カフテネ・ミル
魂のロウアとアカシックレコードについて話をしていると母親がテレビをつけた。
この時代のテレビは立体映像になっている。リビングには、テレビ用の机があり、その上に映像が立体化されて表示される。番組はツナクを通して放送され、チャンネルは無制限と思えるほどあった。
ロウアは、これらの番組は、21世紀の動画共有サービスが立体映像化したものに似ていると思った。
要するに誰でもチャンネルを作ることが出来て誰でも配信できるのだ。人気のある番組は視聴率も上がる。学校でも話題になる番組もあったので、調べて視聴することもあった。
「あぁ、そうだ。見てほしいって言われていたんだっけ」
母親がそう言うと、空中に表示された無数の番組から何かの番組を探し始めた。
「あった、あった」
映像には、大きな文字で「カフテネミル」と表示されて、程なく二人のアイドルが透き通るような綺麗な声で歌い始めた。
(母さんはアイドル好きなのかな……。でも女の子だしなぁ……)
ライブ会場には、何千人もの人達が彼女たちを応援している。映像も観客席の上を通ったと思えば、遙か上空から映し出す。会場の立体映像も歌を盛り上げる演出となっていた。アイドルの立っている場所も空中を動き出すなど、この時代らしい演出だった。
(しかし、すごいなぁ)
(お前らの時代のテレビは平面なんだっけ?)
(そうそう。立体映像ってすごいね。
この子達に触れそうだもんね。触れないけど)
(いや、お前、こいつには触らない方がいいぜ。ん?あれ、そうか……、お前……)
魂のロウアが話している最中、ロウアは彼女たちを触ろうと手をふわふわさせている。
「あ~っ!やだやだやだ~~~っ、何触ろうとしているのよっ!!」
すると突然、アルが現れた。後ろにはシアムも居た。隣の家に住んでいる彼女らは、自分の家のように上がってくるのだった。
「何?あれ、アル?どうしたの突然……」
「は、恥ずかしいから止めて……。ロウア君……。」
後ろのシアムも何故か恥ずかしそうにしていた。
(二人とも自分の家のように上がり込んで来るから、いつもビックリなんだけど……)
(まあ、昔からそうだしな)
「こら~~っ!!!だ~か~ら~っ!ロウア、触らないでってっ!」
アルが執拗に怒ったのだが、ロウアは何が何だか分からなかった。
「ロウア君、本人達が目の前にいるんだよ……?
シアムは恥ずかしそうにそう言ったため、ロウアはその意味を理解しようとした。
「えっ?本人達……?」
ロウアは、まさかと思って映像に映っているアイドルをじっと見つめた。そして、アイドル達の顔がアップになると、その顔がここにいるアルとシアムだった。
「はあ~~~っ!?
えっ?えっ?えっ?え~~~~~っ?
やだやだやだ~~~っ!!!」
(ぷっ、お前、アルみたいになってるぞっ!)
ロウアは、この時代に来て、驚くことが多かったが、これ以上は無いぐらい驚き、腰を抜かした……。ついでに腰を抜かすってことを実感した。
「あ、あれ、もしかして話してなかったっけ?」
アルがしれってそう言った。
「う、うん。そうかも……」
シアムが、そうだったかもって顔をしながら反省しているようだった。
「やだやだやだ~、ごっめ~んっ!あはは~っ!」
ロウアは、流れているアイドル映像と目の前にいる二人に目を交互に移してつぶやいた。
「あぁ、駄目だ……。めまいがしてきた……」
ロウアはそのままガックリとしてしまった。
アルはケラケラと笑っていて、シアムはロウアに謝っていた。その横では可愛い姿となった二人が華麗に舞ながら歌を歌っていた。
カ 神の光が降り注ぎ
フ 新しく生み出された力は
テ 集まりながら
ネ 強く流れる
・
ミ 受け止めたものを
ル 世界中に広げる者
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2022/10/11 文体の訂正




