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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
舞姫は姦邪の闇に舞う
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浄化作戦、一日目の完了

正気を取り戻した神官達は、自分達が何をしていたのだろうかと頭を悩ますものが多かった。


「…ラ・サクル、私たちは何をしていたのでしょうか…。」


「あなた達は、少し休んでいたのです。」


「や、休みですか?」


「はい、子どもの頃を思い出して遊んでいただけです。」


「は、はぁ…。遊んでいた…。う~ん、確かに…。」


自分の行動を意識している者もいた。


「私たちの修行が足りないばかりに不甲斐ないです。申し訳ございません、ラ・サクル。

命令に従わざるを得なく…。」


サクルはそれらを聞いて、しかるでも無く、


「良いのです、良いのです。みなさん。

さ、本来のラ・ムー様にお仕えする仕事をお願いします。

私たちに協力して下さい。」


と言った。


「はいっ!かしこまりましたっ!」


サクルの周りに集まった神官達は本来の意識に戻り、サクル達へに協力を誓った。


-----


浄化作戦は順調に進み、夕方になることには目的の九十階まで進んだ。


「ふ~、取りあえず九十階までは完了ね。」


アマミルは、イツキナの背中を叩くとそう言った。


「ぶふぁぁ~~、つ、疲れたぁ~…。」


コトダマを連発したイツキナは疲れ切ってしまってその場に倒れ込んでしまった。


「お疲れ様。」


「だけどさ~。神殿ってこんなに人がいたんだね~。

あ、下着は白だね。」


寝っ転がったイツキナは下からの目線でアマミルにそう言った。


「そうね。私も意外だったわ。

って、何見てるのよっ!」


アマミルはスカートの裾で下着を隠しながらそう言った。


「まだ、十分の一だよ…。しかも、下に行くほど広くなるでしょ?

ゆ、憂鬱~。アマミル、慰めてぇ~。」


「気持ち悪いわね…。」


「何だよぉ~。ちょっとは褒めろよ~。そして慰めろ~。」


「バカねっ!

あなたが子どもになってどうするのよ…。

全くっ!重要な仕事をしているとは思えないわ。」


すると、小さな女の子がイツキナの頭をなでなでした。


「イツキナお姉ちゃん、お疲れ様でっすっ!」


「いや~、ありがとう。ホスヰちゃんっ!和むわ~。

って、ホスヰちゃんっ!こんなところ来たら駄目だって~っ!」


聖域にいるはずのホスヰが、現れたのでイツキナとアマミルは驚かざるを得なかった。

よく見るとツクも一緒にこの場にいた。


「女王様がどうしてもここにって…。」


どうやらホスヰにせがまれて無理やりここに来たようだった。


「あうんっ!私も部員なのでっすっ!」


「はぁ~。

今は完全にホスヰちゃんだね。」


イツキナはあぐらになるとホスヰの頭を撫でた。


「ありがとね~、ホスヰちゃんっ!」


「えへへ~。ありがとでっすっ!」


「あなた、女王様の頭を…。」


アマミルは、子どものように頭を撫でしまったイツキナを咎めるようにそう言った。


「あうんっ!良いのでっす。私も撫でられると嬉しいのでっす。」


「アマミルお姉ちゃんも、頑張ったのでなでなでしまっす。」


「あら、ありがとう。」


アマミルもホスヰの目線にかがみ込むと、小さな女王様は従者にお褒めの撫で撫でをした。


こんな調子で三人が互いに頭を撫であっていると、一人の男性が声をかけて来た。


「あ、あの~…、あなた達はもしかして、アルと同じ部活の…。」


その男性をアマミル達は知っていたので驚いてしまった。


「あっ!アルちゃんのお父さんっ!」

「こ、こんばんは。良くご無事で…。」

「こんばんは。」

「こんばんはでっす。」


部員達は顔見知りの男性に出会えて喜びつつ、挨拶をした。


「え、えぇ、私のことをよく覚えて…。」


「それはそうですよ~。一度、食事もしましたから。」

「この階でお仕事をされていたのですね。」


イツキナとアマミルは、そう言うと、やつれてしまっていたアルの父親を椅子に座らせた。

この場で子ども化した神官達は、備蓄されていた栄養価の低い食事だけで過ごしていたため、一様にやつれていて、アルの父親も例外では無かった。


「しばらくの間、何をしていたのか覚えていなくて…。一体何があったのか…。」


「悪党が皆さんを子どもにしてしまったのです。」


アマミルが説明すると、アルの父親は驚いた表情を見せた。


「えっ?!子どもに?まさか…。

…あぁ、いや、そう言ってる同僚もいました…。まさか本当だったなんて…。」


「でも、良かったでっすっ!

イツキナお姉ちゃんのコトダマのお陰でっす。」


ホスヰは、嬉しそうにピョンピョン跳ねながらそう言った。


「イツキナさんのコトダマ…?

良くは分かりませんが、あなた達に助けてもらったようですね。ありがとう。」


アルの父親は礼を言いつつ頭を下げ、


「…た、ただ、こんな時に申し訳ないのだが、うちの家族は無事でしょうか…。何か知っていますか…?」


自分の家族を心配をしてそう言った。


アマミルとイツキナは顔を見合わせると、一通り丁寧に説明した。


「えぇっ!アルは、シアムちゃんと一緒にアトランティス国にロウア君を助けに…?

そ、そんな危険なことを…。」


それを聞くとアルの父親は不安に包まれた。


「…不安でしょうがご心配なく。力強い防衛係がいますし、アトランティス国の上空で救援機が控えていますから。」


アマミルはそう言ってアルの父親を慰めた。


「そうですか…。まったく、お転婆な娘だ…。シアムちゃんまで巻き込んで。」


「ですが、今回は、シアムちゃんが最初に行くと宣言したんです。」


イツキナが補足するように説明した。


「えっ!あのおしとやかなシアムちゃんがっ?!はぁ~、それは驚きました。」


「そして、彼女を助けるためにアルちゃんが名乗りを上げたのです。とても優しくて力強いお嬢様です。」


アマミルは、勇敢に友達を助けるために立ち上がったアルについて話した。


「まぁ、そう言って頂けると…。」


「ともかく、食事をお取り下さい。今お持ちしますから。」


アマミルはそう言いつつ、ツクに合図をすると彼女は食事を取りに移動した。


「ありがとう。アマミルさん。

ホスヰちゃんもありがとうね。」


アルの父親は、そう言うとホスヰにもお礼を言った。


「あうんっ!イツキナお姉ちゃんにお礼を言って下さいっ!」


「うん、そうだね。イツキナさん、ありがとう。」


「い、いいえいいえ…。ロウア君に教えてもらった魔法でしたし…。」


アルの父親は、イツキナに礼を言うとまたホスヰの方を向いた。


「でも、ホスヰちゃん、こんな危険なところを来てはいけないよ。」


アマミルは大事なことを説明しなければと思った。


「え、え~っと…、ご、ご紹介?…が遅れました。

か、彼女は女王様になられまして、そ、その~…、今回の陣頭指揮を執っていらっしゃいます…。」


そして、何か変だなあと思いつつ説明したため、たどたどしい話し方になってしまった。


「えっ?!じょ、女王様だってっ?!陣頭指揮…?この子が…?」


「えへへっ!」


アルの父親は、事を飲み込むまでしばらく時間が掛かった。


2022/07/24 一部抜けていました(先頭箇所)、ごめんなさい;

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