開花
魂のロウアの再開をした後、部員達は、また各々会話を始めた。
そんな中、マフメノはロウアにお礼を言った。
「イ、イケ…ガミ、さっきはありがとね。」
「ううん。」
「…それにしても、君の魔法はすごいね。」
「そ、そうかな…。」
「僕も真似したら出来るの?」
「えっ!どうだろ…?」
コトダマは、ムー文明の言語であるナーカル語を使っていた。
ロウアは、ムーの人達なら普段から使っているか、誰でも出来るかもしれないと思った。
だけど、危険な力を手にするみんなのことを心配に思った。
「よ、よし、やってみるっ!」
「あぁ、ちょ、ちょっと…。」
ロウアの制止を聞かないまま、マフメノはロウアの腕の動きを真似てコトダマを空に切って、
「わ・き・へ・き・みるぅ!」
と唱えてみた。突然のコトダマに、他の部員達も注目したが何も起こらなかった。
「だ、駄目だね…。」
すると続いてアルも目を輝かせた。
「おぉ、私もやってみるっ!イケガミだけの必殺技だと思ったから考えてもみなかったぁっ!
わ・き・へ・き・みる!」
だが、マフメノと同じようにロウアの真似をしてみたが、やっぱり何も起こらなかった。
「やだやだやだ~っ!何でよぉ~っ!イケガミィのせいだぁ~~っ!」
「ぼ、僕が悪いの?むちゃくちゃだな…。」
「わ、私もイケガミ兄さんのようにやってみる、にゃっ!」
「ふえぇ、私もやってみようかな。」
「わ、私もぉっ!あうんっ!」
続いて、シアムも、ツクも、ホスヰもやってみたが、全く駄目だった。
みな一様にガッカリしているところ、
<<ワ・キ・ヘ・キ・ミル!>>
とシイリがやってみると、少しだけだったが魂のロウアがみんなにも見えた。
<なっ!こいつ以外にも出来る奴がいたっ!>
と魂のロウアの声が聞こえると、シイリは自分の姉の手を握って大喜びした。
「おぉ、やりましたっ!シイリお姉ちゃんっ!」
「す、すごいにゃっ!シイリッ!」
「ぶぅ~。なんか納得いかない…。」
シアムは妹の能力に驚きつつ一緒に喜んだが、アルは少し悔しがっていた。
「あっ、でもすぐに見えなくなっちゃった…。イケガミ兄さんみたいにはいきませんね。」
「…い、いや、ビックリなんだけど…。」
とロウアは唖然とした表情でシイリに言った。
「"ひぃっくり"?久々にロウア語出たよ、シアム。」
「ふふっ!驚いているって意味かなぁ~?」
アルとシアムがロウア語(21世紀の日本語)に笑っていると、アマミルも参戦してきた。
「部長の私も出来るに違いないわっ!」
一同はどういう理屈だと思った。
「わ・き・へ・き・みる!」
だが、やっぱり上手くいかなかった。
「…ちぇっ!
イツキナ、あんたもやってみなさいよ。」
「えぇ、別に良いわよ、私は。」
「なんでよ?」
「別にやらなくてもロウア君の本体が見えるもの。」
「はぁっ?!」
これにはロウアも驚いた。
「えっ!?イツキナ先輩、今なんて?!」
「さっきは驚いた振りしたけど、見えているわよ。君の本体。
あっ、本体って言ったから怒ってるっ!あははっ!」
「…な、なんと…?い、いつからですか?」
「う~ん、身体から離れた時からかなぁ?」
「なな…、僕が原因か…。ご、ごめんなさい…。」
「良いわよっ!変な人もたまにいるけど、楽しいからっ!
