出発前:銃を持つという事
アトランティス国に来る前のシアムが出国を決意してから一週間が経過した頃だった。
準備が整ってもうすぐ出発という時、聖域の一室で荷物を広げて準備を進めていた、アル、シアム、エメのところに、アマミル達もやって来て、ロウアを除く部員達が全員集まっていた。
「アルちゃん達、荷物の準備中?」
アマミルは、アルとシアムに声をかけた。
「はいっ!そうですっ!
救出するための道具も必要ですし、着替えも必要ですし、食事も必要ですし、荷物を持ちすぎないように整理しているところです。」
アルはギュウギュウ詰めになった鞄に、更に荷物を押し込めながらそう言った。
「整理というか…。無理矢理詰め込んでいるようにしか見えないけど…。」
「えへへ~。」
アルは頭をかきながら脳天気そうに笑った。
「生活用品は問題ないようだけど、身を守るものは何か持って行くの?」
アマミルは二人のみを按じて質問した。
「トロアさんから銃を貸してもらいました。」
「そうなのね…。」
アマミルは、銃と聞いて、やはり、シアムとアルの旅が危険になるのだと再度認識した。
「ただ、実はどうしようか迷っているんです…。」
アルは、地面に置いたままのポケットに入るぐらいの小さな銃を見つめて困った顔をした。
この時代の銃は、所謂レーザー銃であり、一瞬で相手を殺傷する能力があった。
ロボットアニメのような光線が見えるわけではないため、標準用のレーザーポインターが照射され、それを頼りに引き金を引く仕組みになっていた。
その引き金を引くと光速でレーザーが相手のところに届き、その場所は一瞬で焼かれて穴が空く。
反動もないため、女性でも扱う事が出来た。
ただ、このレーザー銃は、非常に危険な殺傷武器のため、利用者はツナクトノを通して神殿で管理された。
このため、許可が無ければ、銃を手にしてもレーザーを打つ事は出来ない。
「どうして迷っているの?」
アマミルもその銃を見つめながら、そう言った。
「う~ん、これを持っていると責任があるみたいで…。」
「責任…?」
今度は、シアムが銃を恐る恐る持ちながら、アマミルの方を見た。
「そうです、にゃ…。これを持っていると、誰かの命を預かっているような気がするんです…。」
「誰かの命を…預かっている…。」
アマミルは思った。
アルとシアムは、命がけの旅になると分かっているのだと。
銃を持つ事の責任を感じているのだと。
「で、でもさ~、何があるか分からないから持ち歩いた方が良いよ~。」
イツキナは話を聞いていて、たまらず口を挟んだ。
「そうですっ!アル様とシアム様に何かあったら大変ですっ!持って行くべきですっ!」
ツクも持ち歩くべきだと言った。
「うん、そうだね、ありがとうございます。
シアム~、やっぱ、持って行くか~。」
「そうだね…。」
その話を聞いていたエメは、
「そんな武器使わなくても、俺がいるから大丈夫だぜ。」
と言うと、両手を前に向けて腕から銃口を何個も出した。
「練習を見てると腰が引けてて、お前ら二人じゃ使えたもんじゃないからな~。」
「…た、頼りにしている、にゃ。」
「まあ、俺がお前らの銃を使えるようにする権限を持っているからな~。」
この旅では、本来、神殿が持つレーザー銃の使用権限をエメが持つ事になっていた。
つまり、彼が承認しない限り、アルとシアムは銃を使う事は出来ない。
「使う事がないようにするさ、きっとな。」
「う、うん。頼りにしてるよぉ~。」
「お願いします、にゃっ!」




