五日目:軍艦内部
入口は見学者用でもあったが、戦艦に乗る乗組員の入口にもなっているらしかった。
「む、向こう側の扉がちっちゃいぜ…。」
アルは目を懲らしながらはるか遠くまで続く廊下の向こう側を見つめた。
ロウア達のある反対側の入口は小さくかすかに見えていて、この軍艦の大きさを物語っていた。
"え~、こちらです。"
案内ロネントは、その通りを曲がったり、進んだりしながら、ロウア達を色々な場所を案内した。
"え~、ここは乗組員の部屋です。"
"え~、ここは乗組員の食堂です。"
"え~、ここは乗組員の遊技場です。"
"え~、ここも乗組員の遊技場です。"
「乗組員のなんとかばっかりね…。」
アマミルが、うんざりしてそう言うと、
「だね~。だけどさ~、乗組員って言ったって全然いないよね~。駅の方が軍人さん多かったわ~。」
イツキナも同じように思っていた。
"え~、この軍艦は、人間の乗組員はほとんどいないのです。
私のようなロネントが操作しているか、ほとんど自動操縦ですので。"
「あ~、なるほどね~っ!
って!乗組員シリーズは、ほとんど意味ないじゃんっ!」
イツキナは思わず叫んでしまった。
"あはは…、すいません…。"
「(ねぇ、シアムゥ。このロネントさん、なんで最初にえ~って言うんだろうね…。)」
「(何でだろ?)」
"え~、データの読み取り時間を誤魔化しています。すいません。"
「しまった、聞こえてたっ!」
「アルちゃん、小声っぽく話すけど、いつも声が大きいわよ…。」
さすがにイツキナもアルを突っ込んでしまった。
「えへへ…。」
"……つ、つ、次は動力部です。"
「にゃっ!え~って言わなくなっちゃったっ!」
「何かごめん…。」
アルが謝ると、案内ロネントは、ロネントらしくない困った顔をしていた。
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動力部は、巨大戦艦を動かすための中心部だった。
我々が知っているようなエンジンではなく、ムーの技術を使った巨大なドーム状の反重力装置が設置してあった。
「いやいや、これもすごいねぇ…。車に乗っているのよりもメチャクチャ大きい…。」
「ビルを何戸か動かすようなもんだから、これぐらいいるんでしょうけど…。迫力が違うわね…。」
イツキナの感嘆にアマミルも同感してそう言った。
"はい、そうですね。御国の浮遊技術を応用して、このように大きくしています。
さすがにここまで大きくなると制御が大変でこのようにロネント数体で対応せざるを得ないのです。"
案内ロネントが説明したとおり、ここにはロネント達がメンテナンスをしていた。
さすがに人間型は必要ないのか、ここのロネントは、我々が知っているようなゴテゴテとしたロボットのような形態をしていて、それらが忙しく動き回っていた。
「アルちゃん、ロネントさんが一生懸命、働いているね~。」
「そだね~。マフメノっちが作ったお嫁さんみたなロネントだね。」
"それと、この部屋にいると人間は身体を壊してしまうようなので、我々ロネントで対応しています。"
「ちょっ!」
「……。」
「やだやだやだ~っ!」
「にゃっ?!」
突然の説明に、女性陣が一様に嫌な顔をした。
"も、申し訳ございません…。
み、短い時間なら問題ありませんので。"
案内ロネントは女性陣が安心した顔をしたのを見ると、
"え~、あっ、、え~、あぁ…、あ~…、いけませんね…。学習機能が壊れているのでしょうか…。
皆さんの言葉で言うなら口癖でしょうか…。
それが治せません…。
と、ともかく、明日、この軍艦は出航する予定で、その調整をしているそうです。"
案内ロネントは、ロネントにも関わらず口癖が直せないでいる様子だった。
そんな中、ロウアは、みんなの後ろで気分が悪そうな顔をしていた。
「カミ、大丈夫ですか、にゃ?」
心配になったシアムは彼に声をかけた。
「うん、何とかね。ありがとう。」
ロウアは、気分が悪いというよりも、悲鳴が断続的に聞こえているのが気になっていたのだった。
「まだ悲鳴が聞こえているのですか、にゃ?」
「う、うん…。気味が悪いよね…、ごめん。」
「コトダマで抑えた方が…。」
「そうなんだけど、ロウア君と話が出来なくなってしまうから。」
「はにゃう~…。」
シアムはもどかしくて変な声を出すしか無かった。
「ありがと。ロウア君は今調査中だから、戻ってきて話をしたら抑制するよ。」
「ロウア君が調査中ですか、にゃ?そう言えば、この声を調べているんでしたね…。」
「そうなんだ。戻ってきて原因が分かったら抑制するよ。」
「はい、にゃっ!」
シアムが笑顔で返事をすると、ロウアも少し心が落ち着くのを感じた。
"……つ、つ、つ、次は甲板へ行きます。"
「なんかごめん…。」
アルは取りあえず案内ロネントに謝った。




