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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
第三の大陸
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天岩戸

聖域の一室の前にアル、ツク、マフメノ、そして、ホスヰが集まっていた。

誰もが不安な顔をしていて、中にいる仲間のことを思っていた。


そこに用事を終えたアマミルがやって来た。


「みんな、シアムちゃんはどう…?」


アマミルがそう言うと、アルが


「アマミルせんぱ~い、未だ出て来ません…。」


と今にも泣きそうな声でそう言った。


「…食事は?」


「少しは取っているみたいですけど、ほとんど食べていません…。」


「あぁ…。」


アマミルは扉の前に置いてあった食事がほとんど口を付けられていないのを見てため息をついた。


「先輩、わ、わたし、どうしたらいいんでしょう…。

どうしたらシアムを助けてあげられるんでしょう…。

わたしどうしたら…、ウッ、ウッ…。」


アルは涙声でそう言った。


「私が扉を開けましょうか…。」


マフメノは鍛え上がった身体で無理矢理でも扉を破ろうとした。


「マフメノ君、気持ちは分かるけどそれは駄目よ…。

強引に扉を開けても彼女の心は閉じこもったままよ…。」


「そうですね…。」


「アル様…。私とマフメノ先輩で作ったロネントで中の様子だけでも見ますか…?」


「あう~、ツクお姉ちゃん、天使様達がシアムお姉ちゃんのおそばに居ますから、安心して下さいでっす。」


ホスヰは、すでに天使達にシアムのことを見守るようにお願いしていた。


「う、うん、分かった。女王様…。あ、ありがとうございます。」


「あうんっ!ホスヰでイイでっすっ!」


「あっ!ごめんね。ホスヰちゃん。

天使様は、何か言ってるの?」


「お布団の中でず~っと泣いているって言っています…。

心がきゅ~っとなってしまっていて、何もかもが嫌になってしまったみたいでっす。

大きな壁が周りを囲っているから近くに行けないとも言ってます。」


その話を聞くと部員達は、悲しみに包まれ、シアムの閉じこもった部屋の前で黙ってしまった。


静かになると部屋の中からは、シアムの鳴き声だけが聞こえた。


アトランティス国で救助機に助けられたシアムとアルだったが、シアムは救助機に入ると窓を叩きながら開けてくれと叫び続けた。

だが、救助機はそのままムーに直行して彼女の願いは叶わなかった。

更に悪いことに、その移動途中でロウアを乗せた奴隷艦が爆発して何処かに飛んで行ってしまったのをシアムは目撃してしまった。


シアムは、その時のショックで聖域に戻ってからは案内された自室に入った後は全く出てこなくなってしまったのだった。


「シアムゥ~~…。あの時はごめんよぉ~…、だから出て来てよぉ~…。」


アルは、部屋の前でシアムに声をかけた。

すると部屋の中からは、いつも静かなシアムとは思えないような怒声が聞こえてきた。


「アルちゃん嫌いっ!あの時どうして救助機に私を入れたのっ!!

どうしてっ!どうしてっ!!」


「う~~、だってぇ~…。」


アマミルは見かねて、


「シアムちゃん、あの時はそうするしか無かったのよ…。あの国のクーデターであなた達が死んでしまうのを避けたかったのよ…。」


と、アルをフォローするように言ったが油に火を注ぐようなものだった。


「アマミル先輩も嫌いですっ!カミをあとちょっとで助けられたのにっ!!

あんな救助機…要らなかった…。」


「あう~…」


ホスヰも女王の意識になりつつ、シアムを慰めた。


「…救助機は私たちが準備したものです…。

ごめんなさい、シアムさん。

どうかお心を静めて下さい…。」


「…あ、あとちょっとだったのですっ!!

私は命がけだったんですっ!わ、私の命なんて…。」


「シアムさん…。神に与えられた命を粗末に考えないでください…。」


「みんな嫌いっ!嫌いですっ!

うぅぅ、うゎ~~…、カミィィィィィ…、カミィィィィィ…。」


こんな調子でシアムは、アマミル達の話を聞くことすらしなくなっていた。


「…ひとまず戻りましょう…。」


アマミルはそう言わざるを得ず、部員達はシアムの部屋から離れた。


大きな客室に戻ると、


「申し訳ございません。私が要らぬ気遣いをしたのかもしれません。」


女王はそう言って部員達に謝ったのだが、これにはアマミル達は慌てた。


「そ、そんなっ!

シアムちゃんとアルちゃんが危険だったのは映像から明らかでした。

二人は女王様のお陰で助かったのですっ!」


アマミルがそう言うと、


「そうですっ!私は感謝していますっ!シアムだってきっとぉ…。」


アルも助けてもらったことを感謝しながらそう言ったのだが、


「うっうぅぅ…。うわ~~んっ!」


シアムを思って泣き出してしまった。


「アルしゃま~…。ウッ、ウッ…、シアム様もそう思っていますよぉ~…うわ~~~んっ!」


「ありがとうぅぅぅ、ツクちゃ~~ん…。うわ~~~んっ!」


ツクも泣き出してしまい、アルとツクは互いに抱き合って泣いた。


-----


アマミルは閉じこもったシアムを思うと気が重くなった。


(私が判断を間違えた…?

いいえ、あの混乱状態では軍人が彼女達に何をしたか分からない…。

だけど、カミ君を助けられたかも…?

違う、違う、戦艦は爆発してしまったじゃないっ!

あの戦艦にシアムちゃんが乗っていたとしたら命は無かった…。

…一緒に死ねたらそれも本望…?

バ、バカねっ!何を考えているのっ!)


アマミルは自問自答を繰り返していたが、答えは出ないままだった。

やがて彼女もいつの間にか眠ってしまった。


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