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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
第三の大陸
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忘れていた場所

巨人の少女は、その後も甲斐甲斐しくロウアの世話をしてくれていたのだが、


グゥ~~…。


と急にお腹が鳴り始めた。


「で、でかい音っ!」


ハーディは、その音でそう叫んだのだが、


グゥ~…。


と自分の腹も鳴ってしまった。


「あははっ!お前も鳴ってるじゃないかよっ!」


エンザは大笑いしたのだが、


グゥ~~…。


と自分も鳴り、他の子ども達も、


グゥ~~…。

グゥ~~…。


次々と腹が鳴り始めたため、互いに顔を合わせて笑ってしまった。


「アハハッ!」

「お前のお腹の音、すごかったぞっ!」

「お前の方がすごかったって~っ!」

「フフフッ!」


すると、巨人族の少女は、またぐぅっと縮むと身体を伸ばして何かを叫んだ。


「お、おいっ!まただぞっ!」

「また、なにかするんじゃないのか?」

「服を脱ぐのかな…。」


子ども達は、巨人族特有の動きだと思っていて、これをやった後は何かするのでドキドキしていた。

すると巨人族の少女は、また外にかけるように出て行った。


「カリナちゃん、ま、また何処かに行っちゃったね…。」


「…今度は何処に行ったんだろう…。」


子ども達が疑問に思ってしばらくしていると、巨人族の少女が手にいっぱいに果物や木の実を持って戻って来た。


「あっ!木の実だっ!カリナちゃんっ!」


「果物もあるよっ!」


そして、子ども達の前にバラッと広げると食べろとジェスチャーで示した。

子ども達は、巨人族の少女からのプレゼントに一様に喜んだ。


「やった~~っ!」

「美味しそう~~っ!」

「食べよう、食べよう!!」」

「し、しかし、で、でかい…。」

「そうだな、これならお腹がいっぱいになるっ!」


巨人族の少女も一緒になってそれらを食べ始めるとお互いに笑顔になって、ほんわかとした雰囲気に包まれた。


お腹が膨れた後は、巨人族の少女はロウアの乾いた服を持ってきて自分もロウアに着せていた服を着たので男の子達も安心した。


「や、やっと服を着てくれた…。」

「う、うん…。」

「お前さっき、じっと見つめてただろ?」

「み、み、み、見るかよっ!!」


巨人族と彼らは、体格が大きく違うとはいっても互いに人間であり違いはほとんど無かった。

それに、互いに幼い子どもであった。

自然と遊び相手が増えたのだと理解し合うと一緒に外に出て走り回ったり、川で水を掛け合ったりした。


子ども達が遊びに夢中になっていれば時間が経つのはあっという間だった。

日はいつの間にか落ちて夕方になっていて、子ども達は掘っ立て小屋に戻った。


ロウアは未だ寝たままで起きる気配が無かった。


「ロウアお兄ちゃん…。」


ヒムがロウアのところで苦しそうにしているロウアのところに行ってそういったときだった。

すっかり真っ暗になった外から一つの明かりが近づいて来た。


この光を見た巨人族の少女は、飛び上がると大喜びで外に出て行った。


「誰か来たのかな…。」

「そうかもしれない…。」


子ども達が不安に思っていると、顔を真っ赤にしてワンワンと泣いている巨人族の少女が戻ってきた。


「あっ!巨人の子が泣いちゃってるぅ…。か、可哀想だよ…。」


「どうしたのだろうね。」


ヒムとカリナがそんなことを話していると、彼女の後ろに大人の巨人族が居たので子ども達は大騒ぎになった。

子どもの巨人でも大きいと思っていたのに三倍はあろうかという大きさだった。


「キャ~~っ!」

「お、大人の巨人っ!!」

「で、でかい~~~っ!」

「こ、今度こそ、俺達をっ!!」

「や、やばい、逃げろっ!」

「ヒィ~~。」


互いに抱き合ったりしながら子ども達は恐れていたのだが、二人は、子ども達をじっと見つめて何か話しているだけで何もしてこなかった。そして、明らかに困っているような表情になった。


「な、何もしてこない…。そうか、あの子のお父さんとお母さんなんだ…。」


ヒムがそう言うと子ども達は、あの子の親だと思うと安心した。


「そ、そうなのか。」

「それなら、大丈夫…?」

「捕まえようとしないしな。」

「そうだねっ!」


子ども達がほっとしていると、女性の巨人は、腰を下ろすと子ども達に手を差し伸べてきた。

その顔があまりに優しい顔をしていて、じっとこちらを見つめていた。


「あ…。」


ヒムは、その顔が自分の母親に似ていると思うと自然と前に出てしまった。


「お、おいっ!ヒムッ!やばいってっ!」


ハーディは、静止しようとしたのだが、ヒムは巨人の女性の指をギュッと握った。


「あ、暖かい…。」


ヒムがそう言うと、巨人の女性は彼女の頭を優しく撫でた。

その手があまりにも優しかったのでヒムは自然と笑顔になった。


「…お母さん…。」


そして、自分の母親を思い出してしまい、自然と涙が流れていた。


「ヒムちゃん…。」


女性の巨人は、その涙を見ると同情の表情となり、自分の足下に彼女を導き、包み込むように彼女を抱きしめてあげた。


過酷な扱いを受けた彼らには、親の愛が不足していた。

大人からは罵声を浴び、時には殴られることもあった。

十分な食事すら取れず、寒く、そして、暗い部屋で過ごした日々だった。


だから、子ども達はその姿を見るとかつて自分達を抱きしめてくれた親を思い出してしまっていた。

その思いは彼らと母親の巨人の距離を自然と縮めていた。


「お、お母さん…。」

「うっ、うぅ…。」

「うわ~~~んっ!」

「暖かい…、暖かいよぉ~。」


母親の巨人をただ抱きしめる者も居れば、涙を流す者も居て、女性の巨人はそんな子を見ると自分の膝に乗せると頭を撫でたり、顔を寄せたりと思いやりを持ってくれた。

巨人族の父親の方にも抱きつく子どもまで現れ、掘っ立て小屋は、小さな子ども達に囲まれた巨人の居る安らぎの場所に変わっていた。

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