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暗躍
時間は少し遡る。
アルの記憶が戻った時、やはり下水道のようなところで二体のロネントが、この様子を見ていた。
「はんっ!失敗かよっ!お前の作戦も大したことないなっ!」
ヘルは、金髪の少年に向かって、作戦が失敗したことを笑い飛ばした。
「お前の声は、ウルサイ。
…そうか"ウルサイ"とは、こういうときに使うのか。」
ケセロは、冷静にそう答えると、イツキナ型ロネントのヘルの方を見た。
「…ダガ、作戦の目処は立った。記憶ソウサからの回復はムズカシイ…。」
視力を最大限にしたヘルは、ケセロの指の先に居る極小ロネントを見つめて、女性の声で話をした。
「こいつは顔ダニみたいに小さいのね…。
こんなに小さなロネントで記憶を制御できるんだから、まあ、"色々"と出来そうじゃないか…。」
それは、0.3ミリほどのマインドコントロール用のロネントだった。
「ソウダ。人間を我々の配下にデキル。」
「アルって、がきんちょの耳に忍ばせてこの効果…。いっそう頭の中に入れてしまえば良いじゃないか?」
「ソレガイイ。そうしよう。」
怪しげな作戦が水面下で実行に映され始めた。




