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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
転生 -いにしえの大陸 ムー-
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ムー文明の暦

 入り口には下駄箱が存在せず、靴のまま校内に入ったので少し違和感があった。


(上履きは要らないのかな)


 靴で校内を歩くにもかかわらず、廊下が綺麗なのは、掃除用のロネントが、昼夜問わず掃除していたためだった。


(こんなところにもロボット、あ、ロネントか、掃除しているんだな)


(ろぼっとってお前の時代では呼ぶのか?あれは清掃用ロネントだぜ)


 ロウアは、ロネントについて、もう少し聞きたかったがで聞くことにした。


 学校も大きいだけあって、廊下もとても広かった。

 自分が通った大学の二倍ぐらいの広さだった。


<さっ、二階に行こっ>


 アル達の案内で、二階に昇る。


(おい、お前さ……)


(お前って、そうか自己紹介がまだだったね。

僕は池上良信という名前なんだ。

池上で良いよ)


(うん?名前が二つに分かれてるの?)


(名字と名前で分かれている。

名字は家族で同じなんだ)


(へー、なるほどな。

俺達は名前しかないからな)


(そうみたいだね)


(んで、いけがみだっけ?説明してやるとさ……)


 魂のロウアが学校について教えてくれた。


 学校は年齢毎にフロアが決まっている。

 つまり、一階は、5歳から10歳、二階は11歳から15歳、三階は16歳から20歳、四階は21歳から25歳といった具合だった。


(5歳から学校に通っているのか)


 しかも、小学校、中学校という区分けはなく、全て"学校"というくくりしかなかった。


 正式では無いが、大雑把に、一階なら一階生、二階なら二階生と言う言い方をすることはあるようだった。

 そして、年齢が上に行けば行くほど、専門性は高くなっていく。

 その適性は、三階生の時に決まるということだった。


 この学校には飛び級制もあり、年齢の区分けもあくまで大まかな区分けということになる。

 つまり、学力がついていけない人間は、留年もあり得るということだった。


(自慢じゃ無いけど、俺は頭が良いからさ。四階生なわけ。お前頑張れよなっ!)


(えっ?そうなのか……。はぁ……。大丈夫かな……)


 言葉が通じないロウアは、不安だらけだった。


<ほら、ここが私の教室っ!>


 アルが自分の教室を教えてくれた。

 机と椅子があり、教卓があるのは、同じだった。


<ほら、座って、こうすると……>


 アルが席に自分の席と思われる場所に座ると、画面が表示される。

 この画面も空中に画像が浮かんでいる。


(はぁ、すごいっ!)


 画面には、教科書らしきものが映っている。


<んでね。こうやってメモするの>


 よく見ると机自体が手書きできる電子デバイスになっている。

 机の横にはペンが装着しており、それでメモを取れる仕組みだった。

 手書きメモの情報は、ツナクトノに記憶されるため、ノートを持ち歩く必要も無い。

 教科書もツナクトノに保存されているようだった。


(これは便利だな。目は疲れないのかな)


(目が疲れる?そんなことは無いぜ?大体視力なんて、すぐ戻せるしな)


(あぁ、この時代は再生技術が優れているんだった)


(ツナクトノについては、昨日、二人から聞いていたよな)


 昨日、アルとシアムが説明してくれたツナクトノは、あらゆる情報を保存でき、容量は無制限であり、情報はセンターと自動的に同期されているということだった。

 そのネットワークはツナクという名前だった。


 この腕時計型のデバイス装置は、あらゆる情報を保存していて、個人を特定するのにも使われている。

 紙幣を使ったやり取りもなく、金銭も全てこのデバイスで管理されていた。


(これを無くすと、かなりやばいんだよね……)


(ああ、だから、俺は、右手に埋め込んでいた。

ツナクトノは、身体に埋め込む奴も多くいるんだ。

それが嫌な奴は腕に巻いているってわけだ。

お前は事故でなくなっちまったけどな)


