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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
カフテネ・ミル
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お尻の怪我

 ムー文明の学校と企業の週末(や曜日、わ曜日)は、休日になっていた。

 ロウアは、謹慎処分を食らって初めての週末を迎えた。週末の一日目は、我々の感覚では土曜日に当たる日に腕を治療するため病院に行くことになっていた。


 アルは、約束通りロウアの家に来てくれて、二人で病院に行くと説明してくれた。母親はアルを心配して、嫌がったが二人で話したいこともあるからとお願いし、何とか納得が出来た。


「ロウア、変なことするんじゃないよっ!」


 それでもロウアの母親はシアムの件があったため、もう一人の幼馴染みのアルにも同じような悪さをしないか心配していた。


「う、うん、大丈夫、何もしないよ……、というかシアムにも何もしていないんだけど……」


「はぁ~、お前はこの頃どうしたというんだろう……。

授業を途中で抜けてしまったり、しまいには、あんなことをするなんて……」


 ロウアの信頼は、学校をさぼった件とシアムへの暴行未遂のせいでガタ落ちだった。


「おばさん、大丈夫よ。今日は私がみっちり説教するんだからっ!」


 アルは、今日は私が監視する、といった体たらくだった。


「あははっ、そうかい?お願いね……」


「はぁ~……」


 ロウアは、自分が自分の立場が最底辺に落ちたような気がしてため息しか出なかった。


「よし、行ってきますね。おばさんっ!」


「はい、いってらっしゃい」


「い、いってきます……」


 ロウアは落ち込んだ声で挨拶をすると、アルと一緒に出かけていった。


-----


 二人はロウアの家を出るとすぐに隣のシアムの家に向かった。


「やだやだやだっ!おばさんを騙しているみたいっ!本当に大丈夫なんでしょうね、ロウ……」


 アルは、ロウアと呼ぼうとして躊躇した。ロウアはそれを悟ると今日の目的を再確認した。


「うん、大丈夫。シアムが心配だ」


「だけど、あなたは……イケガミだっけ?一体、何者なのよ……、見た目はロウアその者なのに……」


「全部終わったら話すよ。今日はありがとうね」


「う、うん。何だかなぁ。ロウアは……もしかして……」


アルは確認したくはなかったが、どうしても聞かざるを得なかった。


「ロウアは死んじゃったの……?」


「……残念だけど……、そう……」


「……」


 ロウアは騙すことも出来ず、残酷な事実を伝えるしかなかった。アルは悲しみをその正体の分からない人間に隠すように下を向いた。


「"アル、俺は死んだけど、こいつのそばにいるぜ" だって」


 だが、ロウアは、隣人の声をアルに伝える事が出来た。


「……な、なによそれっ!」


 うつむいていたアルは顔を上げて、ふざけているのかとロウアに対して怒った。


「僕のそばにいるロウア君がそう言っている」


「……そんなこと言っても信じられないっ!」


 当然、アルは信じようとしなかった。


「え……、そんなこと言うの……?う~ん。こんな時に……」


 ロウアは魂のロウアの言葉を伝えようとしたが、その内容に躊躇した。


「な、なによっ!!」


「え、え~っと、

"お前たちと子どもの頃、公園で遊んだときに階段から落ちたが、お、おしりに怪我をしただろ?あの傷は残っているか"

だって……」


「やだやだやだ~っ!何を言うかと思ったらっ!」


 アルは顔を真っ赤にして更に酷く怒った。


「ち、ちがう、霊体となったロウアが話している……。僕はその話を知らない……」


「あ、あなたは記憶がないんじゃなくて……」


「僕は未来から来たからこのロウア君の昔のことが分からない……」


 幼馴染み同士でしか分からない事実を突きつけられたアルは、様々事実を認めざるを得ないと感じ始めていた。


「やだやだやだ……。

ロウア……、ロウアァァ……、本当に死んじゃったのね……」


「……」


 そして、アルは元気を無くして落ち込んだ。


「"大丈夫だって、俺はここにいるからさ" だって」


「うん……。グスッ……」


「"今はこいつとシアムを助けてやってくれ" って」


「うん、分かった……」


「イケガミ……さん……だっけ?シアムを助けてください……。

……というか、本当なんでしょうねっ!」


「元気になったねっ!」


「バカッ!シアムは居るの?」


「……うん、居るよ……。この家の何処かに……」


 ロウアは、シアムのオーラを感じて、彼女が少なくとも生きていることが分かって少し安心していた。


「だけど、かなり弱っている……」


「えっ……」


 だが、かすかなオーラしか感じられず、彼女の安否が心配された。


(ふん、ありがとよ。伝えてくれて)


(う、うん、しかしお尻の話はどうなんだよ……)


(お陰で信じてくれただろっ?)


(そうだけどさ……。それより、シアムがいる場所が分かったよ)


(んで分かるんだよ……。お前の不思議能力のせいか?すげーな、ナーカル神官様)


(何だよそれ……。そ、それより、シアムのオーラがかなり弱い……。体力が無くなりかけているのかも……)


(……後で詳しく話すけど、偽物シアムがロネントだったのって少し思い当たる事がある……)


(そうなの?)


(ああ、話そびれていたがな。ただ関係しているかどうか……)


 魂のロウアは何かを話そうとしていたが、時間も無いため、すぐに取りかかることにした。


2022/10/16 文体の訂正、文章の校正


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