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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
生命の始まり
235/573

ニュー・アーカ?

ここは、ナーカル校にある霊界お助けロネント部の部室とは違う、少し大きめな教室だった。

部活動は、一旦休憩して、アイドル活動をやり始めるため、部員達が集まって、アルが中心となって踊りの練習をしていた。


ロウアは身体を慣らすために、アルに教わりながら柔軟体操をしていた。

その動きと同期するように、ロウアの横にいる青い色をした女性型のロネントが身体を動かしていた。


「おっ、ロネントちゃんも連動してるねっ!」


アルがそれを見て、声をかけてきた。


「うん、すごいね。ツナクトノとちゃんと連動して動くんだから。

カウラさんの作るロネントはすごいねっ!」


ロウアは右腕を持ち上げならそう言うと、ロネントもそれに合わせ右手を挙げた。


「自分で自分を褒めて褒めてるみたいじゃんっ!あははっ!」


アルは、カウラが、ロウアに宿っている池上の魂の過去世の姿だと知っていたので笑ってしまった。


「そ、そうなるのか…。」


-----


カウラが、このロネントを運んできたのは、アルの情熱的な勧誘活動が終わった、その週末になってからだった。

部員達は、ロウアの家に集まっていて、さしずめ新しいロネントのお披露目会といった様相となった。


ロウアの家のリビングに集まった部員達は、始めてやって来たロウア家に少し興奮気味だった。


「はぁ、これがイケガミ…、じゃなくて、ロウア君の家か。なかなか広いわね。」


アマミルは、ロウアに宿る魂の名前を言ってしまい、慌てて修正しながら、その家の広さに驚いていた。

ロウア家の周辺は、神官達の集まっている高級住宅街だった。


「イケガ…、おっと、ロウア君とアルちゃんとシアムちゃん、シイリちゃんのお父さんは、神官なのよねっ!」


イツキナもロウアの名前を間違えつつ、説明を加えた。


「はぁ、そうなんですかぁ。道理で…。」


ツクは、それを聞いて神官の家は豪華だと聞いていたので納得した。


「そうですっ!そうですっ!私のお父さんは、本部で働いているんです。」

「はい、にゃ!私のお父さんは、法務部です。」


アルとシアムは、イツキナに返事をしながら、父親の仕事を説明した。

シイリはシアムの腕を掴みながら、一緒にうんうんと頷いていた。


「久々に来たなぁ。事故に遭ってから誘ってくれないからぁ。あぁ、中の人が変わったからかぁ。」


マフメノは、以前はよく遊びに来ていたようだった。


「マ、マフメノ…、中の人とか言わないで…。」


ロウアは慌てて、マフメノの発言を咎めた。


「さぁ、どうぞ。お茶ぐらいしか無くってごめんなさいね。もう少し準備しておけば良かったわね。」


ロウアの母親が、部員達に飲み物を持ってくると、部員達は、お礼を言った。


「今日は、ホスヰちゃんも来ているのね。お母さんはお元気?」


ロウアの母親は、ホスヰに気づくとそう言った。


「はいっ!元気ですっ!これどうぞっ!」


ホスヰはそう言うと、母親が作ってもって来させたお菓子をロウアの母親に渡した。


「あら、ありがとうね。だけど、せっかくだから、みんなで食べてね。お皿持ってくるわね。」


「は~いっ!」


ホスヰの母親とロウアの母親は、以前、ロウアがホスヰを治療してから懇意な間柄となっていて、食事や一緒に出かけるまでになっていた。


部員達は、お茶を飲みながらホスヰの母親が作った菓子を食べて、わいわいと待っていると、少し大きめなバンのような車がロウアの家に到着した。


「あっ!到着したねっ!」

「ホントだ~っ!」


アルとシアムは、そう言いながら外にで行くと、他の部員達も後に続いた。

車からは、カウラの他に、部下のオサとエハが乗っていて、丁度、降りてきたところだった。


「おはようございます。お久しぶりです。オサさん、エハさん。今日はありがとうございます。」


ロウアが挨拶すると、


「今日はありがとうございますっ!!アルって言います。」

「ありがとうございますっ!私はシアムと言います。」


アルとシアムも続いて挨拶し、他の部員達も挨拶をした。


「おはようっ!

おぉっ!!エハッ!

カフテネ・ミルだよ、カフテネ・ミルッ!ひゃ~っ!

あとで握手してもらおうよっ!」


「おはようっ!本当にアルちゃんとシアムちゃんだっ!すげ~っ!

