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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
大騒ぎのランナー集団
227/573

お風呂にて

ロウアが学校から戻ると、兄のカウラが待ってましたと言わんばかりに飛んできた。


「ロウアッ!お帰りっ!!待ってたぞっ!!!」


「た、ただいま…、ど、どうしたのさ…。」


「聞いたよっ!イツキナ君の足が治ったって?」


「…うん。」


そう言いながら、ロウアはイツキナが明日、カウラに会うと言ってたのを思い出した。


「うん…って、あっさり言うなぁ…。どうして教えてくれなかったんだよっ!」


ロウアは、散々、イツキナの世話をしたカウラに報告しなかったのは申し訳ないと思った。


「えっ、あぁ…。そ、そうだね…、ごめん…。」


「相変わらず、冷たいなぁ。

イツキナ君も教えてくれないし、何なんだ、君たちはっ!」


「イツキナ先輩は、色んな人達から質問攻めだったらしいから…。」


「ま、それは良いか。

もしかして、お前のコトダマで治したのかっ?!」


「ち、違うんだ…。原因不明なんだよ。」


「何だって?それじゃぁ、勝手に治ったとでも言うのか?そんなことあり得ないだろっ!」


「そうなんだけどね…。」


ロウアは兄の詰問に答えを持っていなかったので困るしかなった。


「そういえば、明日、イツキナ先輩に会うんだよね?先輩から聞いたよ。」


だから、少し話を逸らすように、イツキナに会うことについて尋ねた。


「そうなんだっ!そこで聞くしかないかな…。でも少しは状況を教えてくれよっ!」


「あ、う、うん…。ええっと…。」


ロウアは、カウラに一通り説明した。


「えぇ、女子陸上の大会が終わった後、生徒達が全員で走って、それで、いつの間にか立ってただって?

えっ?それだけ?」


「うん…、それだけだよ…。」


ロウアは清掃用のロネントの事は話しても仕方ないと思ったので伝えなかった。

それがどういう意味が分からないからだった。


だが、カウラはそんなことでは納得がいかないのか、何かを思いつく度にロウアのところに来て詰問した。


「お前が後ろからコトダマしたんじゃなくて?えっ、違う?」


食事を取っている時も、


「分かったっ!走っている度さ草に紛れて、えいっとやったんだろ?やってない…?そうか…。」


部屋でくつろいでいるときも、


「実はため込んでいた太陽光をその時に発射したとか?!はぁ、そんな事は出来ないと…。」


勉強をしているときも、


「そ、そうか、生徒達の生命力みたいのを吸い取ってイツキナ君にっ!ん?吸い込めない?そんなことやるわけ無いと…。」


最後には服を着たまま風呂にまで乗り込んできた。


「だ、だがな、お前がいたんだろ?お前が絶対に鍵だと思うんだ。」


「あぁ…もうっ!違うってばっ!」


「うむ、そうか…。だが、明日はお前も同席してもらうからなっ!」


「なっ!や、やだって…っ!」


だが、カウラは、ロウアが断るのも聞かず、そのまま出て行ってしまった。


「はぁ~~。僕って人の話を聞かないタイプなんだろうか…。」


ロウアは自分の過去世の姿であるカウラを見てうんざりした。

魂のロウアは、面白そうにやり取りを聞いていたので、愚痴を聞いてもらうつもりで、


(同族嫌悪ってやつかなぁ…。)


とつぶやいた。


(んだよ、それ。)


(自分と同じ性格をしている人を見たりするとイライラしてしまうってこと。自分の嫌な面を見るからね。)


(なるほどな。だけど、お前は人の話を聞いてる方だと思うけどな。

俺の方が聞いてないんじゃないか?あはっ!)


