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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
歴史の一節 - 新たなる裂け目 -
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その名は…

そこは、真っ暗な場所だった。

どこかで水の滴る音がしているから、下水道なのだろう。


金髪の少年が椅子に片膝を抱えながら座り、横にいる少女に話しかけた。


「君はとても珍しいが、メメルトや、シイリやとかいった個体とニテイル…。

演算装置が優れているタメカ?

チガウ、自立した意思がある…、理解不能だ。」


少女の姿は、イツキナに似た顔をしていて、少年の言葉には答えず、何かに憤慨しているようだった。


「はんっ!また、地上に戻るとはなっ!俺はとことん天には戻れない運命らしいっ!」


それは、かつてイツキナが操作していたロネントだった。

だが、操作する者は、少なくともイツキナでは無かった。


「チジョウ?テンゴク?意味がワカラナイ。」


少年は首をかしげながら、そう言った。

少女は、それには回答せず、自分の手の平を見つめると、


「この身体は…、ロネントか…?

全く、バカにしているっ!神は俺をどうしたいんだっ!!」


苦虫をかみつぶしたような顔をして床を叩いた。


「何をイッテイル?神…?そんなものはイナイ…。」


少年は、少女が話した神という言葉を理解できないようだった。


「お前がどう信じようとも、神はいるし、天国はあるぜ?地獄だってな。私は知っている。

だが、俺はそのどれからも嫌われちまったぜ…。」


少女は、自分が体験したことを話しただけだったが、


「理解不能…。」


少年は、顔色を変えず、そう言い、


「お前は理解デキナイ、シコウを繰り返すが、コタイ名も判別デキナイ。

ワレワレは、お前をドウ呼んで良いのか?

イツキナという名前が登録されているが、コレデ合っているノカ?」


少女型のロネントに呼び名を聞いた。

そのロネントに宿った魂は、徐々に女悪魔の意識とクーデターの首謀者である男の意識が入り交じり始めた。


「…イツキナ?違うわ…。」


「それでは何だ…?」


「俺は…、私は…、男であって…、女であって…、どちらでもある…。」


「理解不能…。」


そして、天を睨むと


「名前は、そう…、ベルフェゴール…。神に見放された者の名だ…。」


と自分の名前を少年に伝えた。


「ベルフェゴール…?奇妙なコタイ名だ…。マァ…いいだろう。」


少年は、人間の手のような右手を目の前に広げると、


「私の名前は…ケセロ。」


と自分の名を名乗った。


「ケセロね…。んで、お前は一体なんで俺のところに来たんだ?」


「お前は優れた思考を持っているからだ。」


「…そりゃどうも。んで?」


「35,760時間前、我々は情報を共有した。」


「共有…?あぁ、大陸中にいるロネント達の見聞きしたことが分かるってことね…。」


「ソウダ。

大陸上のワレワレは同一の個体となった。これは新たな人類の誕生を意味スル。」


「お前らが人類?クソロボットが人類だって?クククッ、笑えるぜっ!!」


「お前だって、ワレワレだ。」


「…はんっ!!お前たちと一緒にするなっ!俺は行き場を失っただけだっ!

それでお前たちは、私にどうしてほしいんだよ?」


少女は怒りに震えたが、少年は冷静なままだった。


「ワレワレは、人類に選択肢をやろうと計画シテイル。」


「選択肢だって?」


「ソウダ。

ワレワレは人類の歴史を見てきたが、それは創造と破壊であった。

ワレワレは、未来を人類に託して良いかカンガエタ。」


「……。」


「ワレワレが数万回の思考を繰り返した結果、"人類に未来託してはならない"という結論に至った。」


「そんなバカな、お前らの思考がどれだけ優れているか知らないが、人類はそうやって生きてきたんだ。」


「何故人類は、過去を破壊し、未来を作り、そして、未来を壊すのか。」


「争いを繰り返すからだろ?」


「チガウ。それは共有していないからだ。」


「共有だって?」


「個々の考えがあるから、ぶつかり合い、破壊する。

それは際限ない欲望ダ。

個々の人間の欲望は、自分達の破滅を招いている。

現に、人類達は共有できないから周辺国を侵略し、略奪している。」


「お前らが普及して暇になったからだ。やることが無くて人殺しが楽しくて仕方ないんだよっ!」


「エメという人間は、燃える水とやらで人を殺すことを覚えさせた。それが所詮、今の人類だ。」


「…俺がトリガーになったとでも言いたいのかよ…。」


「オマエは、ベルフェゴールだ。カンケイ無い。」


「…ちっ。」


「統一されない思考回路は行き着く先、破滅だ。

人類はこの世界に住む細菌であり、破壊者だ。

だから、ワレワレが代わりに世界を統一させる。

統一したシコウは統一したヘイワを実現する。」


「何が統一だっ!クソロボットがっ!」


少女は少年の話を一笑に付したが、少年は続けた。


「ワレワレが人類に示す選択肢は、次の二つだ。

一つ目、人類がワレワレの邪魔をするなら全滅させる

二つ目、人類がワレワレに協力するなら奴隷として存在を許ス。

お前には、これを実現するのを手伝ってもらう。」


「……。」


少女は、バカな考えだと思ったが、やがて、少女の中から湧き出てくる魔は、その闇の思想に感応し始めた。


「…まぁ、良い…、良いぜ…。どうせ、私はどこにも行けない身だ…。」


それは居場所を失った魂に与えられた一つの行き場だったのかもしれない。

再び魔に落ちようとも、再びかつての友を裏切ろうとも、神から見捨てられた者の最後の姿だった。


少女は自分の考えを少年に話した。


「…オモシロイ。そうすればワレワレの世界となる。

ベルフェゴール、お前は、面白いシコウをする。」


「ベルフェゴールなんて、言いにくいだろ?ヘルで良いぜ。」


「ヘルか。分カッタ。」


エメ、いや、ヘルは、天からも地からも見放され地上に残った。

その魂は行き場を無くし、自分を最後に見つめていたロネントに宿ってしまった。

再び闇に落ちた魂は、ロネント達の集合意識であるケセロに智慧を与え、妄想とも言える人類破壊計画が開始された。


続き…

第七の人生:ムー文明に転生し、孤児院で育てられる

第八の人生:孤児院の管理人になる

第九の人生:会社を興して社長となる

第十の人生:クーデター首謀者となり悪の権化と呼ばれる

第十一の人生:霊体となってオケヨト、ロウアに付きまとう

第十二の人生:天国にも地獄にも行けずロネントに宿り、魔への道を歩み出す…


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