五日目:ヘンテコロウア
一方、アマミル達は、軍艦の外に出ていて、車で駅に向かっているところだった。
車は所謂自動運転だったので運転席は無く、我々からすると後部座席しかないようにしか見えない。
その席は向かい合わせになっていて、部活の女性陣と分身ロウアが座っていた。
アルとシアムの間に座っているロウアは、眠そうにしながら下を向いていた。
「やだやだやだ~っ!カミィッ!起きてるのぉ?
急に起き上がったと思ったら急いで外に出ようって言ったのは君だぞぉっ!
未だ眠いならあそこで寝てれば良かったのにぃっ!」
アルは、そう言いながらロウアの両肩を腕で揺すった。
「…うん。おき…てる…よ…。」
ロウアは、首が前後に動かされてしまった。
「何だか冴えないなぁ。変だぞぉっ?」
「アルちゃん、カミは疲れていて眠いんだよ。寝かせて上げようよぉ。」
シアムはロウアのことを心配して不安そうな顔をしながらそう言った。
「いや、そうなんだろうけど。な~んか変なんだよなぁ。」
アルがそう言うと、
「…だ…いじょうぶ…だよ…。とにかく、外に出られて良かっ…た。」
とロウアは言葉が途切れ途切れになりながら話した。
「…良かった?どういう意味なの、にゃ?」
シアムはロウアの言った意味が分からなかった。
するとイツキナが、
「あそこに居るとさぁ、変な悲鳴が聞こえるからじゃない?
みんなは感じないかもだけど、雰囲気悪かったもん。
霊力押さえないからカミ君は、体調を壊しちゃったみたいだね。」
と補足するように言った。
イツキナは、霊的な悲鳴が聞こえていたのを封印していたので問題は無かったが、青白い顔のロウアは、あの声を聞き続けていたのだと理解した。
「そ、そうですか…。私も聞こえていたらカミの気持ちが分かったのに、にゃ…。」
シアムはロウアの気持ちが理解出来ず悲しむと、
「いやいや…、あんなの聞いたら夜眠れなくなっちゃうって~。怖い映画見てるみたいだもん。」
とイツキナは手を振って否定しながら言った。
「そうなんですか…。」
「まぁ、どっちにしても宿に戻って休みましょう。カミ君の顔色も悪いしね。」
アマミルがそう言うと、他の女性陣は頷いた。
「カミ君、それで良いわよね…?」
「……。(ロ、ロウア…くん、たの…む…。…せい…ぎょ…でき…ない。)」
更に、ロウアに確認したが、下を向いたままブツブツと話しているだけだった。
「カミ君?なぁに?小声で聞こえなかったわ。どうし…。」
アマミルが更に問いただすと、その言葉を遮るように、
「あぁ、分かった…。」
と、急にロウアは今までとは違って、真顔になって顔を上げて返事をした。
「わ、分かってくれて良かったわ…。」
「と、ともかく、早くこの国を出るんだっ!!急げっ!」
すると、ロウアは怒りを込めるようにみんなにそう言った。
「何だぁ?急に元気になったと思ったら、アトランティス国を出るってぇ??」
アルは、ロウアが何を言ってるのかと思った。
「ちげえって…、じゃなくて、違うよ。と、ともかく、今日で終わりだ…終わりにしよう。」
「カミ、良いの?明日、準ツナクを見る予定だったけど…。」
「シアム、良いんだ。また来れば良いだろ?
あぁっ!また来られるからね。」
「そ、そう…。」
「う~ん、な~んか変だけど…。」
アルもシアムも変だと思ったが理由が分からずにいた。
「カミ君がリーダーだし、私たちは従うわ。宿に戻ったらすぐに帰り支度しましょう。」
アマミルは同意するようにそう言った。
「そうだ、それが良い。早いほうが良い…。ここに居るとお前たちもやばいぜ…。」
「やばい?やばいって何が…?」
イツキナは理由を問いただした。
「あぁ、そ、そうだなぁ、ほ、ほら、変な声が聞こえたりするし…。
お前もさっき、そう言ってただろ?
それに、ここは蜘蛛の巣みたいな場所だ。
お、おまえら…、み、みんなも蜘蛛の巣に引っかかってしまうかも…だからさ。」
「…はぁ、まぁ、確かにあの蜘蛛の糸で操られたくはないからなぁ~。」
イツキナは霊的な目で見た蜘蛛の糸を思い出しながらそう言った。
「まぁ、分かったわ。急ぎましょうか…。」
こうして、アマミル達は予定を変更してムーに戻ることになった。
この後、ロウアは皆を急かすように身支度をさせて、急いでムー行きのキケロント(空中を浮遊する電車)に乗った。




