表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
もう一つの最後 - いじめっ子少女 來帆 -
139/573

呑気な持ち主

イツキナの身体は、イツキナの治療中の幽体離脱中に、誰かに奪われてどこかに逃げてしまった。


ロウアは、走り去ったイツキナを探して、病院の周りを入念に探索した。

だが、それらしい姿は見つからず、途方に暮れてしまった。


(…どこに行ったんだ…。それにしても身体はいつも間にか治っていたということか…。)


イツキナは、脊髄の障害で下半身は今まで全く動かなかった。

だが、誰かに身体を乗っ取られたとはいえ、あの"イツキナ"が足を使って走ったのだ。

ロウアは、どうにか探さなければと焦ると共に、身体さえ取り戻せば、イツキナは元のように歩いたり、走ったり出来るはずだと思った。


そんなことを考えていると、どこからか魂のロウアが、元の身体の元に戻ってきた。


(見つかんね…。)


魂のロウアもそこら中を飛び回ったが、見つけることが出来なかったので愚痴るように言った。


(探してくれて、ありがとう。)


ロウアは、お礼を言ったが、同時にイツキナと同じような状況である身体の持ち主に申し訳ないと思った。


(お、おう…?)


魂のロウアは、急にお礼を言われたので何があったのかと思った。


イツキナと元級友で不幸にも死んでしまったメメルトもやって来た。

だが、元気の無い顔でどんな結果だったのかすぐに分かった。


(どうして、見つからないのでしょう…。アマミルはすぐに見つけられたのに…。)


(…あいつの名前が分からないからね。)


メメルトと一緒に探していた髪の短い女神も困ったように話した。

彼女はイツキナとは霊界で深い関係だったようで、今回の調査にも付き合ってくれた。


(何らかの痕跡がないと、霊体でも追うことは難しいんだよ…。)


(痕跡ですか…?)


メメルトが痕跡という言葉を不思議に思って女神に尋ねた。


(…説明が悪かったね。要は知り合いであれば、探しやすいってことさ。)


(あの盗人さんの事は、誰も知らないということですか?)


(多分ね…。

名前でも分かれば見つけて飛んで行くことが出来るんだが…。)


(飛ぶ…?あっ、そうですね、ロウア様が私のところに一瞬で来られたのは、知り合いとなったから…。)


(そうだぜ?霊体ってのは便利だよな。)


少し前、魂のロウアは、瞬間移動のように移動してメメルトを呼びに来て、両親に合わせてくれた。


霊体であれば、相手がどこにいようと、その人のことを思うだけで移動できる力。

メメルトも実感した力だった。


(ですが、あの身体はイツキナのもの。イツキナの名前で探せるのでは?)


(そのはずなんだが…。あいつの名前を呼んでも、飛んで行かないんだ。)


短髪の女神は、残念そうに話した。


(困ったねぇ…。イケガミ様、何かご存じでは…?)


(……。)


ロウアも困り果てていたが、身体を盗んだ者の最後に放った言葉が気になっていた。


-----

「日本語を話すあなた…。

あまりに久々に聞いたからあの時は気づかなかったけど、そうか貴方もあの災害に巻き込まれた人だったのね。」

-----


(…恐らく、あの人も僕と同じ時代から来た人…。)


(ホントかよっ!)

(えっ!!)

(そうなのですね…。)


(この時代に来たのは僕だけじゃなかった…。)


そんな話をしていると、身体を失ったイツキナもやって来た。


(あら…。みんなのことを考えていたら移動しちゃったっ!すごく便利ねっ!)


(イツキナ先輩、身体は見つけられなかったです…。)


ロウアは、残念そうに報告した。


(そう…。仕方ないわね…。

ま、このままの方が楽ちんだし、身体の一つや二つ無くなっても大丈夫よっ!)


だが、イツキナは呑気に言った。


(はぁ~、おいおい…。お前の身体だって言うのに…。

それに、お前の両親だって心配するんだよ…?)


女神はお前のために探しまくったんだよと言いたげに突っ込んだ。


(そ、そうですね…、師匠…。

だけど、私は身体にとことん見放されているわねぇ…。)


イツキナはつぶやくように言った。


(ぷっ、イツキナったらっ!)


メメルトは、イツキナが自虐的に愚痴ったので思わず笑ってしまった。


(やれやれ…。困った弟子だよ。)


女神は、そんなイツキナにあきれてしまった。


(まあ、俺達は、夜中でも動き回れるから、この後も探し続けるぜ?)


魂のロウアは、この後も探すという。


(そうだね、もう少しだけ探そうか。)


(私は師匠と一緒に探しますっ!)


(はい、そうですね。今度は私は一人で探してみます。)


(うん、ありがとうっ!)


ロウアは心強い仲間がいてありがたいと思った。


(僕は一旦、カウラさん…、じゃなくて、兄貴とアマミル先輩に報告しに行くよ。)


(ぷっ!俺達には演技しなくていいんだぜ?)


(あぁ、癖になってきた…。)


自分の過去世であるカウラと話すのが苦手なロウアは、家族のような親しげな話が出来ず困っていた。


(そうだね、イケガミ様お願いします。)


女神がそう言うと各自、思い思いに散らばっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