喫茶店談話その1
シアム達は自分達の両親の安否や学校の様子を確認するために自宅に戻ろうとして神殿の一階に着いた時、自分達の担任教師、キルクモに出会った。
ムーの国民達は、ケセロというロネントの悪行によってロウアの記憶を消されていたが、キルクモがロウアのことを口にしたため、シアム達は驚きつつ、神殿近くの喫茶店に移動した。
その場でロウアの現状とロネントの犯行であることをアル達から聞かされたキルクモは、自分の記憶が定かであることに安心しつつ、彼が亡くなってしまったことについて驚愕の声を上げた。
「えっ!ロウア君は、アトランティス国で戦艦と共に死んでしまったというのかい…?…なんてことだ…。」
「…は、はい、う、うぅぅ…。うぅぅ…。」
ロウアの話をしながら、再び悲しみに包まれていくシアムを見てアル達は心を痛めた。
「シアムゥ…、泣かないでぇ…。」
「…シアムさん…。」
「シアムしゃまぁ~、き、きっと、イケガミ先輩ならコトダマで何とか生きていますよ~。」
「う、うん、ツクちゃん、そうだね…。みんなもありがとうね…。グスッ…、グスッ…。」
シアムの涙を見てキルクモも悪いことをしてしまったと思った。
「シアム君…すまなかった。辛いことを思い出させてしまったね…。」
「いいえ…。こちらこそごめんなさい、先生…。カミの事を思うと…つい…。グスッ…。」
「しかし、アトランティス国でムーの国民を束縛するなど…、国際問題じゃないか…。
今はクーデターでそれどころでは無いかもしれないが、しかるタイミングで訴えるべきだろう…。」
「…は、はい。ありがとうございます。十二使徒部の方達もご存じですので…。」
シアムは涙を拭きながらそう答えた。
「なるほど分かったよ。
しかし、君たち(アルとシアム)はクーデター組織と一緒に行動したとか…何て危険なことをしたんだ。戻った時に私たちに相談して欲しかった…。」
「ご、ごめんなさい、先生…。あの時は色々あって…。急がないとカミが殺されてしまいそうだったのです…。」
シアムはロネントに恐れながら過ごしたことを思い出しながらそう言った。
「そうだろうが…。」
「せ、先生、あの時はみんな洗脳されているみたいで怖かったんです…。ロネントがいつ襲ってくるか分からなかったですし…。」
アルがシアムをフォローするようにそう言ったが、キルクモは子ども達を危険に合わせたことに責任を感じていた。
「だが、彼らは武器を所持していたのだろう?」
「は、はい…、で、ですが、みんなカミを助けるために協力してくれました。」
「協力…?
その見返りがあの歌だったのかい?」
カフテネ・ミルがアトランティス国で公演しているとニュースが流れてキルクモは仰天したが、その後すぐクーデターが起こったとニュースが流れたため、ムーではすぐにカフテネ・ミルがクーデターの首謀者という噂も流れたのだった。
「…あ、あれは、セウスさん達が勝手にやったんですよ~っ!ねぇ、シアム?」
「た、確かにセウスさん達に利用されてしまったのかもしれませんが…。」
「意図せず、ああなったということか…。
ふぅ~、君たちがクーデター首謀者じゃなくて良かったよ。」
「ですよ~。」
「そんな噂が…。にゃにゃにゃ…。」
シアムとアルを見てキルクモは安心しつつ、彼には彼女達の幼馴染みのロウアが何処かで生きているように思えてならなかった。そして、何処かでこれら事件に関わっていると思えてならなかった。
(ロウア君、君は何処かで生きているのでは…?そんな気がしてならない…。)
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キルクモの直感は半分は当たって半分は外れていた。ロウアは、ムーから遙か離れた文明の遅れた島で子ども達と巨人族と一緒に授業をしていた。
「クシュン…。」
「先生…、風邪ですか?」
授業中に唐突にクシャミをしたロウアをヒムは心配した。
「あぁ、いや…。大丈夫だよ。昨日寒かったからかな…。ジュルッ。」
「授業中なのにぃっ!」
「また、裸で寝ていたでしょ~っ!」
「この前はベッドから落っこちてたよ~っ!」
子ども達は先生に総出でツッコミを入れた。
「き、君たち、よく知ってるね…。」
ロウアは、自分のだらしないところを知っている子ども達に恐れをなした。




