母親達
ムー文明も文明としては過渡期を迎え、音楽、絵画、芸術などの文化が花を咲かせていた。
この時代の特徴は、動画を使った歌や踊りを個人個人がオープンにしているところだった。
アルとシアムもカフテネ・ミルとして活動する前は、自分達の作った歌を公開することで人気を集めた。
ただ、やはり生で聞きたいというニーズは、この時代にもあって、広い会場を使ったコンサートは盛んだった。
それを商売とする芸能プロダクションも存在し、アルとシアムのようなアイドルの卵を見つけては、コンサートを開いていた。
ここ、ムーの首都に近い、五万人ほどが収容できるドーム状の会場には、ムー大陸全土からカフテネ・ミルの曲を聴くために集まっていた。
すでに会場は、カフテネ・ミルを待つファン達によって満杯状態になっていて、興奮に包まれていた。
会場の特別席には、ロウアの母親、そして、アル、シアムの母親もいた。
マフメノ、ツク、そして、ホスヰの母親も来ていて、母親同士でわいわいと話をしていた。
アマミル、イツキナの母親も遠くから会場に来て、娘達の披露会を本人達以上に緊張して待ち構えていた。
「まさか、ロウアがアルちゃんとシアムちゃんと一緒にコンサートやるとは思っていなかったよ…。」
ロウアの母親は、相変わらず男っぽい口調で、息子に呆れるようにそう言った。
「うちの娘が巻き込んだみたいね。ごめんなさいね…。本当にうちの子は、手に負えないわ…。」
アルの母親は、申し訳なさそうにしていた。
「あははっ!元気があって良いじゃ無いっ!
それに、本人じゃ無くて、長男が作ったお人形を操作するみたいだから良いんだよ。」
ロウアの母親は、さっぱりとした口調でそう言った。
「アルちゃんのお母さん!
うちのツクも混ぜてくださって感謝していますのよ。
娘は大喜びでアル様と一緒に活動できたって、あんなに元気に私たちに話しかけてくれるようになったのは、アルさんがお陰ですわ。」
ツクの母親も娘が活発になった事を感謝していたので、アルの母親は少し安心した表情になった。
「だけど、ホスヰちゃんは、本人が出るんだよね?」
ロウアの母親がそう言うと、ホスヰの母親は、
「そうなのよ、あの病気がちだった子がね…。私は嬉しくて…。
アルちゃんのお母さん、私たちも感謝していますのよ。本当にありがとうございます。」
そう言いながら、アルの母親の両手を握って涙ぐんだ。
「まぁ、そう言われると…。グスッ…。あら、嫌だ…。」
アルの母親も涙をもらってしまったようだった。
「ですけど、私の娘が先導したって聞いていますわ。
私の娘ったら何でも率先してしまうんですから。
勝ち気な子で困っていますのよ。アルさんだけでは無いかと思いますわ。」
アマミルの母親も娘の性格には手を焼いているようにそう言った。
「そんなこと無いよ。
アマミルさんのお陰で、うちの家に友達が集まるようになったんだからね。
うちの息子どもには友達が少なくってさ。
家に色んな友達が来てくれるのは嬉しいのさ。」
ロウアの母親は、ロウアに友達が増えたことを喜ぶように言った。
「そうですよ。
息子のマフメノも友達が少なくって、家に籠もっていることが多かったのが、出かけることが多くなりましたのよ。」
マフメノの母親もアマミルには感謝していた。
「娘のツクもそうですの。ロネントが友達だから良いって言ってましたが、今では部活が楽しいって。」
イツキナの母親も、
「そうですよ、娘のイツキナが歩けるところまで回復したのは、アマミルさんのお陰ですから。
病院では色々と娘を世話してくれたし、とても良い娘さんです。
それに、娘は、部活の友達がいたから、厳しい手術にも挑めたって言ってましたの。
歩けるようになったのは、アマミルさんのお陰ですよ。」
アマミルに感謝するように言った。
「そうですか…。それなら良いのですが…。
娘は、学校で悪名高くなっていると聞いていましたから、どれだけ迷惑をかけているのかと心配でしたの。
それにしても、皆様、今日はお目にかかれて嬉しいですわ。
これからも娘をよろしくお願いいたします。」
アマミルの母親は、改めて娘をよろしくと挨拶した。
すると、ロウアの母親は、
「アマミルのお母さん、イツキナのお母さん、今日は泊まりだよね?
明日のお昼に、お子さん達も連れてさ、一緒にうちで食事でもどうだい?
他のお母さん達も、もちろんね。」
食事会を提案した。
「良いですねっ!是非、お願いいたします。」
「はい、嬉しいです。」
アマミルとイツキナの母親は、その提案に喜んで参加すると言った。
「素敵ですね!私も何か持って行きますわ!」
ホスヰの母親も同意し、他の母親達も、もちろんロウア家主催の食事会に参加することになった。
「あっ!始まりそうだねっ!」
ロウアの母親が言った通り、やがてステージが開幕した。
ごめんなさい。
「コンサート用新曲:小さな事だけど大事なこと!」の前に割り込みました。




