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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
その発展は誰がためか
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慈愛部 週間課題共有会議

首都にある神官組織の職員が通勤している神殿の42階では、慈愛部の課長以上が集まって、週間で実施されている課題共有会議が開かれていた。


「今日の会議だが、何か課題はあるかな。課題だらけだろうが…。」


議長となっている部長のトスントゥの軽い冗談で会議室は和んだが、課長達は一様に課題を抱えていた。

そのほとんどは、ロネント神官の派遣で困った孤児院からの訴えだった。


「あのロネントの目的は何なのですか?」


課長の一人は目の前にある水を飲み干すと、トスントゥに訴えるように聞いた。


「孤児院でも管理できるロネントの育成だと言われている…。」


と言いながらもトスントゥは、膨れ上がっている神官を減らすのが目的だろうと読んでいた。


神官組織に所属する神官達は、巨大な官僚組織だった。

つまり、これは、現在私たちの世界で言うところの大きな政府と同じだった

膨れ上がった神官は、数万人規模になりつつあり、その給料も問題となりつつあった。

このため、学習能力の優れたAIを搭載したロネントを流用して"末端"の神官達を減らそうとしていると、トスントゥは考えていた。

だが、こんな事をみんなに説明しても不安にさせるだけだった。


「ですが、我々への苦情も増えつつあって、対応に困っています…。」

「首切りにあった元神官達からも訴えられていますし…。」


「この件は、我々ではどうにも出来ない…。すまない。」


トスントゥは皆の訴えに答えきれず、制するのが精一杯だった。


そして、トウミは


「タ・トスントゥ…、食糧事情も大きな問題です…。」


とエメ達の訴えを報告した。


「私が担当している孤児院の神官タ・ナレミが亡くなってから、子ども達が二倍に膨れています。」


「……。」


トスントゥもナレミの葬儀に参列していたので、トウミの言った孤児院については分かっているつもりだった。

孤児院を回っていたミミという快活な猫族の神官は、現在も精神的な問題で入院したままだった。


「明日の食事にも窮している状態だとか。我々も何か手を打たないと子ども達が…。」


トウミがさらに付け加えると、トスントゥは、


「あんなロネントじゃ運営できるわけが無い…。」


食事についてでは無く、神官ロネントについて愚痴るようにつぶやいた。

言うまでも無く、他の課長達も膨れ上がる孤児院の子ども達が食事に窮しているのを聞いていた。


「この件は、経済部に予算の相談をしてくるよ。やれやれ、また小言を言わそうだ…。

科学部にも文句を言わないと気が済まないな。

あの部署は儲かっているようだから少し予算を出してもらうしかないな。」


「はい、すいませんが、よろしくお願いいたします。」


課長達は、慈愛部最高責任者トスントゥの調整能力に期待した。


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