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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
見えない鉄格子
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序章 - 新大陸 -

ムー大陸から、現在で言うところのアメリカ大陸とヨーロッパ大陸の間に存在する大きな島が存在した。

ここは、ムーの人々からは、アトランティスと呼ばれた。


アトランティス大陸は、もちろん、現在は存在しない大陸である。

ムー大陸の没落の後、数千年後、同じように海中に没落してしまう運命にある。


大陸は、アメリカ大陸のプレートの東側に位置し、ヨーロッパ大陸のプレートの切れ目と近い位置に存在した。

そのため、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸の二つのプレートが互いにぶつかり合って、3,000メートル~5,000メートル級の高い山を作っているところもあった。また、カルデラ火山なども存在していた。


ムーの栄えた1万2千年前の時代は、氷河期が引き始めた頃だった。

氷河期の頃は、氷河期の氷の高さは、数百メートル~数キロメートルにも及び、その巨大な壁が現在のヨーロッパ大陸や、アメリカ大陸の北部を覆っていた。

現在見られる北極、南極の氷は可愛いものである。


ちなみに、そのような氷壁の下にあった石の引きずられた後が、セントラルパークの石の上に傷跡として今でも残っている。

また、五大湖は氷の壁の重みでへこんだ場所に氷が残り、それが溶けてできた湖である。


話が逸れたが、このアトランティス大陸は、そのような氷河期の後に見つかった新大陸だった。


大陸が現れた頃に、色々なところから自然と人々が集まって住み始め、それから数百年経過した後、ムー文明による植民地政策が始まった。

その開始は、ロウア達の時代から百年ほど前の出来事だった。


ムーの植民地政策は、我々の知っている植民地政策とは異なっている。

現在風に言えば、ウィンーウィンの関係が築かれるように"相手国を育てる"という方針だった。

つまり、原住民達には、ムーの文化と文明、科学技術などをほとんど無償で与えた。

与えきりでは無く、相手国が自立できるようにするため、その国のリーダーも原住民から選ばせるようにした。


なお、心ない人による植民地政策もあったが、この話は別の時にしよう。


この国は、急激な発達によって人手不足を呼んだが、ムーは、ロネントの技術だけは伝えなかったため、独自の奴隷制度を確立して労働力を確保した。

つまり、ムーの科学力を悪用し、周辺地域の国として確立していないところから人々をさらっては奴隷として扱ったのだった。


さて、ここは、そのアトランティスの片隅に存在する田園風景の広がる場所だった。

そんな田園都市には似つかわしくない場所に、巨大な壁に四方に広がっていて、牢獄らしい姿でその場にそびえ立っていた。

牢獄にも政治家などの権力者は、入ることもある。

そんな者達に手を汚させる事は出来ないと考えた警備員は、奴隷をそんな派手な囚人の身の回りの世話をさせた。

堀の外で偉そうにしていた輩は、堀に入ってもやはり偉そうにそんな奴隷をこき使った。


「こんな飯を食わすなっ!!」


「ヒッ…。」


欲望を体現したような腹の膨れた元中年の貴族は、奴隷の少女に食べ残したままの皿を投げ飛ばし、更に、少女を掴むと壁の方に投げ飛ばした。


「い、痛い…。」


「お前みたいなクソが、痛いとか言うなっ!!こんな犬のような飯、お前が食えっ!」


「……。」


奴隷の生活では、まともな食事にありつくことも出来ず、人間としての尊厳など気にしている場合では無かった。

少女は、空腹を抑えきれず、床に落ちた食事を手を使って一生懸命口に運んだ。


「ちっ!お前みたいな犬は、手を使うなっ!!犬は犬らしく口で食うんだよっ!!」


男は、そう言うと、少女を思い切り蹴飛ばした。


「痛い…。」


少女は逆らうことも出来ず、言われるがまま口を床に付けて食事を取ろうとした。

そんな姿を見て、さらに苛立った男は、少女を卑下するように見つめた。


「ホントに犬だなっ!」


男はそう言いながら足で、わずかに残った食事を食べられないように踏み潰してしまった。


「あぁ…。」


少女は、その食事のかけらを取ることが出来ず、嘆くしか無かった。

結局、それ以上は何も食べることは出来ず、腹を空かしたまま明かりも窓も無い奴隷部屋に戻った。

女の子の奴隷が集まった部屋には、寝るに十分な空間も無く、数十名の奴隷達が互いがぶつからないように身を丸めて眠っていた。


「シック…、シック…。」


少女は、ベッドと呼ぶにはあまりにもみすぼらしい寝床に寝転んだ。


「シック…、シック…。お母さん…。お父さん…。助けて…。

こんな生活、もうイヤだよぅ…。うぅぅ…。」


そう言うと、少女はどこからか拾ったボロボロになった動物の人形を握りしめて、頬をぬらしながら眠った。

よく聞くと、同室からは、色々なところから嗚咽ような鳴き声が聞こえていた。


"ちっ、胸くそ悪いぜ…。"


監視カメラなどを通して少女を見ていた者は、そうつぶやいた。


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