三十路?
ナレミがあの世に旅立ってから、数ヶ月が経過していたが、代理となる神官は派遣されることもなく、残された子ども達は途方に暮れていた。
今日は、エメとオケヨトでこれからどうやって孤児院を運営していこうかという会議を開いていたが、エメは、開始早々からイライラしていた。
「…何で俺達は、ほっとかれているんだよっ!!」
エメは、慈愛部から放置されたままの状態に腹を立てていた。
「タ・ミミももうすぐ決まるはずって言ってたから、もう少し待ってみようよ…。」
オケヨトはそれを慰めるのだが、本当に派遣されてくるのかどうか分からなかった。
「待つって、いつまでだよっ!!」
「それは…。」
「慈愛部は、俺達を飢え死にさせる気かっ!!」
「エ、エメ…、怒らないで…。」
オケヨトは、答えを持っているわけも無く困るだけだった。
「…わ、悪かった…。」
エメは自分の苛立ちをどこに向けて良いか分からなくなっていた。
こんな状態だったので、ナレミの仕事をエメとオケヨトで管理せざるを得ず、話し合ってみようとなったのだった。
エメが孤児院に来た当初、子どもは、十数名だったが、今では40人にも及んでいた。
増え続ける子ども達をナレミ一人で面倒を見る事が出来るはずも無く、過労となり、死へと至ってしまった。
エメは、一人で孤児院を運営するのは問題があると思った。
だから、年齢によって孤児院を三段階ぐらいに分けて、それぞれ仕事を持たせるのが良いのでは無いかと考えていた。
「こんな感じで管理しようかと思うんだけどさ。」
エメが、オケヨトに見せた紙には、シンプルな組織構造が書いてあった。
年長組:16歳から20歳:13名:年少組、幼年組の面倒や教育、孤児院の掃除、食事を作る。
年少組:6歳から15歳: 18名:年長組の手伝いと幼年組の面倒を見る
幼年組:0歳から5歳: 9名 :基本的に仕事は無い。
※ 引き続き、21歳になる年の年末に卒業とする。
「この組織を管轄するリーダーは俺がやるよ。予算管理や運営に関わる管理は、オケヨトと俺でやろう。」
「うん、良いと思うよ。」
オケヨトも賛成してくれたので、エメも安心した。
「それから、掃除とか、食事とか、細かいところは、年長組からリーダーを3名選出して、決めさせよう。」
「……。」
「ん?どうした?何か問題でもある?」
「いや、君って本当に僕と同じ16歳なのかと思って…。こんな事、決められるなんてすごいね…。」
「記憶が無いから同じ歳じゃ無いかもよっ!」
ととっさに言ったが、ふと自分を振り返ると、
(ま、待ってよ…、私って16歳で入院して、6年後に目が覚めたのよね…。
それから、殺されてしまって、地獄で何年か生活していたでしょ…。
地獄の生活は、実際には数日のことだったのが不思議だったけど、5年ぐらいは経過していたはず…。
それと、ここで、すでに3年生活したから、…もしかして、私って、30歳ぐらいなのかしら…。)
そう思うと、ガクッと肩が落ちた。
「エメ、大丈夫?ごめん、僕、酷いこと言った?」
「い、いや…。
それよりも、予算が厳しすぎる…。
…年少組にあたる奴らの食事を減らすか…。」
エメは、誤魔化すように予算の話をした。
「い、いやいや…、子ども達は成長期だから駄目だよ…。」
「だけど、16歳以上の食事は、この前減らしたばかりだろ…?」
「うん…。」
「仕方ないから、年長組の18歳から上の食事を減らすか…。」
孤児院は、常にこんなギリギリの調整で暮らすしか無かった。
「……。」
オケヨトは、食事を減らされる者のことを思うと何も言えなくなってしまった。
「俺から話すよ…。」
「う、うん…、ありがとう…。」
エメはリーダーらしく、自分が説明する事にした。
「あっ!」
「おっ?!」
そんな話をしていたところ、オケヨトとエメのツナクにミミから連絡が入った。
「エメッ!タ・ミミから連絡だっ!」
「遂に、神官が決まった…のか…、って、あれ?」
だが、腕時計型のツナクには、こんなメッセージが表示されていた。
┌───────────────────┐
│「や」曜日のお昼ぐらいに行きます。 │
└───────────────────┘
「って、これだけか。随分だな…。」
「で、でも、何か情報を持って来てくれるかもよ。楽しみにしておこうよ。」
「……。」
「エメ?」
「…あ、あぁ、そうだな。」
だが、エメは、そのシンプルなメッセージに違和感を感じていた。




