仲間の守り方
エメ商会で従業員を募集するとすぐに人は集まった。
仕事の内容はとても簡単だったので、従業員達はすぐに仕事を覚えて仕事は順調に回り始めた。
だが、リーダーが子どもだったので、舐めてかかる従業員も多く、リーダーの子どもの心理的不安も高くなっていた。
エメは子どもがノイローゼになってしまうのを防ぐため、リーダー達の訴えがあったら、その従業員のくびをさっさと切ってしまった。
とある従業員にすれ違ったオケヨトは、その目が憎しみに満ちているが分かってぞっとした。
「エメ、あの人にすごく睨まれたんだけど…。」
「あぁ、さっきくびにしてやったからな。
あいつは全然言うことを聞かないって訴えがあったんだ。」
「そ、それでか…。」
このお陰で従順な従業員も増えたが、不満を抱えたまま退職に追い込まれた"元"従業員は、エメ達から奪ったノウハウを使って別の場所で同じような業務を始めた。
「彼奴らっ!真似しやがってっ!!なんでこの国は特許が無いんだよっ!」
「トッキョ?」
とオケヨトは聞いたものの、特許という言葉は、エメの前の世界の言葉と理解した。
もちろん、意味は分からなかった。
「発明者の権利を守る法律だって。」
「そんな法律はないよ…。商売は国民に任せられているから。」
「はんっ!!国民の利益を守るのが国じゃないのかっ!
国が守ってくれないなら、俺達で対処するしか無いっ!
このままじゃすまさないっ!」
「エ、エメ…?何をしようとしているんだい…。」
オケヨトはエメの目が不気味に光ったように見えて不安になった。
その不安は的中した。
ある日、エメは年長者を数名連れて、同業者の油田に火を付けてしまった。
翌日、オケヨトはツナク上のニュースでそれを見て、すぐにエメを疑った。
(ま、まさか…、この事件はエメ…?
いや、いやいや、まさか、こんな酷いことするわけがない…。)
だが、否定しても心に何かが引っかかってしまっていた。
部屋が分かれたため、夜になるとエメの行動が全く分からなくなっていのだが、エメが、昨日、遅い時間に年長組の子ども達と孤児院に戻ってきたのは分かっていた。
オケヨトが不安な気持ちのまま朝食に向かうと、廊下でエメがオケヨトを見つけてやって来た。
「おう、おはよ。どした?何か顔色が悪いぞ。」
「…夕べは遅かったみたいだけど、何かあったのかい…?」
オケヨトは恐る恐る聞いた。
「な、何も無いって…。そう、そう、少し外で年長組と飯を食っただけだって…。」
「そ、そうかい…。」
「き、気づいていたのね…じゃなくて、いたんだな。
さ、誘わなくて申し訳なかったな。」
「それは良いんだけど…。こ、このニュースだけど…。」
と、オケヨトは同業者の原油工場が火事になった記事をエメに震えながら見せた。
「……。」
オケヨトはエメは目をそらしたのを見逃さなかった。
嘘をついて焦っているから、女性言葉になってしまったのにも気づいた。
「エ、エメッ?ま、まさか、君がやったわけじゃないよね?」
「…んなわけないだろ。お前、俺を疑うのかよっ!!ふざけんなよっ!」
オケヨトは、いつもよりも余計にムキになったのでエメがやったのだと確信した。
幼少からいつも一緒にいたのでエメの考えはお見通しだった。
「き、君は…。やり過ぎだよ…。」
「ちっ、警察に言うなよ…。」
エメは結局、自分から認めてしまった。
「こんなこと、タ・ナレミが聞いたら何て言うと思っているんだよ…。」
「…うるさい。」
「えっ?」
「うるさいって言っているんだっ!!!
俺がここを仕切っているんだっ!
全部俺の責任なんだっ!
お前たちの明日の飯から、小便や、風呂や、寝る場所から、何から何までなっ!」
「…エメ、分かっているよ…。分かっているって。
だから僕は君に協力しているんじゃないか…。だけど…。」
「分かってるなら俺のやり方に口出しするなっ!」
「だけど、こんなやり方…。ラ・ムー様も、タ・ナレミも許して下さらない…。」
「まだ、言うの…か…。」
エメは、オケヨトを殴る勢いでいたが、オケヨトが涙を流していたので、それ以上言えなくなってしまった。
「…俺は…、俺は…、ここの責任者なんだ…。」
エメは、そう一言言うと、朝食を取らずに自室に戻っていった。
子ども達は何があったのかと怖がっていたが、女性の年長組が守ってあげるように食事部屋に誘導していった。
廊下に取り残されたオケヨトは、友のやり方が許せず、涙を流し続けた。
「エメ…。」