 ロウアは自分の無くした右手を思い出した。


(まあ、ツナクトノの情報は、集中管理しているから遺伝子さえ分かれば問題無い。

遺伝子は赤ん坊の頃に登録するんだ。

だけど、お前が入ったことで何か知らんが認識しなくなったって医者が話していたな。

遺伝子以外でも個人情報を認識しているのかもしれん。

神官達は何かを隠しているということか……)


(なるほど……)


 アルがまた話し始めた。


<少しは思い出したかなぁ>


 ロウアは首を横に振らざるを得なかった。


(俺がいるから、うなずいてりゃ良いのにさ)


(嘘はつけないよ……)


(正直な奴だな)


<次にロウアの教室に行こうっ!>


 ロウアは、アルの案内のまま三階に移動した。


<あっ、勉強している教室がある……>


<あれ、もしかして、今日、登校日……?>


<えっ、そういえば、知らないな……>


<えっと……>


 そう言うと、シアムは手元のデバイスで調べ始めた。


<だ、大丈夫、今日じゃ無いよ。今日は7日日(ななにちび)だ>


<あ、危ない……。こんな事も面倒見ないとか>


<そうだね。気をつけよう>


「あり・がと」


<もう、早く思い出してよねっ!>


(この二人は面倒見が良いが、母親みたいなんだよな……。ま、ありがたいけどさ)


(うん。良い友達だね)


(まあな。そうか、登校日か。忘れてたぜ。俺も覚えておかないと……)


(今は夏休みなんだよね?)


(そうだな)


(それは一緒なんだけど……。一学期、二学期とかあるの?)


(そうか……、暦も分からないよな)


 魂のロウアは、池上が何を知らないのかすぐに察してくれた。


(まず暦だけどさ……)


 魂のロウアが説明するには、ムー文明は、一年を365日として、30日間を12ヶ月で計算している。

 残りの5日間は、「年末日」として休日扱いにしていた。

 数年に一回は閏年があるようで、暦の計算が21世紀と余り変わらないことにロウアは驚いた。


(閏年があるのか……。さすがだなぁ)


(うるうどしっているのか?微調整する年がお前の時代にもあるんだな)


 ただ、一週間が10日間となってる点が異なっている。

 曜日は、ナーガル語の一部で出来ていた。


 あ→か→は→な→ま→た→ら→さ→や→わ→あ→……


 それぞれ、「あ」曜日、「か」曜日……のように呼ばれていた。


 社会全体で一週間のうち、週末にあたる二日間の「や」曜日、「わ」曜日は休みになっていた。


 月の名前は数字では無く、意味をもった名前になっていた。

 ラ・ムーとその12人の使徒の名前だった。

 初めは、「ラ」がついていたが、そのうち省略されるようになったようだ。


年始:ムー

1月:ヒトツ

2月:フムロ

3月:ミクヨ

4月:ヨミ

5月:イスタ

6月:ムロ

7月:ナクロ

8月:ヤヒ

9月:コル

10月:トランクト

11月:アヒ

12月:アム


1日は24時間なのは同じだった。


(暦と時間の考え方は時代が変わっても同じなのだろうか……)


(未来でも同じなのか。一時期はラ・ムーの心臓音を使っていたこともあったらしいぜ)


(はぁ)


(心臓音っていつも同じじゃないから笑っちまうよな)


(まあ、基準がないなら仕方ないのかも)


(んで、真ん中のムロが夏休み、アムとムーが冬休みってわけだ。

だから、学校は前期と後期しかないぜ)


(なるほど。冬休み長いね……)


 ロウアはムー文明の高度な知識に驚いていた。

 だが、同時にこの文明はいずれ滅びてしまうのを知っている。

 大陸自体が21世紀には存在していないから、大陸自体が海に沈んでしまうのだろう。

 どれぐらいの人間が犠牲になるのか、考えるだけで憂鬱になるのだった。


ラ・ムー

王国の王子だったが、ムー大陸全体をまとめるための思想を説いた。

その教えは太陽の光のように人々や自然を愛し、弱いものを慈しめと説いた。

また、人々を幸せにする智慧を身につけよと説いた。

この思想は、後々、太陽信仰として世界中に広まっていく。


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2022/10/08 文体の訂正


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