな女の子がキッチンの奥から歩いてくるのが分かった。


(だ、誰だこいつ……)


 暗いキッチンに外からの光が差し込めていて、その光に当たるように5,6歳の小さな女の子が両手を上げて紙を差し出していた。


「えっと……。おおお、お買い物は、これ、これ、これ……ででで……です」


「お、お買い物……?」


「お……お、お、おかい……も……の……」


 その口調は、子供の口調にしてもたどたどしく、手も少し震えていて、ロウア達は不気味さを感じた。そして、魂のロウアはその少女の正体が分かり、声が震えた。


(おい、こいつ……シアム……だ……。だけど、何でこんなに小さいんだよ……)


 まともに話せないその少女は幼いシアムだった。それは幼い頃によく遊んだ魂のロウアしか分からなかった。


「はは、は、初めて、おかい……もの……」


「そうか、初めてのお買い物なんだね」


ロウアは、何も書いていない紙を掴んでそう答えた。


「うん……」


(ど、どういうことだよ……)


「良い子だ。偉いね」


 ロウアは幼いシアムの頭を撫でてあげた。魂のロウアは、その仕草を見て呆れてしまった。


(お、お前、冷静だな……)


「うん……。わた……し……、いい子な……の……」


 やがて、その少女は、そう言うと手足がもげて倒れてしまった。


(うわ~~~っ!)


「お……かい……もの……」


 それでも幼いシアムは話し続けていたのだが、ロウアは奥を目指して歩いた。


(お、おい、シアムは良いのかよ……)


「その子はシアムでは無いよ……」


(じゃあ、何だって言うんだ……)


「多分、試作機……」


(試作機だって……?)


 ロウアは階段下にある地下の入り口を目指し、すると廊下を飛び出した途端、何かが彼の足を掴んだ。


「!!!」


ワ 我は

カ 流れたる神の光を

サ 身に受けて

ヤ とき放つ!

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2022/10/16 文体の訂正、文章の校正



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