魂達の涙
しばらくすると、魂のロウアところに、ムーの女王の使いとして短髪の女神とメメルトが現れた。
(ロウア…、イケガミ様は、大丈夫かい?)
(いや…、見ての通りだぜ。)
短髪の女神は、魂のロウアを見て言葉を失った。
(あぁ…、イケガミ様ぁぁぁ…。い、痛そうです。師匠ぅぅ…。)
メメルトはそう言いながら、両手を前に出して、身体を癒やすための光をロウアに注いた。
(ロウア、連絡がある。)
短髪の女神は、再び魂のロウアの方を見ると、そう言った。
(なんだ?)
(ここに、シアムとアル、それとエメがイケガミ様を助けるために向かっている。)
(はっ?!何で彼奴らが?)
魂のロウアは、その連絡に衝撃を受けた。
ムーに帰したときにあれ程来るなと言ったにもかかわらず、またこの国に向かっていたからだった。
(シアムは、イケガミ様を助けたいって事だ。)
短髪の女神が続けてそう言うと、動揺を隠せない魂のロウアは、最後には腹を立てた。
(助けたいって…、彼奴らには無理だろっ!戻せってっ!ここは危険だって分かっているだろっ!!)
(シアムの思いは止められないんだ。分かるだろ?)
短髪の女神は、魂のロウアの肩に腕を置くとそう言った。
(だ、だからって…。
あいつ何を考えているんだよ…。
こいつの仲間は、スパイだと思われているんだ…。
シアムもそうだが、アルも一緒にって…。彼奴らバカだろ…。)
(だから、歌を歌いながら派手に移動して、この国に捕まらないようにしている。
その光景はムーにも放送されているから、ここの奴らも手を付けられないだろう。)
(いやいや…。そんなんで安心できるわけが無い…。この国は何でもするぜ?)
(エメも居るから何とかなるとは思う。)
(あんな悪党が本当に味方するのかよ。)
(それは保証しよう。大分、反省していた。心の声も嘘を言っていない。)
(お前たちも何かしているのか?)
(もちろん。全力でバックアップしている。ただ…。)
(霊体じゃ限界があるって言うんだろ?)
(……。)
(…あいつらまで捕まったら…、俺はどうしたら…。
あぁ…、馬鹿野郎…。なんで、なんで…。)
魂のロウアは、幼馴染みの二人の安否を気遣った。
女、子どもまで容赦しないこの国では、何をされるか分からなかった。
(メメルト、イケガミ様の様子はどうだい?)
(師匠ぉ、癒やしの光で少しは痛みが和らぐと思いますが、両腕は難しいです…。
これだとイケガミ様はコトダマが使えないですぅぅ…。)
(…分かった。)
(あぁっ!!もうっ!!シアム達は大丈夫なんだろうな?)
(私たちがあの子達に付いてムー国との連絡はしっかりとする。異常事態には、強引にでも連れに来る事になってる。)
(あぁ、頼むぜ…。俺は、こいつのそばにいる。何かあれば連絡する…。)
魂達は互いにうんと頷くしかなく、ロウアをただ見つめるだけだった。




