資金繰り
タキンが最後に送金すると言ったので、エメは孤児院のお金事情を知りたいと思った。
そこでこの孤児院を仕切っている女性神官に、オケヨトと一緒に予算について教えて欲しいと言ったのだった。
今日は、神官とエメ、オケヨトの三人と少なかったが、予算管理の第一回目の会議が孤児院の小さな部屋で開かれた。
「しっかし、ギリギリだね…。」
エメが帳簿を見てため息をついた。
「そうだね…、これは厳しい…。」
オケヨトも一緒に帳簿を見て、困り果てていた。
「ごめんなさいね…、本部の慈愛部から送られてくるお金が少なくなってきているの。
お金を増やしてもらうようにお願いはしているんだけど…。」
神官は申し訳なさそうに言った。
「そうですか…。よく、今まで生活できていたというか…。」
孤児院の予算は、ムーの首都にある神官組織の本部にある慈愛部からの配給されていた。
その予算は、ムー大陸に住む住民の税金からまかなわれていた。
「こんなお話しに二人をしてごめんなさいね…。大人で何とかしなければならない問題だわ…。」
「違いますよっ!僕がお願いした話ですから。」
エメは、申し訳なさそうにしている神官を慰めるように言った。
(しかし…、これを一人でやってたという事…?)
予算管理は、女性神官一人で行っていたので、その苦労は計り知れないとエメは思った。
「お金に困った親が子どもを捨ててしまう事が多くなってしまっているのよ…。
そういった可哀想な子ども達が増えてきてしまっていて…。」
「確かに、ここ(孤児院)に来る子どもは年々増えているよね…。
どうしてお金に困る人が多くなったんだろう…。」
オケヨトは孤児院の状況と一致していると思った。
「何か事情があると思うんだけど…。」
オケヨトが子を捨てる親の気持ちを考えたのは、自分も親に捨てられたためであった。
この孤児院の入り口に捨てられていたオケヨトは、自分の親も何かあっての事だろうと思いたかった。
「そうねぇ…。色々と聞いてみるとお仕事がなくなる事が多いみたいなの…。」
「仕事が無くなる…?」
エメがどうしてそんなことになるのだろうかと思ったが、
「詳しくは分からないの…。」
と女性神官も説明できず困っていた。
続けて、
「ごめんなさいね、こんなお話…。」
神官は子どもにこんな話をしてしまった自分を反省した。
「みんなで何とか頑張りましょうよっ!」
エメは神官を励ますように言うと、
「うぅぅ…。嬉しいわ…。」
女性神官は涙を浮かべていた。
「だ、だけど、どうしたら良いんだろう…。」
オケヨトは、資金繰りがどうにも出来ない事を憂えた。
エメは、それを聞いて、タキンに"この後はよろしく頼む"と言われたのを思い出し、意を決した。
「よしっ!首都にある慈愛部に掛け合ってみようっ!」
「おぉっ!」
オケヨトはすぐに賛成したが、
「でも、うまくいくかしら…。」
神官は上手くいくかどうか分からなそうな顔をした。
自分が何度、交渉しても予算が増えることはなかったからだった。
「子どもの方からお願いしたら何とかなるかもしれませんよ。
オケヨト、さっそく、明日、行ってみようぜっ!」
エメは神官の心配をよそに早速実行しようと提案した。
「うん、そうだね。」
「ありがとう、二人とも…。うぅぅ…。ありがとう、ありがとう…。」
女性神官は涙をハンカチで抑えながら、
「…トウミという人を訪ねてみて…。私たちの孤児院を担当している人なの。」
孤児院の担当者を教えてくれた。
「うん、分かったっ!」
エメは親分なら子分達を何とかしてやろうという気持ちで沸き上がった。




