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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
電気人形は人間の夢を見るのか?
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ロネントの秘密1

エメが女王身辺組織の神官であるサクルから叱られて、沈黙が続いた。

エメは怒るでも無く、ふて腐れるでも無く、ただじっと黙っていた。


アマミルは、沈黙に耐えられなくなったのか、


「質問をお許し下さい。」


と、サクルに一言言った。


サクルがうんと頷くのを見ると、


「…エメ、あなた達は、どうやってあの霧を散布したの?

自然現象を操るなんて出来ないでしょ…?」


と、思考改ざんの事件当日で気になっている事を聞いた。


「…あいつはロネントの親玉なんだ…。」


また、エメは感情の無い声で回答した。


「親玉…?何のことを…」


「ま、まさかぁ…、大陸中のロネントを使ったのぉ…?」


アマミルや、女性陣は、その意味が分からなかったが、マフメノはそれをすぐに察した。


エメはマフメノの言葉を聞くとうんと頷いて話を続けた。


「壊れたロネントが大陸中に無数に捨てられているだろ?

あいつはそれを直しては改造して、大量に作った意識操作ロネントを大陸中にいる仲間に配った。

それで一気にどかんとやったってわけだ。」


エメは目を瞑りながら、片手を顔の前で広げて霧を散布したのを表現した。


「だ、だけど、どうやって一度に、しかも無数のロネントに指示を与えられるのさぁ…。そんなことあり得ないだろぉ…。

時間を決めてやったのぉぉ?」


個々が独立して動いているロネント達が同調して動くなどあり得ないとマフメノは理解していた。

それなのに、ある日、ある時、突然、意思を合わせたように霧を発生させた事になるのがマフメノには理解が出来なかった。


「そうか。

さっきから理解が早いと思っていたが、太っちょはロネント専門家だったな。」


「ふ、太っちょ…。」


「エメさん、マフメノですっ!マ・フ・メ・ノ先輩ですっ!」


太っちょと言われて怯んでしまったマフメノ代わりにツクが憤慨しながら彼の名前を強調した。

エメは分かったよとジェスチャーで示すと、話を続けた。


「…お前が言うような時間じゃないぜ?

霧を発生させるには、適切な時が必要だからな。

…良いぜ、お前たちにロネントの秘密を二つ教えてやる。」


「ひ、秘密だってぇぇ…?何か秘密の機能でもあるって言うのかいぃぃ?」


「太っちょには、教えてやるが、ロネントは先代の女王が作ったって言ったが、神官組織は、全ての機能を理解しているわけじゃ無い。」


エメはマフメノだけに教える風に言ったが、この場にはサクルも居たし、元神官の霊体達も立ち会っていた。

エメの、嫌みを含んだ言い方と、理解していないと言い切ったのでサクルは、柄にも無く憤慨した。


「な、何ですって?そんなことあり得ませんっ!わ、我々は先代の女王から全てを引き継いでいますっ!」


もちろん、サクルは自分達神官組織が把握出来ていない機能が存在するなどあり得ないと思っていた。

エメはサクルをチラリと見ると、


「…あいつは神官達が知らない機能を見抜いたんだんだよ。」


とマフメノに向かって言った。


「そ、それはどんな機能なんだよぉぉ…。」


マフメノがそう問うと、


「ロネント同士は会話が出来るんだ。」


「えぇ…。ま、まさかぁ…。か、会話だってぇ…?」


「その機能でロネント達は見聞きした内容を互いにやり取り出来るんだ。

匂いや、接触したときの感覚、思考した内容まで、それこそ何でもかんでもな。

あいつは、それを"共有"って言ってたぜ。」


「きょ、共有?さっきも共有って言っていたけどぉ…。

…見聞きって…、まさか、ロネントがセンサーで受け取った情報を共有しているってことぉぉ?

う、うそだぁ…。ロネントは、神殿ででしか情報を集められないはずぅぅ。

そ、それを伝え合ってるなんて、ありえないよぉ…。」


マフメノは自分の知らない機能を話されて驚きの声を上げた。


「神殿では、ロネントにケーブルか何かをつなげて情報を取っているんだろうが、そんな必要は無いって事だ。」


「そ、そ、そ、それはどうやってぇぇ…。」


ロネント好きのマフメノは逆に興味がわいてしまっていた。

ツクもマフメノの横でエメの次の言葉を待っていた。


「情報共有には、重力の力を使っているらしい。無限に何処にでも届くとか何とか言ってたぜ?

