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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
その発展は誰がためか
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その始まり

文化が成熟すれば、季節を数えるための暦も発達する。

"年が切り替わる事"は人々の意識を変える機会でもある。

現在だろうが、数万年前だろうが、変わらない人類に染みついた風習だろう。

同じように、ムー文明の暦にある年末年始は、"ムー"と呼ばれ、年末の二日間、年始の三日間の合計五日間を指した。


やがて、ムー大陸の年末最後の夜も更け、年始になると、ツナク上では、年明けを祝う番組が賑わい、それぞれの家庭では年始らしい食事が振る舞われ、各地の建造された神殿には初詣のために人々が集まって幸福を願った。


ムー大陸の中心地にある巨大神殿も年始のため人々が異常なほど集まっていた。

神殿中心地の三階~十二階はくり抜かれていて、その中心に巨大なラ・ムーの像が建てられていて、その周りを十二の神官達の像が囲んでいる。

国民達は、この像に初詣に集まるのだった。

そして、早朝になると女王が現れ、国民達に年初の挨拶をする予定になっている。

この女王は、毎年、巨大なホログラフとして、ラ・ムー像の前に現れるのだった。


女王の声を聞くとその一年は、幸福に包まれるという評判もあり、こんな時間からでも、ごった替えするぐらいの人々が集まる。

そして、女王の挨拶を聞くための場所を取った人々は、神殿周辺の出店で我々の時代にもあるようなアルコールの入った飲料を購入し、気ままに女王の登場を待ち、互いに新年を祝っていた。

ちなみにラ・ムー信仰では酒などのアルコール飲料には寛容である。


-----


浮かれた国民達を横目にエメ商会の作業着を着た怪しげな青年達も、ムー大陸の中心にそびえ立つ神殿に集まっていた。

エメ達は、この人々が浮き上がっている年始の二時間を狙った。


年始ということもあり、警備が薄いことを予め調べてあった。

警備員達が、毎年、酒を飲んで完全に浮かれるためだった。

今年はエメ商会からも警備員達に大量の酒を差し入れてあって、さらに彼らを油断させている。


エメ達の部隊は大きく二つに分かれて行動する計画だった。

一方は、警備室を押さえる部隊だった。


裏部隊が神官に賄賂を渡して入手した神殿の設計図を各々が持ち、計画を改めて確認すると、まずは、警備室襲撃部隊が動き出した。

この部隊数は、リーダー四名、その部下、二十名の合計二十四名で、その手には大量の酒を持っていた。

やがて、神殿中心部にある巨大な柱の最下層にある警備室に到着した。


「ヒック…。うふぁ~~、ん??どうした~~?」


警備室の入口には完全に酔っ払っている警備員が、エメ商会の名札を付けた作業着を着ている青年達を迎えた。


「明けましておめでとうございます。

本日は弊社のお酒を召し上がって頂きありがとうございます。」


この部隊のリーダである、サフはしれっと言った。


「うぅぅ、あぁ~~、あけ、あけ、明けた~~~っ!!

んん、、そうか、お前たちかぁ~~、酒を献上してくれたってのわ~~っ!」


「はい、昨年は神官様達にも随分お世話になりましたので。」


「良いぃぃ、心がけだぁぁぁぁ。良い心がけぇぇぇ。」


「ありがとうございます。それで追加のをお酒を持って参りました。

是非、追加で召し上がって頂きたく。」


「おぉぉぉっ!!」


「アトランティスで作成されました大吟醸の酒でございます。」


「良いぞぉぉっ!良いぞぉぉぉっ!!入れ、入れぇぇぇ。

れ、れれ??ナンか人が多い気もするがぁ。良いかぁ。」


酒臭い息を吐き出しながら受付の警備員は、エメ商会の闇部隊を疑いもせず受け入れた。

サフ達は、互いに顔を見合わせニヤリと笑うと、酒樽に隠した拳銃が、何かに反射してキラリと光った。


-----


神殿の外で待機していたエメ達の別同部隊は、警備室襲撃部隊の結果を待っていた。

すると、神殿の外にある明かりの一つが点滅を始めた。

それは警備室を制圧した部隊が照明の一部を点滅させることで出した合図だった。


すでに警備室襲撃部隊は、警備員達をサプレッサー付きの拳銃で五十名近い警備員達をすでに殺害した後だった。

警備員達を一箇所に集めると、サフは、神殿の外型にある照明のスイッチを見つけ、合図を送った。


"---"

"-・-"


"---"

"-・-"


"---"

"-・-"



エメ達はその合図を見逃さなかった。


「"OK"か。よしっ!上手くやってくれたっ!」


「エメ、おーけーってなんだよ?」


タキンがアルファベットが意味が分からず、エメに聞いた。


「上手くいったって意味だ。」


「反対は、エヌジーだっけか?

こんな言葉を覚えさせやがって。面倒な奴だな。」


「ツナクが使えない以上、しょうが無いだろ。」


エメがタキン達に教えたのは、來帆だった頃に覚えたモールス信号だった。

ツナクで連絡を取り合うと情報が漏れるため仕方なく使った連絡手段だった。


「それに、お前、こんな言葉いつ覚えたんだよ。」


「ふっ!お前らとはここの"でき"が違うんだよ。」


とエメは自分の頭を指差しながら偉そうに言ったのでタキンは少し腹が立った。


「んだよ、偉そうに。」


「ははっ!まあ、行こうぜ。良いか?」


タキン達は、エメの真剣な目を確認し、うんと頷くと気を引き締めた。

もう一つの部隊、ムー女王襲撃部隊が動き出した。


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