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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
もう一つの最後 - いじめっ子少女 來帆 -
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もう一つの最後

(い、石河來帆さん…、あ、あの…、お、お久しぶり…です…。)


來帆は声のする方を見て驚いた。


「あ、あんたは…、あ、愛那…、永原愛那…?!」


(は、はい…。)


目の前には、來帆の虐めた相手の永原愛那が立っていた。

少し下を向いているが、綺麗な目がかすかに見え、髪は何故か金色をしていた。

白いローブと部分的に守っている鎧のようなものが見え、全身が大きく輝いていて、背中には大きな羽が生えていた。

その姿は全身が半透明なのか後ろ側がうっすらと見えていたが、眩しく輝いているようにも見えた。


(來帆さんが自らを顧みられたのでやっとお話しできるようになりました…。)


「顧みるだって…?

私は、あのおばさんのお陰で目が覚めただけ…。」


そう言うと、來帆は両手で顔を覆った。


「私は…、私は…、酷い人間だ…。

人を…人を沢山殺してしまった…。」


手を顔から外すと、


「はは…、この姿は相応しい姿なのかもしれないね…。」


自分の手を見ながらそう言った。


(悪い者のせいであなたに不運が訪れてしまいました…。)


來帆は、愛那の言葉を聞くと、その眩しい句輝く顔を見つめた。


「愛那…、お前は本物みたいだね…。

ベルフェゴールって奴が化けていた愛那とは全然違う…。

その姿…、天使みたいじゃないか…。

これが虐めたものと虐められたものの最後の姿ということか…。」


(…ごめんなさい。)


「?!」


いきなり愛那が謝りだして、來帆はなんで謝るのかと思った。


「な、なんで謝るんだ…。」


(私があなたを追い詰めてしまったんです…。)


「な、何、言っているんだい…、逆だろ…?

私があんたを虐めて、それで自殺させてしまったんだろ…?」


(だけど、その後のあなたは…。)


「違う、違うよ…、私だよ…。私が選んだ道なんだ…。分かっている。

お前を虐めていた頃は、私がベルフェゴールってやつの心と同じだったんだ。

自らの心が自らの世界を作る…。

あの真っ黒な世界で一つだけ分かった事さ…。」


(……。)


愛那は、そんな來帆を見て何も言えなくなってしまったが、どうしてもやって欲しいことがあった。


(…い、石河さん、こんな事お願いできる立場ではありませんが…。)


「???」


(池上さんとお兄ちゃんを助けて頂けませんか?)


「池上…さん…と?お前の兄貴…?」


(石河さんは池上さんをご存じだと思います。

あなたを助けて体育館に連れて行った方です。)


來帆は愛那の話で池上が体育館を出て行くときに"愛那"と言った相手が分かった。


-----


体育館で池上が來帆を助けた後、彼女の両親の死は自分が原因であることを知ったときだった。


<池上さん…。>


悲しむ池上に声をかける天使の姿があった。


「…うん?…アイナ…。」


<そんなに気を落とさないで下さい。あなたのせいではありません。>


「慰めてくれるのかい…?ありがとう。」


<池上さん、あの方…、石河來帆さんは、私の知っている人です。>


「えっ!あの子は君の知り合い…?」


<言いにくいのですが…、生前、私を虐めていた人…です。>


「そうか…。どうしてあんなところに…。」


<師匠と一緒に少し調べてみました…。

どうやら私たちの計画を阻止しようとする者達にそそのかされてしまったようです。>


「…それで君を。」


<はい、恐らく…。強大な悪意に抵抗するのは難しい場合がありますから…。>


「…あまり関わらない方が彼女のためかもしれないね。」


<…はい。>


池上は後ろから声をかけている來帆の方は振り向かないで、そのまま体育館を後にした。


-----


「あぁ、あの時話していた相手は本当にあんただったのか…。」


(はい…。池上さんはあそこです…。

どうか、どうか…、お願いしますっ!!)


愛那の指差した先に池上ともう一人の若い男性の姿が見えた。

男性には巨大な黒い影が覆っていた。


「もう一人がお前の兄貴か…。

…分かったよ…。行ってやる…。

こんな事で私の過ちが許されるわけはないけどね…。」


(い、いえいえ、とても助かります。

私たちは霊体なので直接、お助けできないのです…。

ありがとうございます。)


そう言うと愛那は消えていった。


「ふっ…。」


來帆は自分の数奇な人生の精算場所があそこにあるんだと思うと思わず笑ってしまうのだった。


----------


池上はサタンの宿った永原をつかみ、ブラックホールに進もうとしていた。

ヘッドギアの力で生み出されたものは、生み出した物の死で全て消えてしまうのが分かっていたからだった。


「くそっ!くそっ!!身体から抜けられねぇぇ。」


サタンはもがいて永原の身体から出ようとしていた。


「くっ、間に合わないっ!!」


來帆は二人に近づいたが間に合わなかった。

やがて、池上と永原がブラックホールに吸い込まれてしまったが、


「はぁ…、はぁ…、やったぜ、抜けれられたぜぇぇぇぇ。」


サタンは一瞬の隙を突いて抜け出すことに成功していた。


地獄世界を具現化した永原に死が訪れるとその巨大な塔とブラックホールは消えかけていた。


「ふっ…、サタンか…。笑えるね…。お前は地獄世界の頂点に立つ奴だろ…?

最後に相応しい…。一緒に行ってやるよ…。」


「あ、あん…?お前は…、ベルフェゴールのところにいた奴か…?」


「…私も消えかけている。さっさとやるか…。」


「なっ、何をするぅぅぅぅっ!!!」


來帆の爪がキラッと光るとサタンのその頭と身体は真っ二つに分かれた。


「ぐがっ!」


そして、切り捨てた身体を掴むとそのまま消えかかったブラックホールに一緒に突っ込んでいった。


「愛那…、すまなかった…。池上さんとお前の兄貴を助けてやれなかった…。」


光すら抜け出せないブラックホールの近くで発したその声は誰にも届かなかった。

やがて、その身体は掴んだ魔の存在と共に宇宙の神秘に吸い込まれていった。


[[えにし]]

「妄想は光の速さで。」第14重力子 第96部分 科学バカ達は最後に笑う

https://ncode.syosetu.com/n7232dh/96/


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