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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
第三の大陸
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見えない壁

この大陸は、現在のインド洋上に存在し、赤道上に横長に存在した大陸である。


後の世の人は、その大陸を「レムリア大陸」と呼ぶが、その名はキツネザル(レムール Lemur)の生態を研究していた学者が命名したものであって、当時の名前を、ムーでは、「ンヌ・ト・ソ」と呼んでいた。つまり、「巨人族の国」である。


巨人族については、この物語でも何度か触れてきた。ムー国や、アトランティス国の人々からすれば、彼らは自分達のおおよそ三倍ぐらいの大きさであったため、巨人族と呼ばれていた。


彼らの生活は狩猟が主体の生活であり、文明国であるムーやアトランティスからすれば未開の地の人類だった。

つまり、巨人族の生活は、我々が知る時代で説明するならば、縄文時代のような生活であったと言って良い。


無論、縄文時代は、ムーなどの古代文明が廃れた後の時代のことである。

今まで見てきたように、我々の知り得ない古代では、宗教と科学の共存するムー文明、そして、ムー大陸が没落した後に発達するアトランティス文明があることを忘れてはならない。

信じようが信じまいが、高度な文明は栄えては滅びてを繰り返してきた。文明が滅びた後は、後の世の人々にはそのかけらを残すのみで数千年も経過すれば、その存在を証明すべきものがなくなる。まして一万年以上前の文明の証明すべきものが残るはずも無く、ムー文明が無かったと思われるのも仕方あるまい。

だが、我々は転生輪廻を繰り返し、この地上に生まれる。確実に、その時代に居たはずである。それを忘れてはならない。

そして、極まれに魂の奥に眠るその記憶を取り戻す人々が居るが、その記憶を軽んじるべきではあるまい。


話が逸れてしまった。この話はまた何処かでしよう。


そのような低い文明の巨人族だったため、両国からは、蔑んで見られており、心ない人々は巨人族を動物の一種と考える者もいて彼らを殺すことについて何も感じない者も多く居た。


その他、巨人の国は、狩猟が主体であるためか、霊的な波動が荒く、ムー国の霊体達も入りにくい領域になっていた。

ロウアを乗せた奴隷艦の後をつけて来た短髪の女神とメメルトは、霊波動の洗いこの大陸に入ることが出来ず、見えない壁の外から戦艦がこの大陸に向かって行くのを見ているしか無かった。


「あぁ、戦艦を追えなかったよ…。不味いねぇ…。」


短髪の女神は、これ以上追うことが出来なくなってしまったことを悔しがった。


「何なんですかっ!この壁みたいなものはっ!」


メメルトは、憤慨しながら見えない壁を指差してそう言った。


彼女達には、虹色の壁が波打つように遙か上空から海の底まで続いているのが見えていた。そして、どうにもその先には進めなかった。

そのような壁だったが、戦艦は何事も無かったかのようにすり抜けて行ったのだった。


「う~ん、巨人族の大陸は、霊域の波長が荒いと聞いていたけど、本当だったみたいだね…。」


「波長が荒いと私たちは入れないんですかぁ…?」


メメルトは納得がいかないのか、短髪の女神にそう聞いた。


「まあ、私たちは波長が精妙だからね。文明が低すぎる地上の周りは霊的な波長が荒くなってしまうんだ。」


「でもあれだけ地獄みたいな、蜘蛛世界のアトランティス国には入れたじゃありませんか~っ!」


「だけど、あそこには長くは居れなかっただろ?」


「う~、確かに気持ち悪かったです…。煙たいというか、粘り着くような感じがイヤでした。」


「地獄世界に近かったからね。だからすぐに帰っただろ?」


「う~、そうでした…。」


メメルト達はロウアの様子を見に行ったあとすぐにムー国に戻ったのを思い出した。


「女王様の側近の霊達は、私たちよりももっと精妙だから、アトランティス国には入ることが出来ない。

この壁の先みたいにね。」


「う~ん。だから私たちがイケガミ様の様子を見に行ったんでしたぁ…。」


「思い出したかい?

しかし、ここには私たちですら入ることが出来ない。文明的なものが何一つ無い証拠さ。

人間として生まれて肉体を持たない限りこの先は行けないよ。」


「そんなぁ~。

だ、だけど、これってゴムみたいなんですけど…。行けそうじゃありません?」


「やってみな。」


「よ~しっ!

え~いっ!」


メメルトは勢いを付けて壁を突き破るように入ろうとしたが、彼女の身体は壁の反動で大きく戻されてしまった。


「う、うわ~っ!は、入れませんっ!師匠…。」


「だから、私たちと波長が合わないんだよ。」


「ど、どうしましょうぅ…。イケガミさんが~…。

と言うか、このままだと池上さんが生きているかどうかも分からないですよぉぉ…。」


「……。」


短髪の女神は、メメルトの質問に答えることが出来なかった。

ここまで奴隷艦を追ってきたまでは良かったが、ロウアの生存確認まで出来なかったからだった。


「…取りあえず、ムーに戻ろう…。女王様に相談してみるしか無い。」


「はい、分かりましたぁ…。

う~、イケガミ様…。無事でいて下さいね…。」


二人の霊は、小さくなっていく戦艦の後ろを見つめ、その行方を不安な気持ちで見送った。


ン 大きく

ヌ なっている

ト 人

ソ 国

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