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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ドッペルゲンガー少女 シイリ
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シイリの喜び

髪型を変えたとはいえ、日頃から目立っているシアムのそばにいたのでシイリも自然と人の目に付いた。

ナーガル校に向かうバスの中、教室に着けば生徒達がシイリを見つけて集まってくる。


「へぇ~、シアムちゃん似のロネントなのね。」

「シイリちゃんっていうの?」

「すごい精巧ね。」

「ロウア君の発明?すごいっ!」

「あぁ、この前見たいのは、この子だったのね。」

「そっかぁ、未完成だったのね。それなら逃げちゃうのも分かるわ~。」

「でも本当にシアムちゃんが二人いるみたいっ!」

「髪型も可愛いねっ!」


その度、シイリは顔を赤らめて下を向いていた。


(良いようにみんな解釈してくれた…。)


ロウアは助かったと思った。


朝のホームルームが始まると、キルクモもすぐに生徒が一人増えていることに気づいた。


「うーん、おかしい…。生徒が一人増えているようだが…。」


生徒達は、クスクスと笑っていたり、ヒソヒソと話をしたりしている。


「キルクモ先生っ!」


そんな中、アルが手を上げた。


「おっ、アル君…、君が説明してくれるのかな?」


「いえ、イケガミ、じゃない、ロウアが説明しますっ!」


「なっ!」


ロウアは、アルが手を上げたから自分で説明すると思ったのに、まさか自分に話を振るとは思わなかった。


「もう…、何だよ…全く…。えっと…。」


ロウアはキルクモに自分が作ったロネントであることを説明し、冬のロネント競技会のために授業を学習させたいのだとお願いした。

ロウアがアルを見ると、よくやったといった顔をしていた。


「(全く…、だから初めに話しておこうって言ったのに…。)」


「(ぐっじょぶっ!)」


「(ぐっじょぶって、そっちがちゃんと説明して欲しい…って、何で英語を知ってるの?!)」


小声で話している二人を尻目に、キルクモはシイリをまじまじと見つめていた。


「なるほど、君はシイリというのか…。」


「はい…。」


シイリは顔を赤らめて下を向いた。


「しかし、よくできている…。恥ずかしがっているのかい…?

ロネントが恥ずかしがっているのを初めて見たよ…。」


シイリは顔を更に真っ赤した。


「う~ん、学習ね、ロネントに学習ね…。確かに大会も近いし…。

まぁ、"この子"については、主任ロネントに聞いてみるよ。

他の先生達にも説明しておくとしよう。

だから、しばらくはこのままで良いよ。」


キルクモがそう言うと教室は歓喜に満ちた。


「わ~っ!」

「やった~っ!」

「先生、格好いいっ!!」

「シイリちゃん、最高っ!」

「シイリッ!シイリッ!」


キルクモは困ったもんだと思っていたが、生徒達が一体となっている姿を見て嬉しいとも思った。


「おいおい、まだ良いって決まったわけじゃ無いからな。」


この状況をシイリはもちろん、ロウア、シアムとアルも驚いていた。

皆がシイリを喜んで受け入れてくれたからだった。


「うぅぅ…。」


ロウアはシイリを見ると肩が震えているのが分かった。


-----


放課後、部活では、さすがにみんなに事情を説明した。


「シアムちゃんの妹さんかぁ。よろしくねっ!

イツキナ、また部員が増えたわっ!」


「そうね、すごいわ。霊界お助けロネント部にぴったりの部員よっ!」


アマミルとイツキナは喜んで受け入れた。


「わぁ!シアムお姉ちゃんが二人っ!!」


「シアム様にとても似ていらっしゃるのですね。」


ホスヰもツクも喜んでいた。


「昨日のツナクで話していたロネントはこの子かぁ。」


マフメノはロウアが昨日、シイリの喉と右足を治すために手伝ってもらっていたので知っていた。


「しかし、よくできているなぁ。」


マフメノはシイリを見つめていた。


「マフメノ、改造とかしないでね。あ、ツクちゃんもね…。」


「ドキッ!」

「ドキッ!」


マフメノとツクは早速、じろじろと調べ始めていたので、ロウアの指摘でドキッとした。


「し、しないよぉ…。だけど、この精巧さ…。」


「そうなんですっ!マフメノ先輩っ!魂が宿るってこういうことなんでしょうか?」


「どうだろ。だけど、元々のよくできているんじゃないかなぁ。この肌はどう見ても一級品だよ。」


「えっ!そうなんですかっ!」


「あぁ、僕の嫁さんの発展のためにもっと調べたくなってきたかも…。」


「マフメノ先輩、私の子どもも発展させたいですっ!」


「おぉ、ツクちゃんは熱心だなぁ。」


マフメノとツクは今にもシイリを分解しそうになったので部員達は慌てた。


「おいおい…。」

「それは駄目よっ!」

「うん、私が許さないからっ!」

「めっ!」


「…分かったよぉ~、ホスヰちゃんの、"めっ"が聞けたから止める…。」


(えぇ…、私も"めっ"て言えば良かった…。)


ツクは少しマフメノに気があるのか、ホスヰに一歩を取られてがっかりしていた。


「うぅぅ…。ヒック…、ヒック…。」


そんなふざけた部員達を見ていたシイリだったが、いつの間にか涙を流していた。


「皆さん…、ありがとうございます…。ありがとうございます…。

皆さん、こんな私を歓迎してくれて…。

教室も皆さん、私を可愛がってくれましたし…。

私、嬉しくて仕方がありません…。」


「やだやだやだ~~~っ!!!

泣いちゃ駄目だよぉ~。私も泣いちゃう…。うゎ~んっ!」


アルはもらい泣きをした。


「シイリ、良かったね…。」


シアムも涙を貯えながら妹の幸福を喜んだ。


「うん、お姉ちゃんっ!!

アルさん、今日はお誘いいただき、ありがとうございましたっ!!」


「うん、うん、うゎ~んっ!」


皆がシイリの生を喜んでいた。


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