子ども達の訴え
食事は貧窮を極め、幼い子ども達は食事の時間になるともっと食べ物が欲しいと騒ぎ立てるようになった。
「オケヨト兄ちゃ~ん!お腹空いたぁ…。」
「もっと食べたいよぉ~っ!」
「え~っ、これっぽっちぃぃ?」
お腹を空かした子ども達をオケヨトと年長組がいつものように慰めた。
そこへ、
「オボッチャン達、もっと食べたいって言ってるヨ。」
とロネントが念を押すように言ったのでエメはムッとした。
ロネントはそれなりに学習したのか、蹴られる前にエメに釘を刺した。
「ケラないでヨッ、エメ様。」
だが、それがお腹を空かしたエメをさらに怒らせた。
「(ブチッ)あぁっ!!」
結局、エメはロネントを蹴り飛ばした。
「ナニスルンダヨッ!」
オケヨトはそれを見て、またかとため息をついた。
「エメ、壊れちゃうよ…。それとブチって変な音が鳴ったよ…。」
「知るかっ!こいつの声を聞くと腹が立つんだよっ!」
ロネントは体制を立て直すと、定型文を使った、いつもとは異なる丁寧な口調でエメに訴えた。
"ロネントを大事にしましょう。"
「(ブチッ)あぁっ!!たまに丁寧な声になりやがって、さらにムカつくっ!」
「エメ…、まぁまぁ…。」
オケヨトがエメの怒りを慰めた。
「だけど、食べ物…、どうしよう…。」
オケヨトもお腹は空いていたが、お金が無い状態では食事を買うことも出来なかった。
「慈愛部にでも行って訴えてきてやるっ!
彼奴らのせいでこうなったんだからなっ!」
「そうするのがイイヨッ!」
ロネントはエメの意見にそれっぽく応答したが、もちろん、エメはぶち切れた。
「(ブチブチッ)お前が言うなっ!クソロボットがぁぁぁぁっ!」
「アァ~~…。」
今度は勢いを付けて蹴ったので思いっ切りすっ飛んでいった。
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翌日、早速エメとオケヨトは、慈愛部本部を訪れてトウミを呼び出し、食事だけは何とかしてもらえないかと懇願した。
「お前らのせいでこうなったんだからなっ!俺達が死んだら恨んでやるっ!」
だが、それは、懇願とは言えないような脅しのようなものだった。
オケヨトは、今度ばかりは、エメを咎めなかった。
トウミは困り顔で、何とかするしか無いと思ったようだった。
「…参ったな。でも、こちらも申し訳ないという気持ちはあるんだ。さすがにどうにかするよ…。」
「あ、ありがとうございます。」
オケヨトはエメの代わりにお礼を言ったが、エメはトウミの言葉が、曖昧に応えただけのように聞こえた。
「信頼できないっ!曖昧なことを言って逃げるだけだろっ!
お役所仕事をしたら許さないぞっ!絶対に証明しろよっ!
もし何にもしなかったらツナクで今の言葉を拡散してやるっ!」
「エ、エメッ!言い過ぎだってっ!」
「はぁ~、分かったって…。君は強い子だなぁ…。
来週の次の"あ"曜日には、必ず答えを出すよ…。」
トウミはビジネスのように期限をしっかりと伝えた。
そして、さすがに子ども達が死んでしまっては困ると思い、真剣に慈愛部で検討した。




