表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
見えない鉄格子
278/573

三日目:カミ

その後、ロウアはアマミル達と合流して夕食を取ったが、レストランに向かう途中の監視カメラや、建屋にも浮いているカメラが気になって仕方が無かった。

ロウアが全くしゃべらなくなってしまったので、他のメンバーも気になっていた。


彼がトイレに立ったとき、アマミルがシアムに尋ねた。


「なぁに?イケガミ君、じっと黙っちゃって…。シアムちゃん、何か知っている?」


「…分からないです…。公園で質問を繰り返している時から急に…。」


「…う、う~ん。」


「確かに変だね~…。」


イツキナがそう言うと、アルが


「やだやだやだ~っ!もしかして、私たちが遊んでばかりいたから怒っているのかなぁ。」


と原因は自分達では無いかと言った。


「…確かに怒っていたけど、違うと思う…。もっと何か別の事に怒っているというか…。

この国のことを怒っているのかも…。」


シアムは、ロウアを鋭く観察していた。


「あぁ、あれについてかな。」


アマミルは空中に漂っているカメラを見てそう言った。

アルは、口の中の食事を飲み込むと、


「あれは確かに気になるけど、イケガミが怒ってどうするんだよぉ~。全く真面目だなぁ。」


と言った。

アルも気にしているようだったが、他国のことであり深く考えても仕方ないと思っていた。

イツキナは、


「はぁ~、彼らしいね~。アマミル、どうしよっかぁ~。」


とアマミルに相談した。


「…彼には良い勉強になっていると思う。私もあまり好きじゃ無いもの。」


すると、ロウアがすっきりとした面持ちで戻ってきた。

トイレに着くと、自分の不機嫌さでみんなに迷惑をかけてしまったのではないのかと思って、気分を変えるためにトイレで顔を洗ったのだった。


「お待たせして、すいません。ケーキ屋さん、行きましょうか。早くしないと。」


「…ケーキは止めにするわ。」


アマミルの言葉にロウアは驚いた。


「えっ、いいんですか?」


「そうね、やっぱり、イケガミ君の言ったとおり、お腹いっぱいみたい。」


アマミルがそう言うと、他の女性陣もうんと頷いていた。


「そうですか…。」


ロウアは、やっぱり自分の不機嫌さが、みんなに気を遣わせてしまったのだと思った。


「で、では時間が出来たから、洋服通りに行きましょうか。」


だから、洋服通りと呼ばれる「ヘラス ストリイト」へ行こうと提案した。

所謂、ファッションストリートで、ここで流行った服は、ムーの若い女性達に流行る傾向にあった。


「…良いの?」


「良いに決まっているじゃないですかっ!さ、行きましょうっ!!」


ロウアが気丈に振る舞っていると、アマミルは思ったが、彼の気遣いも理解した。


「そうね、行きましょうかっ!」


アマミルがそう言うと、


「うん、そうねっ!」


「うんうんっ!すっごく可愛い服があるんですっ!ね、シアムッ?」


「うんっ!」


イツキナ達も同意した。


「まぁ、可愛い服って歳でもないんだけどなぁ、あははっ!どうよ?アマミル。」


「どうって…。私もあんたと同じ歳だし。」


先輩二人は、可愛い服という言葉に抵抗を示したが、


「先輩達に似合う服もありますよっ!」


「そうです、にゃっ!」


アルとシアムに後ろから押されるようにレストランを出て行った。


-----


一同は、和気あいあいとしながら、洋服通りに到着した。

夜も更けていたが、通りは明るい街灯に照らされていて、若い男女が入り乱れて夜の街を楽しんでいた。


通りの両側には、文字通り色々な洋服店が並び、立体映像で各店で作った様々な服が映し出されていた。

それを女性陣は、あーでもない、こーでもないと言いながら楽しそうに見て、気に入った服があれば、中に入って試着して、似合うとか似合わないとか、わいわいとしていた。


ロウアは至る所にあるカメラが気になったが、取りあえず無視して女性陣の試着七変化を楽しんだ。


すると、ふと、アルはロウアのことを


「カミも着替えなよっ!」


"イケガミ"ではなく、"カミ"と呼んだ。


「か、かみってなんだよ…。」


「なんか、イケガミって呼びにくかったからさ~。"ガ"って、喉からなんか出そうだし。」


「なんつ~事を…。世界中の"ガ"が付く人を敵に回したな。」


「そんな口から何かでそうな名前は、ムーに居ないってっ!」


「全く…。」


濁音の存在しないナーカル語で"イケガミ"は確かに呼びにくそうだとロウアも思っていた。


「あら、良いじゃない?カミ君って呼びやすいわ。」


「あはは~っ!カミ君ね、良いかもっ!」


「カミ兄さんです、にゃ!」


アマミル、イツキナ、シアムも同意したようだった。


「はぁ~。まぁ、分かりましたよ。」


ロウアは、呼び名は何でも良いと思ったが、


(カミ…って、神って呼ばれているみたいだなぁ。)


発音まで日本語の"神"に聞こえるので違和感があった。


(神?そんな意味なの?ど偉いあだ名になったなぁ。ま、俺はイケガミって呼ぶからなっ!)


(その方がしっくりくるよ。)


隣人は、神と呼ぶのを嫌がったが、ロウアは元の名前どおりなのでそれでいいと思った。


アマミルは、


「さっ!さっそくカミ君、お着替えをっ!」


と早速、ロウアを新しいあだ名で呼んで仕切り始めた。


「あぁ、はいはい…。」


その後、ロウアは女性陣から逃げることも出来ず、着せ替え人形にされた。


(みんな楽しそうだからいっか…。)


(クククッ!ゲラゲラッ!んだよ、その格好はっ!)


隣人は、半ズボンになって小学生のような服になっているロウアに爆笑した。


(…君は笑わなくていいって…。)


(ゲラゲラッ!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