カウラさんと知り合いだって聞いて驚いていたんだよ。

これは重大な仕事だな~っ!」


二人ともロネントを運ぶのを手伝うために来たのだが、アルとシアムを見て大喜びだった。


「それにしても、みんな若いなぁ。あははっ!今日はヨロシクね。」


「オサさん、若いからって手を出したらダメですからねっ!」


イツキナは悪ふざけでオサをからかった。


「あははっ!イツキナちゃん、僕とエハは結婚しているから大丈夫だよっ!カウラさんの方が危ないんじゃないかい?」


「ちょ、ちょっと…、何を言っているんだよ…。そ、そんなことよりも、さ、これだよ。」


カウラは焦って否定しながら、車の後ろに積んでいた二体のロネントをみんなに紹介した。


「さ、立ち上がって挨拶するんだ。」


ロネントはカウラの声で自動的に立ち上がって部員達の前で丁寧にお辞儀をした。


「おぉ~~っ!」

「すごいっ!!」

「あうんっ!」


一同はそれを見て、一様に感嘆の声を上げた。


一体は、青い髪に可愛らしい顔立ちをしていた。短いスカートから見えるスラッとした足がとても印象的だった。

もう一体は、本人に似せているので、イツキナにそっくりだった。


「カウラさん、この子は私と同じ顔なのね…。これは疑いようも無く私用だわ…。」


イツキナが、また同じ顔かと思ってちょっとガッカリした。


「う~ん、この頃、試験機を作るときは、みんな君の顔になってしまっていてね…。」


「もっと他の顔を研究してくださいっ!」


「す、すまないね。」


イツキナに突っ込まれると、カウラは恐縮してしまった。


「だけど、もう一つの顔は全然違う顔ですね。とても可愛いっ!」


イツキナが続けると、


「この青い髪の子が僕用…だよね…?」


ロウアも、もう一体のロネントを指差して、そう言った。


「そうだが嫌か?設計しているときに、ぱっと閃いた顔なんだっ!傑作だと思うだが。」


「い、いや…。ありがと。」


一同はロウアの反応に少し不思議に思った。


「…カウラさん、エハさん、オサさん…。」


ここまで黙っていたアマミルは、いぶかしげに三人の名前を呼んだ。


「なんだい、アマミル君?」

「うん?」

「なんだい?」


「この服、どうしたんですか?」


アマミルは、二体のロネントにナーカル校の制服が着せられていた事を言った。


「ど、どうしたって、君たちの制服に合わせたんだが…。」


カウラが慌てるように答えた。


「そうじゃなくて、三人で着せたんですか…?」


「…そ、そうだよな…、オサ…。」

「…な、何だよ、俺に振るなよ、エハ…。」


「ちょ、ちょ、う、うん…。じ、実験体に、い、いつも着せているから、そ、そうだな。え、えっと、い、いつものことなんだ…。」


オサとエハに続いて、カウラが苦しそうに言い訳をした。


「ぷっ、また、アマミルったらっ!大人をからかったらダメよっ!」


それを聞いていたイツキナがアマミルの肩を叩いてそう言った。


「だってね~、いい大人がさ、お人形にお着替えさせてのかと思うと面白くって。」


アマミルは、少しニヤけた顔をしながらカウラ達を見てそう言った。


「ア、アマミル君…、人が悪いなぁ…。い、いい大人って…。」


カウラが、そう言うと一同は大笑いになった。


-----


再び練習用の教室に戻ろう。

アルは、腕を組みながら、青髪のロネントを見つめると、


「しっかし、この子の名前を決めないとね~。」


と言った。


「名前?」


「そうそう、イケガミって名前じゃ、可愛くないよ。」


「はぁ、そうかい…。」


ロウアは、そんなもんかと思った。


「それなら、"アアカ"でどうだい?」


ロウアがそう言いながら、空中に文字を書くことの出来るペンで名前を書いた。


「う~ん、可愛くないけど、まぁ、それでいっか。」


それを見てアルはイマイチそうな顔をしたが、きびすを返して練習に戻っていた。


「なんだよ、全く…。」


ロウアが名付けた"アアカ"は、言わずともアカシックレコードなる女性型の霊体から名付けたものだった。

その顔がそっくりだったから、そうしたのだった。


(アーカってやつと似ているんだっけ?こんな顔なのか。)


その名前を聞いて魂のロウアが声をかけてきた。


(うん…。この身体だと僕らと同じぐらいの年齢だけど、本当は、もうちょっと年下かな。ホスヰぐらい。

大人になったアーカちゃんって感じだよ。)


(そうなのか。だけど、顔が似ているのは、たまたまなのか?)


(分からないよ。だけど、あの子のことだから、多分、何か影響を与えたんだと思う。)


ロウアは、アーカが何らかのインスピレーションをカウラに与えて、ロネントの顔を自分と同じ顔にしたのではないかと思った。


(あの子もいたずらをするんだなぁ…。)


ロウアは、アーカのいたずらに呆れてしまった。


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