三日目:国立公園:質問タイム
ロウアが決めた、この学習旅行の"表の目的"、つまり、学校へ提出した目的は、植民地として発展しつつあるアトランティス大陸を訪問して今後のムーの発展に役立つ知識を吸収するということだった。
だが、"裏の目的"、つまり、個人として知りたい事は、植民地政策の判定を自分なりにしてみたい、という事だった。
ロウアは、ムーが例え宗主国だと言っても、他国を支配するような体制を理解できなかった。
その目的が何にせよ、自分達の国を侵食されたと思われる事になってしまうのだと思ったからだった。
ロウア達は公園に着くと、ロウアとシアムを残して、アマミル、イツキナ、そしてアルは動物園へと向かっていった。
「シアムゥ~、後は頑張れよっ!ニヤニヤ…。」
「ア、アルちゃんっ!!」
「ゲヘヘッ!」
アルは、ニヤけた顔で気味の悪い笑い声で笑いながらシアムをからかった。
アマミルは、二人の会話を聞いていないのか、
「それじゃぁ、後でね。イケガミ君。」
とリーダーらしく仕切った。
「はい、15時頃にケーキ屋さんですね。」
ロウアが返事をすると、イツキナはアマミルを肘で突っついて、本当に別れてしまって良いのかと、確認した。
アマミルは、また言うのかと思いつつ、イツキナを睨むとそのまま公園を離れていった。
仕方が無いので、イツキナとアルは、手を振りつつ、アマミルについていった。
「シアム、手伝ってくれてありがとね。一人だと心細かったから助かるよ。」
ロウアが、シアムにお礼を言うと、
「わ、私もお手伝いできて嬉しいです、にゃっ!」
と彼女は笑顔で答えた。
ロウアは、この公園でアトランティスの市民達に色々なことを聞いて廻るつもりだったので、ツナクトノ(手首に巻いたコンピュータデバイス)に、予め準備した質問事項を表示して準備を整えた。
取りあえずの質問は、ムーについてどう考えているか、ムーの支配をどう思うかについてだった。
「それじゃ、始めよっか。」
「はいっ!頑張りましょうっ!」
聞いていたとおり、アトランティス国の市民に対して、ナーカル語は通じなかった。
仕方なく、ロウア達は、ツナクトノに搭載された翻訳機能を使うことにした。
つまり、ツナクに言いたい事を伝えて、翻訳された文字が表示されるのを市民に見てもらう形式を取った。
その回答を一緒に付いてきたシアムが、同じようにツナクで随時翻訳して記録する事にした。
以下は、ロウア達の質問に答えてくれた市民の声(抜粋)である。
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「ムーが嫌いでは無いかですって?
いいえ、感謝していますよ。だって、海賊達から守ってくれましたと聞いていますから。」
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「ムーの人達を恨む?なんで?こんなにも街を整備してくれたのに?」
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「水道や、ウムル(発電機のようなピラミッド型のもの)や、住居の作り方を教えてくれたから、ありがたいと思っていますよ。」
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「ムーの人達が来るまでは農耕や漁業ぐらいしか仕事は無かったし、小さな村が沢山あるだけでしたよ。
ここまで発展したのは、ムーのお陰ですよ。」
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「統治者は、私たちアトランティス人から選んで頂きましたよ。
おじいちゃんは、初めは占領されて食い物にされるのかと思っていたそうですけどね。」
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「言語を奪われた?あははっ!それまでは言葉なんて無かったって聞いていますよ。
ナーカル語を広めてくれたから政治や経済が成り立ち始めたって歴史の教科書に書いてありました。
それに、私たちの言葉を作りましたし。
あなたとの会話もツナクを通さないと出来ないでしょ?」
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「ラ・ムーへの信仰を無理矢理強制させられたか?
そんなことありませんよ。
我々は、無宗教を選択しましたから。」
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「えっ?!ラ・ムーを信仰しないで良いのかって?
我々の自由ですよ。あははっ!」
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