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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
生命の始まり
232/573

ジョシカイにて

その夜の女子会は、女子寮にあるアマミルとイツキナの部屋で行われた。

ムー大陸での酒の年齢制限は、我々と同じように20歳だったのでアマミルとイツキナは飲むことが出来たが、学生の飲酒は禁止されていた。

ごくまれに内緒で飲む輩もいたが、見つかった場合は、退学処分になる場合もあったので、ほとんどの学生達はお酒を飲まなかった。


霊界お助けロネント部の女子達も、飲み物はジュースにし、"おつまみ"にスナック菓子を食べていた。

ただ、シイリが飲み食い出来ないので、イツキナは、


「シイリちゃん、私たちだけ楽しんでいるみたいでごめんね…。」


と申し訳なさそうに言った。


「いいえっ!!気にしていませんっ!お家でもそうですしっ!

みんなと一緒にいるのが楽しいから大丈夫ですっ!」


「…シイリちゃんは、本当に良い子ね…。」


イツキナはそう言うと、シイリを抱きしめてあげた。


「えへへっ!ごちそうさま~っ!」


シイリは、抱きしめてもらったことに対して、嬉しそうにそう言った。

周りの者達も嬉しそうにハグし合っている二人を見て我慢できなくなったのか、


「おっ、それじゃ、私もっ!」


アマミルを筆頭に、ハグし合っているシイリとイツキナにハグした。


アル「あははっ!」

シアム「私も~っ!」

ホスヰ「あうんっ!」

ツク「わ、私も良いですか?」


と、他の部員達も次々にハグしていった。


「あわわっ!お腹いっぱいです~っ!」


押しくらまんじゅうのような女子達の真ん中で、シイリは目に涙を浮かべていた。


「ふふふっ!良かったね、シイリッ!」


「うん、シアムお姉ちゃんっ!」


小さな寮の部屋でまんじゅうが溶けていくと、アマミルは、


「そ、それにしても、狭いわね…。」


と言った。

アマミルとイツキナの部屋は、二人部屋だったので七人も集まると、かなり狭く感じた。


「私の昔の部屋に移動する?」


仕方なく、イツキナは元の自分の部屋に移動しようと提案した。

イツキナが、かつて使っていた部屋は、特別な部屋だったので、30畳ぐらいの広さはあった。


「開いてるんだっけ?」


アマミルは部屋は誰かが使っているのでは無いかと思った


「確か、未だ誰も使ってないよ。」


「お、そうか、それなら移動しちゃおうっ!」


「そうだねっ!」


こうして、一同は、イツキナの元の部屋に移動する事にした。

イツキナは、扉が開くのを確認すると中に入って電気を付けた。


ベッドはイツキナが寝ていた当時のまま、大きな部屋の中央に置いてあった。

もちろん、布団は片付けてあり、ベッドはその場に浮遊していた。

部屋にあったあらゆるものは、今のイツキナの部屋に移動したり、捨てたりしたので、部屋は空っぽとなっていた。


「ふ~っ、何だか懐かしいわね…。」


イツキナは、何も無い部屋を見て、少し寂しさを感じた。

アマミルは、そんなイツキナの気持ちを察したのか、


「バカねっ!懐かしいなんてっ!まだ、この前移動したばかりじゃ無いっ!

身体が治ったら歳でも取ったんじゃないの?」


とからかうように言った。


「ぷっ!やだなぁっ!歳を取ったなんて…。

…えっ?!な、無いよね??」


イツキナは少し自信を無くしたのか周りに確認してしまった。


「やだやだやだ~っ!そんなことありませんよっ!」

「そうですよっ!イツキナ先輩は、まだ全然若いです、にゃっ!」


アルとシアムがそう言うと他の部員達もうんうんと頷いていた。


「よ、良かった…。」


この部屋は、床が絨毯のようになっていたが、直接座るには気が引けたので、アマミルとイツキナは大きなタオルを持って来て床に引いた。

そこに、ピクニックのようにジュースや、お菓子を広げて、部委員達は円を描くように座った。


「あれ、でも、そう言えばイツキナ先輩のロネントはどうしたんですか?

どこかにしまっているんですか?」


しばらく雑談をしていると、アルがふと思い出したように聞いた。

部屋を見渡しても、イツキナの代理ロネントはそこに居なかったからだった。


「どこかに行っちゃったんですって。」


アマミルがイツキナの代わりに説明してしまった。


「そうなのようね。どこ行ったのかしら…。」


「えっ!そうなんですかっ!もったいないぃっ!!!マフメノ先輩と調べたかったのにぃぃっ!!」


ツクは、いつか分解してみようとマフメノと画策していたようでガッカリしたようにそう言った。


「あははっ!ツクちゃん、ごめんねっ!

カウラさんに聞いても分からないらしいから、本当に行方不明なのよ。」


「もしかしたら、メメルトさんが使っているとかっ!」


アルが思いつくように言うと、


「"違いますよ~"って言っています~。」


霊体の見えるシイリがメメルトの代弁をした。


「やだやだやだ~っ!もしかして、ここに居るのっ?!じゃなくて、いらっしゃるのぉ?」


そう言われて、アルは焦ってしまった。


「ふふっ!さっきから居るわよ。楽しそうだから来たんだってっ!さみしがり屋よね。」


イツキナも苦笑いしているメメルトを見ながら言った。


「あわ、あわ…。」


「笑っているわよ、"気にしないで~"ってっ!」


「…う、疑ってごめんなさい…。」


アルは、頭を下げて謝った。


ホスヰは、メメルトが居ると聞いて、周りをキョロキョロして見たが、無論見えない。


「あう?」


「ホスヰちゃんの頭を撫でていますよっ!」


シイリがそう言うと、


「あうんっ!ちょっと頭が温かいっ!ありがと~っ!メメルトお姉ちゃんっ!」


ホスヰも少し霊体を感じているようだった。

お返しにメメルトを抱きしめようとあらぬ方向に両手を広げて抱きしめようとする仕草をしたので、メメルトは微笑んで見ていた。


「ねぇ、ねぇ、そう言えば、シイリちゃんのアイドル活動ってどうなの?

アルちゃんに誘われたのよのよね?」


今度はアマミルが、シイリにアイドル活動について質問した。


「はい、とっても情熱的にっ!」


シアムは、そう言いながらアイドルにスカウトされた時のことをみんなに説明し始めた。


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