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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
その発展は誰がためか
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黒い水

孤児院で植物を育て始めて、しばらくしてから子ども達から変な報告が、エメとオケヨトに上がった。

水を与えているが、植物が枯れてしまうというものだった。


「お前たちが小便しているからじゃないのか?」


「違うよぉっ!」

「ち、違う場所だもん。」

「私はやらないもんっ!」


報告に来た三人の子どもは、一斉に否定した。


「違うのか。てか、外で小便するなよ…。」


「エメ、見てきてあげてよ。」


オケヨトは子どもについて行って欲しいとお願いした。


「了解。なんだろなぁ。」


「う~ん、僕も分からないなぁ…。」


エメは子ども達に引っ張られるように植物が枯れてしまっているという場所に到着した。


「あぁ、確かに枯れているな…。しかしなんだこの土は、真っ黒じゃ無いか。

ん、このバケツはなんだ?」


エメ達がいる小さな畑の横には、バケツが置いてあって、真っ黒な水が入っていた。

その水は、鼻をつくような臭いがした。


「何だこれ…?臭いな…。だけど、どこかで嗅いだことがある臭い…?

お前らこの水を植物にあげたのか?」


「うん、そうだよぉ。」

「真っ黒な水だから元気になると思ったのぉ。」

「エメェ、このお水が原因なのぉ?」


「真っ黒だとなんで元気になるんだよ…。てか、呼び捨ては止めろって言ってるだろ…。

まあ、良いか。おい、これ(水)をどこから入れて来たんだ?」


とエメは子ども達に聞くと、


「あそこだよ~。」

「あそこのお池だよ~、エメェェ。」

「エメェ、元気になる水じゃないの?」


子ども達は一斉に近くの小池を指差した。


「さん付けで呼べって…、う、うん?」


完全にエメのことを舐めきっている子ども達が、指差した小さな池は、真っ黒な水だった。


「何だ…。この水は…。酷い臭いだな…。こんなのを植物にあげるとか正気か?全く…。」


エメは水を人差し指ですくい上げ、ドロドロになっているのを確認し、臭いも嗅いだ。


「なんだこりゃ…。しかし、この臭い…。」


その臭いをエメは嗅いだことがあった。だがそれは"エメの時代"では無かった。


「あぁ、思い出した…。」


エメは、この黒い水の臭いが、石河來帆だった頃に嗅いだことのあるアスファルトが生焼けの臭いだと思い出した。


「も、もしかして、この黒い水…。そうか、そうかっ!」


「どうしたのエメェ。」


「お前ら、ここで絶対に火を使うなっ!!みんなにも知らせるんだ。これは絶対だぞ。」


「火ぃ?」

「なんでぇ?」

「火なんて使わないよぉ。」


「そうだ、ここで使ったら大爆発を起こしてみんな死んじゃうぞっ!」


「ふぇ~~っ!」

「わぁ~~っ!!」

「怖いよぉ~…。」


「それと、ここの水は植物にやるな。死んでしまうから可哀想だろ?」


「うん、わかったぁ。」

「うん…。」

「葉っぱが死んじゃうのやだぁ~~っ!」


エメは大喜びでオケヨトの元に戻った。


「やったぞ、オケヨトッ!」


「どうしたんだい?エメ…。変な水はどうなったんだい?」


オケヨトは何時になく喜んでいるエメを見ていぶかしがった。


「んなことはどうでも良いんだってっ!」


「なんだよ、どうでもいいって。大事な植物なんだよ?」


「違うって、植物以上のかねの種を見つけたんだってっ!

ん?今、俺って微妙に、上手いことを言った?」


「えぇ?!」


「これは行けるかもしれないっ!すごい発見だぜっ!!」


オケヨトはエメが喜んでいる意味が理解できずにいたが、不気味に目が光ったような気がして一瞬、ゾクッとした。


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