(…そ、そう?ま、まぁ、気をつけよっと…。)


そう思いながら、ロウアが湯船に改めて肩までつかって、ふと横を向いた時だった。


「なっ!」


ロウアは思わず立ち上がってしまった。


= きゃっ!こっち見ないでよっ! =

= というか、下を隠すべきだよ、君はっ! =

= 超次元存在のアーカちゃんの前なんだぞっ! =


「あ、ごめんなさい…。」


ロウアはいつの間にか時間が止まっていることに気づいた。

風呂の天井からしたっている滴が空中で止まっていた。


「じゃ、じゃなくて…、アーカ様…。

そこで何を…しているんですか…。は、裸だし…。」


アーカは裸で身体を洗っているようだった。

ロウアは目を逸らさざるを得なかった。


= 君があまりにも気持ちよさそうにお風呂に入っているから、僕も経験してみようかと思ってね。 =


ロウアはチラ見にすると、アーカの周りの水だけ時間を持っているのか、その背中を流していた。


= 髪は、この石けんを使うのかい? =


「そうですよ、あまり多く使うと泡だらけになるから注意して…。

いやいや…。

こ、今回は唐突すぎませんか?」


= そうかい? =


「いつもは、ピ~ッ、ガラガラ…って言いながら出てくるじゃないですか。」


= 飽きちゃったよ、あれ。 =


「…あ、飽きちゃったって…。」


= ワンパターンだと面白くないだろ? =


「面白いとか、そう言うのではなくて、出てきます~っていう登場になるから…。

アイデンティティを失っているというか…。」


アーカは一瞬上を見上げると、


= 難しい言葉を使うなぁ。あいでんてぃてぃっていう単語を調べちゃったじゃないか。 =


と憤慨気味に言った。


= う~ん、そこまで言うなら、最初からやり直すかぁ~。 =


そう言うと、素っ裸のまま立ち上がってどこかへ行こうとしたのでロウアは慌てた。


「いやいや…、や、やり直さなくても良いですから…。」


= なんだよ、君は面倒だなぁ。 =


「そ、それよりも、ふ、服を来て下さい…。」


= 裸の付き合いっていうものもあるって言うじゃないかっ! =

= あっ!そうか、君には僕が女の子に見えるんだったね。 =


「は、はい…。」


ロウアが一生懸命目を逸らそうとしたが、何としても視線に入ろうとアーカは移動した。


「や、止めて下さいって…。」


やがて、目を逸らしきれず、アーカをチラ見してしまうと、


= きゃっ!エッチっ! =


と言いながら、アーカはそれっぽく恥ずかしがった。


「自分から視線に入ろうとしてくるに、そのセリフ…。」


= あはははははははっ!!!君って面白いなっ! =


「はぁ~。あなたの方が面倒くさいんですけど…。」


すると、いつの間にかアーカはいつもの服を着ていた。

髪も乾いていた。


= 君っ!それは超次元存在の僕に失礼だなぁっ! =


「一瞬で着替えられるのに…全く…。

しかし、今日はぶっちゃけすぎていますね…。」


= …た、確かに油断しすぎたかもしれない。超次元存在のプライドを忘れてしまっていたよ。 =

= さて…と、帰ろっかな。 =


「ちょ、ちょっ!」


= うん?なんだい? =


「何か話しに来たのでは?…と言うか、今日は僕も聞きたいことがあるんです。」


= あ、そうだった。イツキナ君ね。 =


「そう、そうですっ!」


= いや~、いつも説明してばかりだと面白くないなぁ。君はどう思ったんだい? =


「う~ん、分からないのですが、多分、ロネントにイツキナ先輩の何かが残っていたのではないかと思うのですが。

だけど、何であの場所にいたのかが分からないんです…。」


= おっ、いい線いってるね。 =


そう言うと、アーカは天井で回る黄金の球を見つめた。


= …そうか、君はあの場所について知らないんだね。 =


「あそこに何か秘密でも?」


= そうだよ、あそこは、イツキナって子が動けなくなった場所だよ。 =


