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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
新しい家族、小さな祈り
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ラ・ムーの神殿

翌日、エメは、オケヨトと一緒にムー大陸の中心地にある首都ラ・ムーに向かった。

首都からは四方八方に大きな道路が広がっていて、我々の時代でモアイ像と呼ばれる像が、豪華に着飾って道路を挟んで建ち並んでいた。

一番広い大通りを抜けた先に、ムーの女王も住み、神官組織の本部もあるラ・ムーの神殿がそびえ立っていた。


エメは神殿の前でその大きさに圧倒されていた。


(神殿と言うよりも巨大なオフィスビルという感じだわ…。)


エメがその大きさに驚いていると、オケヨトが話しかけて来た。


「エメ、どうしたの?そうか、君は始めて見るんだね。」


「うん、すごく大きいね…。」


「僕もこんなに近くで見たのは初めてだけどね。

この中だけで1万人ぐらいいるらしいよ。」


「えっ!そんなに?」


「100階建てなんだって。」


「はぁ?!」


エメは、100階建てにビルなんて聞いたことも無かったので呆れるしか無かった。


(東京にだってこんなビル無いよ…。あまり行ったことないけど…。)


エメは再び巨大ビルもどきの巨大神殿の頂上を見つめた。

頂上ははるか遠くにあり、雲に隠れていた。


「エメ、あそこが入り口みたいだよ。」


「う、うんっ!ホントだ。行こうか。」


二人が神殿に入ると、その広さにさらに圧倒された。


「何という広さ…。野球場ぐらいあるんじゃないのか…?」


エメ達が入り口から入ると、その場所は、野球場の二階席のような場所だった。

真ん中にグラウンドらしい広い場所があり、その真ん中には巨大な柱が立っていて、神殿の頂点まで伸びているようだった。


「なんだい?やきゅうしょうって?」


「あぁ、あぁ、何でも無い…。」


エメは來帆だったときに一度見た野球場に例えたが、オケヨトには日本のことを未だ説明していないことに気づいた。


「あそこが受付かな。それにしても、恐ろしく遠い場所にある…。」


エメは米粒のような受付を指差した。

中央の巨大な柱の周りを囲むようにして、いくつかの受付があるようだった。


「そうみたい。受付を待っている人も多いね。」


受付と思われる場所には、列をなして並んでいたり、大きな椅子に座っていたり、雑談を交わしたりしながら、100人ぐらいの人達が思い思いにこの場所に来ていた。


エメ達のような子どもはいない上、皆、この時代のスーツを着るなど、しっかりとした格好をしていたので、二人は自然と浮き足だっていた。


「エメ…、みんなこっちを見ているよ…。」


「う、うん…。」


二人は恥ずかしいと思いつつ、慈愛部受付と書かれた場所に向かい、受付の女性スタッフの前に並んで待つことにした。


「お、おい、あの人、本当に人間なのか?」


エメが思ったように、どう見ても受付の女性スタッフは人間では無かった。

瞬きをせず、口の動きも、身体の動きも、どこかぎこちなかった。


「違うと思う…。神官達が開発した"ロネント"とかいう機械人間じゃ無いかなぁ…。」


「はぁ?!神官なのにロボットを作ってるの?」


「ろふぉっと?」


「あぁ、もうっ!機械の人間って意味っ!」


「何を怒っているんだよ…。神官組織の一つに科学部があって、そこは色々と開発をしているらしいよ。

機械で出来た人間ができたってツナクで見たことがあるよ。

初めて見たけど、本物の人間っぽいね。」


「そんな部署もあるのか…。」


エメはこの時代の神官組織の多様さに驚くしか無かった。


「あぁ、そういえば、病院の看護師もあんな感じだった…。やっぱり人間じゃなかったのか。」


「おっ、そうなんだぁ。ロネントのいる病院で治療したんだっ!すごいね。」


「すごい事なの?」


「だって、そんな病院、高すぎて僕らじゃ絶対に行けないよ。」


「そうなんだ…。」


やがて、二人の番になったので、エメは受付のロネントに話を切り出した。


「慈愛部の孤児院担当者のトウミさんに会いたいです。」


"トウミさんですか。少々お待ち下さい。"


とロネントは返事をすると、しばらく何かと交信しているようだった。


(おっ、言葉をちゃんと理科して応答するんだ。すごいなぁ。)


だが、受付ロネントからの回答は冷たいものだった。


"申し訳ございません。面会できないとのことです。次の方、どうぞ。"


素っ気なく言うと、別の人の対応に回ろうとした。


「えっ!ちょっとっ!お願いしますっ!!孤児院のことでお話しがあるんですっ!!」


"申し訳ございません。面会できないとのことです。"


ロネントは一瞬こちらを向いて、また同じ事を言うだけだった。

仕方なく、二人は受付から離れた。


「あぁ…、何で会ってくれないんだよっ!」


エメは憤慨した。


「そうだね…。どうしてだろう…。」


「今日は帰るしか無いか…。」


だが、二人が諦めかけて帰ろうとしたとき、エメは突然、声をかけられた。


「あらっ!エメ君っ!!」


「は、はい?あっ、あの時のっ!!」


それは、エメを孤児院に送ってくれた二人の女性神官の一人、猫族の神官だった。


「久しぶりねっ!」


「はい、あの時はありがとうございました。」


「おぉ!お話しできるようになったのね。」


「はい、孤児院のみんなのお陰です。」


「そうっ!よかった。」


「それで、今日はどうしたの?」


「あ、あの不躾で申し訳ないのですが…。」


エメは孤児院の状態を説明した。


「えぇ…、う~ん、予算が減ったとは聞いていたけど、酷いわね…。

そうね、一緒にトウミさんのところに行ってみましょうっ!

同じ部署だし、お話しぐらいは聞いてもらえると思うわ。」


「え、本当ですか?!ありがとうございますっ!!」


こうして二人は何とかトウミという人物に会えることになった。


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