合い言葉
サミトと称する男に連れられたシアム達は、街から離れた住宅街に存在する丸太でできた我々の知っているコテージのような小さな家にたどり着いた。
住宅街と言っても、舗装もされていない道でつながってはいて、田舎のような場所だった。
そんな場所なので、隣の家とはかなり離れていて小さな林が家同士を区切るように生えていた。
「さっ!着いたぞ。
少し待っていて下さいね~。」
サミトはそう言うと、その家の扉をノックして、
「( あの~、ご注文の商品をお持ちしました~。 )」
と、今度はアトランティス国の言葉で言った。
「シアムゥ、それって私たちのことかなぁ?ヒソヒソ…。」
「にゃっ?!私たちが商品ってことは…。にゅ~、それってどういう意味なんだろ…?!ヒソヒソ…。」
翻訳機の言葉を聞いていたアルとシアムは、ヒソヒソ声で別のことを話していた。
(この子達は可愛いわねぇ…。)
エメは、サミトの話した内容は、仲間同士を確認するための合い言葉だと理解していた。
(だけど、本当にこんな合い言葉でやり取りするのね…。映画だけの話かと思っていたわ。
ツナクトノの証明情報で互いを認識できるはずだけど、ツナクが政府に牛耳られているから、こんなアナログなやり方…という訳かしら。)
エメは、周りを警戒するためにヘアピンを外し、監視カメラをハッキングしようとしたが、何故か周辺にはカメラが浮かんでいなかった。それに必ずと言って良いほど存在するツナクのネットワーク網が、家の中を含め、周辺には存在しなかった。
(家の中にも電子機器が無いみたい。監視カメラのもないし不思議な空間…。ネットワーク網に空いた穴みたいな場所…。)
そんなことを考えていると、家の中から女性の声がして扉が半開きになった。
「( はい、お待ちしていました~。何の商品をお持ちになったのですか? )」
「( えっ?!なんの?なんだっけ?あ~、えっと、なんだ…。う~…。 )」
サミトは肝心の合い言葉を忘れたらしく、どもってしまった。
すると、エメは、
「( "お持ちの品は、果物三つです。全て揃っています。" )」
とアトランティス語で答えた。
「あぁ、それそれっ!それですっ!!
…あ、あれ、何でエメさんが知っているんですかっ?!」
サミトは驚いたように言った。
「あははっ!さて何ででしょうね~。」
エメは、サミトの驚いた顔があまりにもおかしくて笑ってしまった。
すると扉の中の人も釣られて笑っていた。
「( ぷっ!!もうっ!ダメじゃ無いっ!
でも、あなただって分かったわ。
さっ!入って。お連れさんもどうぞっ! )」
「あは…、あはは…。」
サミトは頭を掻きながら苦笑いし、アルとシアムは頭をはてなマークにしながら中に入った。




