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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
第三の大陸
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文字を覚える

ロウアは、盲目の子ども達には、文字を覚えさせなければならないと思っていた。


(彼らも文字を覚えておかないと何かと困るだろうしなぁ。)


そこで、現代社会では一般的な「点字」を教えることにした。

無論、この時代に点字なんてものは存在しないため、ロウアは独自の点字を作ることにした。


(高校の図書室に点字の本があったなぁ…。読んでおけば良かった…。)


ロウアは自分が池上だった頃、学校で見つけた点字の学習本に目を通さなかったことを後悔していた。


(2×6で作られていたのは覚えているから。それをヒントに…。そうだ、数字も分かるようにしよう。)


ロウアは、2×6のマス目を土の上に書くと、アトランティス語の26文字と数字を点の組み合わせで何とか作ることに成功した。


(独自な文字だけど、良いだろう。)


翌日、ロウアは、盲学校が始めると、点字について説明を始めた。


「…えっ?!点で出来た文字?」


ディープは、ロウアが聞いたことも無い文字を教えると言ったので驚いて聞き返した。


「そうだよ、ディープ。文字を覚えたいだろ?」


「ま、まぁ、そうだけど…。

でもさ~、先生、俺達だってアトランティス語は、覚えているよ?」


「だけど、読むことは難しいだろ?」


「う~ん、そうだけどさ~。だけど、点が出っ張っている文字って…。先生、そんな文字は見たこと無いよ。」


「そうなんだ。だから僕が作ったんだよ。」


「はぁ~、作ったって言うけど…。

だけど、そんなの使うかなぁ…。」


ディープがそう言うと、彼のペアであるティスが酷く憤慨した顔になった。


「ぁ…ぅ…ぉ…!!」


「"そんなのって酷い!先生が作ってくれたのに!"だって…、ま、まぁ、そうだけど。

そ、そんなに怒るなよぉ…。」


ロウアには、ティスがディープに両手でポンポンと叩いているのが、嬉しく思え、可愛らしくも見えた。


「"きっと将来役に立つから覚えた方が良いに決まってる!"っだって?そうかなぁ…。

アトランティスには、そんなの無いしさぁ…。」


ディープがブツクサと続けるので、ティスは更に彼を強く叩き始めた。


「わ、分かったって~。まぁ、先生が作ってくれたし…、覚えるって~…。

イタタ…、もう叩くなってば…。全く、頑固なんだから…。」


ディープが音を上げるのを見ると、


「ぅ…ぅ…ぇ…。」


ティスはロウアに向かってに何かを言った。


「ティス、ご、ごめんね。これを使ってみて。」


ロウアは、言葉が聞き取れないので、申し訳なさそうにタブレットを指差した。

すると、ティスはタブレットに言いたいことを書いた。


┌───────────────────┐

│先生、点字は、どこに書くのですか?  │

│このたぶれっとには、点字が書けないと │

│思います               │

└───────────────────┘


「おぉ、ティス君は良いことを聞いた。」


ロウアにそう言われてティスは嬉しかったのか顔を赤らめて下を向いてモジモジとした。ロウアはそれを見てニコリとすると話を続けた。


「それなんだけどね。家の壁を使おうと思っているんだ。」


「壁?」

「えぇ、あの堅い壁ぇ?」


ディープとマウは驚いたようにロウアに聞き返した。


「そうだよ、壁に使っている鉄板にね。外側の壁は使えないけど、内側の壁は薄いものを使っているだろ?

そこに点字を書いていこうと思っているんだ。」


「家の中にぃ?!」


「あはは、ごめん、ごめん。家の中にも書くけど、壁を取り除いてそこに書くんだよ。」


「か、壁ねぇ。」


ディープが感心していると、ティスも祈るように手を組んで喜んでいた。


「そうそう。

試してみたけど、何とか使えると分かったからね。」


ロウアが試したところ、先の尖ったもので叩くと簡単に凹凸を作れた。奴隷艦は破損しているとはいえ、鉄板はまだ大量にあったため、不足することは無いように思われた。


「確かに、これ(タブレット)には書けないもんな。先生の話すのを保存するだけにしか使えないしなぁ~。それも聞くためにはティスにお願いしないとだし。」


ディープは、タブレットをぷらぷらさせながらそう言った。


またティスがディープに怒る仕草をした。


「ぁ!!ぅ…ぉ…!!」


「え、えぇ?

"先生にもらった物を大事にしろ"、だって?わ、分かったって~。お前は先生大好きだなぁ…。」


ディープが呆れていると、マウは彼をからかい始めた。


「へへ~、ディープゥ~、ティスが先生の肩を持つから嫉妬しているんだろ~?」


からかわれたディープは、顔を赤らめてマウに憤慨した。


「マウッ!て、てめぇっ!ば、バカなこと言っているんじゃねぇっ!」


そして、彼はパチッと指を鳴らしてマウの位置を探した。逆にマウの方も同じように指を鳴らしたので、反響が相殺されたのか彼はマウを探せないでようだった。


「マウ、どこだ~っ!」


「へへっ!こっちだよ~っ!」


二人はパチパチと指を鳴らし合いながら逃げ回るのだった。


ロウアは、そんな二人を見て感心してしまった。


「ふ、不思議な喧嘩だなぁ…。

…じゃ、じゃなくて、止め止めっ!喧嘩止め~~。」


慌てたロウアは二人を何とか抑えると、


「さ、今日から始めるよ。座って、座って。」


と言って盲目の生徒三人とペアの三人を座らせて、教育用に予め作っておいた点字の鉄板を配った。


「まずは、この文字が…」


こうして盲目の三人の生徒達は、点字を覚えることになった。


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