「そ、そういえば、競技中に動けなくなってしまったって…。」


= 少し教えてあげよっかな。 =

= うんとね、たまにあるんだけど、人間が強い悲しみを受けたり、怒りの気持ちが出たり、強い未練が残ったり、 =

= つまり、そんなことがあると、その思いがスナップショットみたいに、その場に残ることがあるんだ。 =


「スナップショット…、写真?あぁ、写真のように思いが残ると…。」


= そうそう、さすが★8っ! =

= 呪縛霊のちょこっと版みたいなっ! =


「と、ということは、イツキナ先輩の思いとアマミル先輩の思いがあの場所に残ってしまっていたと…。

それはどんな思いなんだ…?」


ロウアは目をつむると、ハッと気づいた。


「…そ、そうか…、二人の走りたいという…強い思いが…。」


= あははっ!さすがだなぁ。説明しなくても分かっちゃったっ! =


「その思いがロネントに宿ったと…。で、でも、なんでロネントに…?」


= あのロネントとかいうロボットは困った奴だね。 =

= 魂を吸着剤のようにくっつけようとする性質を持っているよ。 =

= メメルトとシイリだっけ?あの魂達も巻き込まれたよね。 =


「…吸着剤…?」


= 詳しくは言わないでおくけど、あの人工ロボットを調べてみると良いよ。 =


「は、はい…。

…だけど、アマミル先輩はどうして妖精の姿なんかに…。」


= 魂の一部が外れちゃったから人間にもなれず、あんな姿になったんだろうね。 =

= 君の時代にも、あっ、この時代にもいるけど、妖怪みたいな霊体と同じさ。 =

= 魂になっちゃえば、思いのままだからね。 =

= その人の魂の傾向性に合わせて形が決まっちゃうのさ。 =


「ア、アマミル先輩が妖怪になっていなくて良かった…。

妖怪みたいな性格何だけど…。」


= どっちにしてもイツキナって魂の一部は、みんなと走ることが出来て晴れて成仏ってわけさ。 =

= 魂の一部が成仏という変な感じっ! =


「それで持ち主のところに戻ったと…。」


= そだね、その魂は、彼女の足の一部だったんだから、歩けるわけないよ。 =

= だから、本体に戻った途端、歩けるようになったってわけさ~っ! =


「そんなに簡単に魂って切れてしまうのか…。」


= いやぁ、あの子達って、君は分かっていると思うけど、魂の器がおっきいからさ~。 =

= おっきすぎて、いつも大騒ぎっ! =

= そんなんだから、ちょっとぐらいポロっとしても大丈夫なんだよ。 =

= ポロっとしすぎて歩けなくなっちゃったけどさ、あははっ! =


「わ、分かりました…。ありがとうございました。」


= 君と一緒にいるぐらいだから、友達達も★6か★7ぐらいはあるって事 =


「ほ、★6?7?あぁ、★って、つまり魂の大きさ…?」


= しまった、バレちゃったっ!んじゃあねっ! =

= お風呂ありがとね~っ! =


アーカが消えると、ロウアは時間が戻るのを感じた。


「イツキナ先輩…、そういう理由だったのか…。」


ロウアは、アーカが教えてくれたことを思い出しながら、再度納得していたが、次の瞬間、仰天した。


「あわっ!あわっ!!泡だらけっ!!」


いつの間にか風呂中が泡だらけになっていたからだった。

この時代の石けんは小さな錠剤のような形をしていて、一粒で十分身体を洗えた。


アーカは時間が戻る前に、その石けんを大量に使って去って行ったのだった。

それが時間が戻ることで膨大に膨れて上がっていった。


(な、なんだよ、この泡はっ!)


これには、魂のロウアも焦った。


「アーカ様…、あれ程、石けんを沢山使わないでって言ったのに…。ブクブク…。」


(アーカ?あいつが来たのか?)


哀れロウアは泡だらけの風呂で、身動きが出来なくなった。

この後、あちこちにぶつかりながら風呂場を抜け出したが、出た頃には身体中がアザだらけになっていた。


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