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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
第三の大陸
429/573

開校準備中

予定通り、ロウアの勉強は翌日から開催する事にした。

ロウアは午前中に何を話そうかと、まとめていてついでに勉強で使えるような道具も探していた。

その時、戦艦の中に、恐らく大きな会議で使ったと思われる部屋に、電子的なホワイトボードが残っているのを思い出した。


「あぁ、これがあった。今まで使い道なんてないと思っていたけど。

この部屋もそこそこ大きくて良いなぁ。

ただ、少し暑いかも…むむむ…。」


風通しの悪い戦艦では致し方ないとは思ったが、適切な部屋はここぐらいと思われた。

ロウアが部屋を片付けていると、ンミルトの遊び相手だった幼年の子達が数名現れた。


「ん?どうしたの?何か用事かい?」


ロウアが尋ねると、


「んとね、ンミルトも参加したいって。」


ピーエスがそう答えた。


「参加?何に?ん?まさか、勉強会に?」


「そう。」


「なんと…。」


ロウアは、それを聞いて驚いてしまった。


「で、でも、僕は彼女の言葉が分からないよ…。」


ロウアは、巨人族の言葉分からないため、難しいと思ったのだが、


「それは大丈夫っ!」

「僕たちが翻訳する~。」

「うん、頑張るっ!」


と子ども達が答えたため、そのたくましさに感心してしまった。


「そうかっ!ありがとうね。」


ロウアがそう言うと、子ども達はわ~と換気しながら立ち去っていった。


「…あ、あれっ!この部屋は使えないってことか…。」


ンミルトはとてもじゃないか戦艦の中には入れないので、使う前にこの部屋は使えなくなってしまった。


ロウアが何かを教えてるに当たって困ることは他にもあった。

障害を持った子どもの中には、目や耳が聞こえない子も居たからだった。

彼らにどうやって教えるのか、ロウアは頭を悩ませたが、その子達には個別に教えることで対応しようと考えた。


聴覚を失った子どもには、ホワイトボードで記述した内容を理解してもらえると思ったのだが、それでもロウアは限界を感じていた。


(手話を覚えておくべきだったなぁ…。)


ロウアは、池上として生きていた時代、そういった部活があったことを思い出した。その部で少しでも勉強しておけば役に立ったと思った。

ただ、それについては、ロウアは一つ案があった。


(あぁ、そうか…。一つ手を思いついた…。)


視覚を失った子どもは、正確に言葉を理解していない場合もあり、通常の勉強は難しいと思われ、世界を理解出来るように色々な単語を理解出来るように指導していくことにした。

いずれにしても、視覚が不自由な子は常に誰かが付き添っている状態が続いていた。ロウアはそれでは自立が難しいと思っていた。


(彼らが自立できる方法も考えないと…。)


-----


子ども達は全部で15名、それぞれが苦労して生きていた。ロウアは、始めは彼らが自分達が待ち受けている臓器提供という運命を受け入れていた事が、信じがたがった。だが、ロウアは、そんな彼らでもこれからは希望を持って生きていけるようにすることに自分の使命があると思えた。だが、自分が行うことの困難さも理解していた。


「…大丈夫かなぁ…。自分の出来るのだろうか…。」


ロウアが弱気になった時、心の奥で声が聞こえてくるような気がした。


(バカねっ!!みんなあなたを頼りにしているのよっ!リーダーとしてしっかりとしなさいっ!)


アマミルの声が…


(あははっ!な~んだよ、君らしくないな~。私を少しは見習ったらどうだよ~。な~んてね。テヘッ!)


イツキナの声が…


(カミィ~、やだやだやだ~っ!しっかりしろよ~。かっこ悪いぞっ!)


アルの声が…


(イケガミ先輩ならきっと出来まっすっ!)


ツクの声が…


(イケガミィ~、い、今、女の子達に囲まれているだ…、グヘヘ…。)


マフメノの声が…


(あうんっ!そうでっす。イケガミお兄ちゃんなら大丈夫でっす。)


ホスヰの声が…


(私、カミなら出来るって信じている。ラ・ムー様も応援している、にゃっ!君のことが大好き、にゃ…。)


シアムの声が…


部員の声はロウアを後押ししていた。


「そうだね。みんな…。そうだった、僕は霊界お助けロネント部の部員だった。

お助けするのが使命だった。みんなに堂々と会えるように頑張るさっ!

…あ、あれ…、マフメノだけなんか変なこと言っていたような気がする…。」


ロウアが外を見ると子ども達が大騒ぎで広場を駆け回っていた。


「彼らのために出来ることを僕はやるだけだっ!ラ・ムー様、ご助力下さい。」


そして、自然と両手を合わせてラ・ムーに祈っていた。そして、手をぐっとすると、ホワイトボードを持って外に出ていった。


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