そのよく分からない重力の力で互いに情報をやり取りしているんだそうだ。」


「じゅ、重力だってぇぇ?重力…、重力…、そんな…。えぇ、どうやって、どんな力ぁ…?

あらゆるものには重力があるけど、それを使ってるぅ…?えぇ、ど、どういうぅ…。」


「マフメノ先輩、重力ってあの重力ですよね…。それでどうやって通信を…?」


「僕が聞きたいよぉ…。」


ツクもどういう原理なのか理解出来ず、ロネント好きの二人は頭を抱えた。


「ま、俺も詳しい事は分からないんだけどな。」


「た、確かに関節なんかの動きは全部、電波を使って制御しているけどぉ…。」


「それとは違うって言ってたぜ。」


「えぇぇ~~、違う通信方法があるってぇぇ…?はぁぁ…。そんな秘密が…。

そ、それに情報を共有したところで、どんな意味があるんだよぉ…。」


「ロネントは一つになろうとしていると言っていたな。」


「ひ、ひとつぅ?ロネントが一つぅ…?どうしてさぁ…。」


「深い理由なんて俺は知らないぜ。人間様の弱点を無くすためだとか何とか言ってたな。

ったく、ロボット共が笑わせてくれるぜ。」


「何だよぉ、それぇぇ…。」


「あぁ、そうだ…。

お前たちに言ってことがある。」


エメはそう言うと、部員達の方を向いた。


「ロウア…、つまりイケガミが宿る前のロウアが、その秘密を知ったから殺したとあいつは言っていたぜ?」


そして、エメの口からロウアの話が突然出てきたので、部員達は驚いた。


「えっ!!!ロウア…?やだやだやだ~っ!シアムゥ、あの海の事故って…。」


「ロネントの仕業だった、にゃ…。」


アルとシアムは、ロウアの殺された理由が分かって震えが止まらなくなった。


「あの頃にその秘密を知られてしまうのは不味かったらしい。

俺達の計画がばれてしまう可能性があったからな。」


「ロ、ロウア君は…、そんな理由で…。ひ、酷い、にゃ…。」


「…また話が逸れちまったが、つまり、その情報共有機能で命令を出して霧を発生させたってことだ。」


「じょ、情報の共有だけじゃ無くって、命令の伝達も出来るって事かぁぁ…。

そ、それじゃぁ、き、霧はどうやってぇぇ…?」


マフメノはアマミルが最初にした質問を繰り返した。


「それは簡単だぜ?

自分達の身体の一部を思いっ切り熱くして水に突っ込めば良いだけだからな。

あの日は午前中、雨が降っていたはずだぜ?」


「み、水たまりを使ったのぉ…?

…それなら霧の発生装置は要らないはずだよぉ…。

あっ!

あのロネントは清掃用ロネント…、水を持ち歩いていたぁ…。

どおりで分解しても見つからないわけだぁ…。」


マフメノは部室で襲ってきたロネントを分解しても何も出なかった事を思い出した。


それらを聞いていたアマミルは、腕を組むと、、


「はぁ~、全く…。

つまり、目に見えないような小さなロネントが、あの霧に紛れて大陸中に散布されて、国民達は記憶が改ざんされたと…。」


と話をまとめた。


「…そうだ。」


「そして、ロネントの秘密として、互いに見聞きした情報をやり取りをして、伝達も出来ると…。」


「…そうだ。」


「信じられないような話ばかりだけど、あなたもう一つ秘密があるって言ったわね。」


「あぁ、こいつは今までの話とは全く関係が無いが、天使様達も居るから教えといてやる。

ロネントについてのもう一つの秘密だ。

一体どういう原理なのかも不明だがな。」


「まだあるというのですかっ!それはどんな秘密だと言うのですっ!」


エメはサクルをじろっと睨むと、


「はんっ!お前らはどうしてこんなものを作ったんだって、俺は言いたいんだっ!」


と言った。

エメが言った一言には、自分が生きていた時代に仕事を奪っていったロネント達を作った責任を問う意味が含まれていた。

だが、その意味を分かったのは、時代をともにしたオケヨトだけだった。


<エメ…。>


この場に居る神官達、部員達もそうだが、この場に居る霊体達もどんな話が出てくるのか分からなかった。

自分達が作って世に送り出したロネントにどんな秘密があるのだろうかと思った。

そして、直感的に何か不安を呼び起こすような内容であるとも思った。


「それは、私について…、いいえ違うわ…、私たちについての話でもあるの。」


エメは來帆の意識になりつつ、ロネントについてもう一つの秘密を話し始めた。


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