師匠とも話し出来るしねっ!!」
ロウア以外の部員達は、イツキナの言った"変な人"という言葉の意味を理解しかねた。
「あれって、成仏できない人?これだけ、天国はあるって教えてもらっているのに、バカな人達よねっ?」
その意味が不浄物霊と知ってロウアとシイリ以外の部員達は背筋が凍った。
「やだやだやだ~…、せ、先輩、怖いですよぉ~。」
「にゃにゃ…。」
「あうぅ…。」
「ふえぇ…。」
「あ、あれ?ごめんね。」
ロウアは、
「僕の時代よりは少ないから大丈夫だよ。」
とフォローしたつもりだったが、
「やだやだやだ~っ!
イケガミィ~~、多いとか少ないとか関係ないってばっ!怖いこと言うなぁ~~っ!!」
アルはロウアに憤慨した。
「…ご、ごめん。ロウア君も霊体なんだけどなぁ…。」
「アルちゃん、みんなもごめんね。てへっ!」
イツキナはテへ顔をした。
「はぁ、あんた変な力に目覚めたのね…。」
アマミルは友達に驚きつつそう言った。
「変な力ってっ!霊が見えるだけじゃ無いっ!」
「見えるだけって…。
と、とにかくやってみてよ。見えるなら出来るかもよ?」
「う~ん…。やってみるかぁ~っ!
こ、こんな感じぃ?」
イツキナは車椅子に座りながら腕空を切りながらコトダマを唱えてみた。
<<ワ・キ・ヘ・キ・ミル~~~ッ!>>
すると、
「なっ!」
アマミルが驚くと同時に、また魂のロウアがみんなにも見えるようになった。
「イ、イツキナ…のくせに…、やるじゃ無い…。」
「なによ、くせにってっ!魔法使いイツキナの誕生よっ!
こ、これって魔法少女?あははっ!すご~~いっ!
すごいよね?イケガミ君。」
「あぁ…。何だこれ…。シイリよりも長持ちしている…。」
ロウアは頭を抱えた。
「だ、だけど、あんまり使わないで下さいね…。
僕の兄さんみたいに調べたいという人がいますから…。」
ロウアの言葉を聞いて、アマミルは、
「そうね…。
イツキナ、私の許可無しで使ったら駄目よ。」
イツキナを制するように言った。
「いやよ、ベェ~ッ!あははっ!魔法少女は誰にも止められないのだ~っ!!」
イツキナはあっかんべえをしながら大笑いをしたのでアマミルは切れそうになった。
「ムカッ!少女って歳でも無いでしょっ!!」
「むむっ!年齢のこと言っちゃう?それ言っちゃうっ?!
でも、ほらっ!
霊界お助けロネント部らしくって良いじゃ無いっ!ねっ!」
「はぁ~…。」
「はぁ~…。」
アマミルとロウアはハモるようにため息をついた。
こんな感じでコトダマ能力者が三人になってしまった。
(霊能力と関係しているみたいだな。)
一部始終を見ていた魂のロウアは、そう言った。
(う~ん、シイリは、半分霊体みたな状態だからコトダマ使いやすいんだと思う。)
(なるほどな。)
(イツキナ先輩は、僕の時代で重要な役割を持っているぐらいだったから、元々霊能力は高かったんだと思う。
この時代でも光の強さが他の人と全然違ったし。寮で初めて先輩を見たとき驚いたよ。)
(それが、お前の魔法で開花したってか?)
(た、多分…。
あぁ…、もしかしてカウラさんも…?)
(お、兄貴もかっ!お前自信でもあるからなっ!)
(…使い方を気をつけよっと…。)
(でもさ、教えておいた方が、お前に付きまとわなくなって良いんじゃ無いか?)
ロウアは、カウラにコトダマを見せてから、家で会う度にしつこく調べさせろと言われていた。
(あっ、お前の専売特許じゃなくなるか?ケケケッ!)
(…それは良いんだけどさ…。はぁ~、やれやれ…。)
ロウアは、イツキナとシイリがコトダマを使えるようになったのは良いけど、変な事に巻き込まれないか不安になった。




