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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
舞姫は姦邪の闇に舞う
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特別公演 第二回

三人は公園に入ると、公園の真ん中を突き抜ける歩道を通って南を目指した。

ここは、以前、ロウアとシアムがアトランティス国民へのアンケートをとった場所だった。


季節としては冬だったが、幸い空は晴れていて、人々は昼時の自由時間を満喫していた。

この国は服装で富裕層か貧困層かはっきりと分かるのだが、"自動暖房服"とも呼べる洋服を着ている一部の富裕層だけが、この場には居た。

そもそも、この街には貧困層の人々は、入ることは許されていない。例え入ったとしても、各地のカメラによってすぐに発見されて街の外に連れ出されてしまった。先ほどの老人は相当運が良かった。


「この公園は平和だな~。」


アルがボーッとしながらそう言った。


「そうだね。ムーと一緒だねっ!」


シアムもうんと頷いた。


「だけど、あれがあるからなんだかな~…。」


アルはそう言うと、空中を漂っている監視カメラをじっと見つめた。


「ま、気にしてもしゃ~ないっ!行こっ!シアムゥ。」


「うん、そうだね。」


エメは、じっと黙って、


(最初に来たときよりは、良い意味で開き直ったみたいね。

だけど、あの変な追跡者、気になるなぁ…。)


そんなことを思っていた。


三人は、不安に思いつつ公園の最南端に到着した。

その場所は雪に包まれた木々に囲まれていて、せっせと除雪用ロネントが動き回って雪をどかしていて何とか芝生が見える状態を保っていた。


「着いた~っ!ここがシアムの言っていた場所だね。確かにここならイケルっ!」


この場所の奥は、一段高くなっていて、簡易ながら屋根もあり、丁度、簡単なコンサートが出来るような場所だった。

ロウアとシアムがインタビューをした際に、シアムは密かにここなら何か出来るかもと思っていた。


「うん、そうなのっ!ここなら駅前よりも広いからやりやすい、にゃっ!」


「だねっ!」


エメは人が少ないので密かに助かったと思った。


「…だ、誰も居ないから、やらなくても良いんじゃ無い…?」


だから、こんな弱気な発言をしたのだが、


「エメくん、違うのだよ。だからこそ集めやすいのだよ。私たちの歌で人々を集めるのだ~っ!」


とアルに一蹴された。


「そ、そう…。強気ね、あなた…。はぁ~…。」


エメは、ため息をすると、


「エメさん、大丈夫です。練習をいっぱいしたし、それに踊りも歌も上手ですよ。」


シアムがエメの気持ちを察するようにそう言った。


「そ、そうなの?カラオケと小さい頃に習ったバレエのお陰かしらね…。しかし、相当ってレベルの前じゃないけど…。」


「ばれー?それってなんなのにゃ?」


「私たちの時代の伝統的な踊りの一種?って言えば良いのかしらね。」


「ほ~っ!すげ~っ!シアムゥ、未来の踊りだぜ~っ!」


「うんっ!今度、教えて欲しいですっ!」


アルとシアムは目を輝かせた。


「…い、いや…、教えられるほどのもんじゃないし…。」


エメは困ってしまったが、


「じ~…。」

「にゃにゃ…。」


アルとシアムは期待のまなざしで見つめていた。


「…わ、分かったわよ。基本的なことなら…。あなた達は、からだ柔らかいしね。」


「おぉ~っ!」

「やった~、ありがとうっ!」


そんな雑談をしながら、三人は近くにあるトレイに入った。


「狭っ!くさっ!清掃していないのかしら…。」


エメは、あまりメンテナンスされていなく、汚れて臭いトイレにうんざりとした。


「んだね…。まぁ、準備って言っても着替えるだけだし。」


アルは鼻を押さえながら話したので鼻声になってしまっていた。


「うにゃ…、く、臭いけど、着替えよぅ~。」


シアムも鼻声になりながらそう言うと、三人は駅前のようにツナクトノを使って華麗に変身した。

トイレの汚さと、三人の華麗な姿のギャップがなんとも言えないシュールな風景となった。


「いくにゃっ!」


シアムが鼻を押さえながら合図をすると、三人はうんと頷いて一斉に誰も立っていないステージに出てきた。

芝生にはちらほらと人々が居たのだが、突然、ステージに誰か出てきたので何が始まったのかと驚いた目で見ていた。


「こんにちは~~っ!」

「アトランティス国のみなさん、こんにちは、にゃ~っ!」


アルとシアムは、観客とは呼べない人々に向かって手を振りながら、通訳機を使いながら声を拡散させた。


「またも突然の登場しちゃいました~っ!」

「突然ですが、ライブを開いちゃいま~すっ!」


(この子達って本当にすごいわ…。どこからこのテンションが出てくるのよ…。)


エメは、こんな事を考えながら、若干引きつった顔で何とか手を振った。


「さてさて~、まずは挨拶で~~すっ!」


アルはそう言うと、三人は顔を見合わせた。


すると、アルは、人差し指を右のこめかみに当ててポーズした。


「いちっ!可愛くて元気なアルですっ!」


シアムは同じように二本の指を同じように当ててウインクして可愛らしいポーズをした。


「にっ!猫族代表、おしとやかなシアムですっ!」


エメ(キホ)は、三本指で同じようにすると、何とかポーズを決めた。


「さんっ!きつめの目だけど、実は優しいキホですっ!」


「三人合わせて、カフテネ・ミルですっ!」

「三人合わせて、カフテネ・ミルですっ!」

「さ、三人合わせて、カフテネ・ミルです…。」


最後に三人は、組み合わせながら決めポーズを観客に見せた。

だが、エメは恥ずかしさで、身体が若干震えて顔も引きつってしまった。


(だ、だめ、これ…、どうしてこの二人は恥ずかしくないわけ…?)


「(エメくん、駄目でしょっ!笑顔、笑顔っ!)」


「(わ、分かってるけど…。)」


アルとエメが小声で話しているのを見て、シアムが慌てつつ挨拶を続けた。


「え、えっ~と、昨日は駅前で公演しましたが、今回はこの国際公園で公演することにしました~~っ!

あの時も突然だったけど、沢山の人が集まってくれて嬉しかったですっ!ありがと、にゃ~~っ!


「ありがとね~~っ!今回は二回目になりますっ!是非、聞いて下さいねっ!」


アルはそう言うと、肘をついてエメにも何か言えと仕草で示した。


「あ、あはっ!私、に、二回目だから恥ずかしいなぁ…。」


「えm、じゃない、キホちゃん、頑張ってっ!みんな見ているよっ!」


アルはエメと呼びそうになってしまった。

エメはまばらに居る人々が自分を見ていると確認すると、


「う、うん、そ、そ、そ、そうだね。キホ、頑張るねっ!」

(うぇぇぇ…。き、気持ち悪っ!なんの罰ゲームだよぉぉ、これはぁぁぁ…。)


と心と顔がバラバラになりつつ、何とか聴衆に愛想を振りまいた。


「今日もよろしくお願いします~~っ!」

「今日もよろしくお願いします~~っ!」

「きょ、今日もよ、よろ…しますぅぅぅ…。」


そんなこんなで、ゲリラ的な路上ライブを開き終える頃には、拡散された情報を見た人々が芝生を埋め尽くすぐらい集まって非常に盛り上がった。


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